第23話 大混乱のあと
私とアウラはヴォルフの背中に乗って、空からプレーノルドの街を見つめていた。煙が上がり小さな人影が右往左往しているのがわかった。
ドラゴンが出たと街は大混乱に陥っていた。犯人を捕まえようと警戒態勢が取られていた。
「もう、ニーナが街中でヴォルフを出すからこんなことになったんだよ」
「ご、ごめん。つい怒りに身を任せてしまって……」
マダム・ミルディアンスをやっつけたのは良かったけど、ヴォルフを呼んだおかげで騒動に発展した。そのせいで私たちは衛兵たちに追われ、街中を逃げ回る羽目になってしまった。
それはもうしっちゃかめっちゃかの大混乱で、その途中、騒ぎを聞きつけたハロルドたちに指を差され笑われる始末だった。
「あの大きなおじさんたち、私たちを見て笑ってたね」
「そうなんだよ。オーガのやつら、コンプラ違反ですよ〜とか言ってさ。ん〜むかつく。今度ハロルドに会ったらとっちめてやるんだから」
私は悔しくて頬を膨らませて怒っていた。
「でもね、私はものすごくうれしかったんだよ」
「どうしてうれしかったの?」
「ニーナが私のために頑張ってくれたからだよ」
アウラの表情は穏やかだった。
「私は悪い占いで落ち込んでたし、大先生が魔物だと知ってショックだったの。でもニーナが私のそんな気持ちを吹き飛ばしてくれたんだよ。おかげで気持ちもすっきりできたんだから」
「そっか。それはよかった」
「それにね、私のことをちゃんと仲間だと思ってくれてたんだ、ってわかってうれしかった」
アウラは満面の笑みを作って言った。
「当然だよ、アウラは私の大切な仲間だよ」
「こんな冴えない私でいいの?」
「アウラは私にとってSSR級の美少女キャラクターなんだよ。アウラが離れたいって言っても私は絶対に逃さないからね」
「えへへへっ」
アウラは照れ笑いして私の背中に抱きついてきた。彼女の胸のやわらかい感触が伝わってどきりとした。
どうやら私は知らず知らずのうちにアウラを虜にしてしまったようだ。モテるとはこういうことなのだと私は少し得意になった。
「よーし、気分がよくなってきたからキャンプをしよう!」
「キャンプ?」
「そう。私のリュックにはそのためのキャンプ道具がいっぱいだよ」
それはプレーノルドのお店で買い揃えていたものだった。私は胸に抱えていたリュックをパンパンと叩いた。
「今はどこも警備が厳しいはずだから、ほとぼりが冷めるまでキャンプで凌ごうと思うんだ」
ただでさえ結界が破られている状況でのドラゴンの出現だった。これではどこの街でも警戒していることだろう。とにかく今は大人しくしているに限る。
「何だか追われる身になっちゃったけど、また普通に旅ができる時が来るから、その時までキャンプを楽しもうよ」
「うん」
「となれば食料はすべて現地調達になるよ。その点はアウラにもがんばってもらうからね」
「わかった」
アウラとの話し合いは決まり、私はヴォルフに尋ねた。
「ねえヴォルフ、どこかいい場所知らない? 安全に過ごせて、食料も確保しやすいところ。できれば景色の綺麗な水辺がいいんだけど」
私のわがままな要求にヴォルフは黙ってうなずいた。そして翼をひるがすと空高く舞い上がった。
あっという間に雲の上に着くと、そこでヴォルフは千里眼のスキルを使った。それはその名の通り千里先まで見通せる能力だ。
ヴォルフは辺りを見回したあと何かを見つけたようだ。彼はその方向へ勢いよく飛んで行くと猛スピードで雲を突き抜けた。すると視界に広がったのは美しい湖だった。
「おお、いいじゃん。やるねヴォルフ!」
私たちはその絶景に思わず息を呑んだ。森の中に囲まれた湖はまるで鏡のように空の青さを映していた。マップで確認するとルルテリアという湖だった。
ヴォフルはしばしその上を旋回したあと、ゆっくりと地上に舞い降りた。すると途端に私たちは森と湖を望む豊かな自然に包まれた。
「ああ、気持ちいい……。森のいい匂いがするよ」
「どうアウラ? 私は気に入ったけど」
「うん、私もすごく素敵だと思う」
湖を囲む森の奥にはうず高い山脈が連なっていた。天気も良くてまるで心が洗われるような景色だった。私は文句なく決断した。
「よし、ここをキャンプ地とする!」




