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はじめてブレザーを着た日

本作の主人公、小出千咲は3月の終わりに15歳の誕生日を迎える。

私、小出千咲。今日は3月29日。今日で15歳になった。妹の(つむぎ)も、今日で10歳になる。今日は、家族で写真を撮りに行くらしい。お父さんもお母さんも、いつもより良い服を着ている。

卒業式を終えたのに中学の制服を着て、中学の卒業証書を持って、新しく届いたばかりの高校の制服をバッグの中に入れて車に乗る。

いつもの写真館に着いた。昔から、入学や卒業のたびに撮ってもらっていたところだ。

「千咲ちゃんはもう高校生?早いわねぇ」

「紬ちゃんもすっかり大きくなって」

写真館の老夫婦は、口々にそう言ってくる。3年前、中学に入る頃にもこの写真館に行った。その時より少しは身長が伸びている。

まず1枚目。3年間でくたくたになった中学の制服を着て、卒業証書を手に持って写真を撮る。

2枚目、高校の制服に着替えて両親と妹と私で写真を撮った。はじめてブレザーに袖を通す。真新しい高校の制服は独特のなんとも言えない匂いがして、ブレザーが重たく感じた。そして、リボンをつけていて少し苦しくも感じた。

真新しい高校の制服のまま、そのまま車に乗り家に帰る。

「今日の夕方は、レストラン予約してるからね」

お母さんがそう言ってきた。ここ数年、誕生日祝いで行っているフレンチレストランのことだ。あのレストランは、住宅地のアパートの一階でひっそりとやっている。お母さんはよくそんなところを見つけてくるなあ。いつもよりちょっといい私服に着替えて、車でいつものフレンチレストランに向かう。

レストランではディナーのフルコースを頼んだ。


厚切り牛ロース肉とフォアグラのポワレ

マッシュルームのクリームスープ

サーモンのバジルパン粉焼き


どれもこっくりとした味がして、美味しい。

突然お店が暗くなる。ハッピーバースデーの曲が流れ出す。

「小出千咲さん、紬さん!誕生日おめでとうございます」

他のお客様からも拍手喝采がある。非日常だ。

ケーキにはプレートに

「千咲 15歳&高校入学おめでとう

 紬 10歳おめでとう」

と書かれている。姉妹で一緒にろうそくの火を消した。

誕生日プレゼントに、紺色のワンピースと電子辞書を買ってもらった。

「ねえ千咲、紬、伝えたいことがあるの」

お母さんが妙に真剣な顔になって言ってきた。

「これから山内さんのところに、千咲の同級生になる女の子が下宿でくるからね」

とのことだった。ちなみに山内さんというのは、うちの敷地内に建っている家に住む夫婦だ。

「てことは、私はその女の子と敷地内同居するの?」

私はそう聞いた。同級生と敷地内同居なんて聞いたことがない。

「そうよ」

と、お母さんは答えた。

誕生日の日より始まる

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