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第一話 こころ

 北歴5125年。

 奴らは突然、ここ【フィガロディーテ】に降ちてきた。

 奴らは一晩で人口の7割を喰らい、人類を窮地へと追いやった。

 大地は枯れ、空は霞み、奴らを匿った。

 人々は愛する人を失い、嘆き、奴らを憎んだ。

 そして【(サーペント)】と名付けられた奴らは、3年経った今も尚人口を減らし続けている。

 だがそんな絶望の渦の中、人類にはまだ希望があった。

 闇の中に光を灯し、世界を混沌と化させたそれを、僕らは【(ラヴィング)】と呼んでいる。

 【愛】は7つに分裂し、愛を失った7人の下へと辿り着いた。

 僕、クルエル•シャルルもその1人である。


 西フィガロディーテ【懺悔の帳】。

 僕は1人、調査に当たっている。

 今回の調査では【懺悔の帳】付近の村の生存者の確認及び保護を行う予定だった。

 しかしそこは既に【憎】の巣窟となっていて、辺りには赤黒く染まった人々が斃れていた。

 仕方なく調査対象を【憎】の討伐に変更し【愛】を発動する。

 僕の持つ【愛】は【純愛】。

 この力は愛の力を具現化し、武器に付与することで多様な攻撃を繰り出すことができるのだ。

 他の【愛】にもそれぞれ固有の力があるが、それらはどれも似ても似つかぬものである。


 「【純愛付与(エンチャントピュア)】」

 「【裂】」

    

 繰り出された一太刀は【憎】の群れを薙ぎ払い、奴らを討伐したことその経緯を本部へと報告する。


 「総督。村で確認できたのは【憎】の群れのみで、既に討伐済みです。」

 「辺りに村人と思われる死体が多数見受けられた為、すでに村

人は全員喰われた後と思われます。」

 

 「そうか、御苦労だった。」

 「ではまた新たに別の調査を…と言いたいところだが、君には直ちにこちらへ帰還してもらう事になった。」


 「そちらで何かあったんですか?」

 

 「あぁ。先程別の調査隊から、北フィガロディーテの【旧都市部】に大量の【憎】が集まってきているとの報告があった。」

 「そのため現在、こちらで体制を整え今後の動きを確認しようとしているところなのだ。詳細は君が戻ってから話そう。」

 

 「了解しました。直ちに帰還します。」


 人類は3年前のあの日以降、混沌とした世界で生き抜く術を模索し続け、1年ほど前、ついに奴らから身を守れる大拠点を完成させた。

 その名も【希望きぼうとりで】。

 残された人類の9割以上がそこで暮らしていると言われている。


 数日後、【希望の砦】に到着した僕は急いで本部へと向かった。

 そこにはすでに【愛】を持つ他の六人が揃っていた。

 7人全員が揃ったのはこれが二度目だった。

 最初に集結して以来、彼らはそれぞれ別の任務についていたからだ。

 偶に何人かと顔を合わせることはあったが、それも数ヶ月に一度の出来事だ。

 故に僕らに絆だとか、信頼だとかはあり得ない。


 しばらく沈黙が続ていたが、総督が来たことでようやく色がついた。


 「久しぶりの再開に熱くなっていると思ったのだが、君達は思いの外冷めきっているらしいな。」

 「まぁいい。では現在の状況を説明する。」


 そう言うと、総督はモニターに映像を写し出した。

 そこには白かったはずの雪原を、黒一色に染める大量の【憎】の姿があった。

 僕らは響めき、言葉を失った。


 「今見てもらっている映像は、現在の北フィガロディーテの状況だ。数日前から【旧都市部】に集まっていた【憎】達が、昨夜からこちらに向かって侵攻を始めたことがわかった。また、それと同時に各地に散らばる調査隊からはここ数日、奴らの姿を確認できていないとの報告があった。これは異例の出来事である。これらの情報から我々は、現在フィガロディーテに存在する全ての【憎】が【希望の砦】に向かっていると推測する。その数およそ7000万。」


 7000万。

 その数は僕らのの想像を遥かに凌駕するものだった。


 ここで一度、人類側の主な戦力を整理しよう。

 まず主戦力となるのは、もちろん僕ら【愛】を持つ者達である。

 そして後方支援をする者が、およそ2000人。

 最後に後方及び前線の指揮をとる総督が一人。

 以上である。

 つまり、人類は35000倍もの数の敵を相手にしなければならないのであった。 


 「はっきり言おう!我々人類に勝機はない。だが希望ならある!我々や残された人類がその希望を絶やさぬ限り、人類は抗い続けることができる!悪いがその希望は、すでに君達に託されている。【純愛】のクルエル•シャルル、【慈愛】のはなじ、【深愛】のビター、【友愛】のジュノン、【恵愛】のもえ、【敬愛】のThe vision MK―2、【最愛】のユリ。君達7人にこの世界の命運は託された。」


 この瞬間、僕ら7人に全人類3000万人の命が託された。

 僕らにとって、人類皆の希望や夢想は重い枷となっていたが、人類が何かに希望を抱けるとするのならば、それは僕らしかいなった。

 そのことを僕ら自身もよく理解していた。


 「何か作戦はあるのだろう?」

 

 「よくぞ聞いてくださいましたビターさん!作戦については私、TVMテレムから説明させて頂きます。」


 TVMに皆の視線が集まる。

 すると次の瞬間、TVMの機体からだが変型し大きなモニターとなった。

 モニターには【希望の砦】とその周辺のマップが表示され、砦を囲うようにして7人が等間隔に配置されていた。


 「現在画面に表示されているのは最終的な各々の位置です。今回の作戦を成功に近づけるためには、初撃でどれだけ減らせるかが鍵となると考えました。そのためまず、現状最大火力を出せるであろうジュノンさんの【友愛】の力を使用します。」


 【友愛】。

 自身を支持する者が多いほど自身の身体能力が向上する。

 また、その効果は自身が触れるものにも反映される。


 画面が変わり、今度は北フィガロディーテ方面の城壁が映し出された。


 「現在、奴らが攻めてくる北フィガロディーテ方面の城壁上には数十の大砲が配置されています。大砲の射程距離に入り次第、【友愛】を発動し、ジュノンさんが触れている大砲を発射する、そういう手筈です。」

 

 「なるほど。たしかに僕なら相当の数を減らすことはできます。ですが一つ問題が。僕の【友愛】は触れているものにしかその力を反映できません。やつらの移動速度は人の3倍やそこら。 数十もある大砲一つ一つを順に周っていてはその間に侵攻を大きく許してしまいますよ?」


 「そこは問題ありません。【友愛】の発動と同時に、ビターさんの【深愛】を発動させます。【深愛】は自身が敵と認識した事象の動きを、一定時間鈍化させることができます。よって、奴らは【深愛】の効果で鈍くなり、侵攻を遅らせることができるというわけです。」


 「私の【深愛】の効果が切れたらどうする?【深愛】の効果が続くのはきっかり3分。その間に大砲をすべて撃ち切ったとて、全滅させられるわけではなかろう。」


 「それに僕だっていつまでも大砲を打つわけにはいかない。みんなを巻き込んでしまうからね。」


 沈黙が戻った。

 なにも、誰もその後を考えていないわけではない。

 むしろ皆、どうするかは理解していた。

 ただ、実際に口に出して現実にするのが怖かったのだ。


 「やろう。僕らにしかできないことだ。僕らが人類を救うんだ。」


 そうクルエルが口を開いた。

 言葉とは裏腹に、責任の重圧や死への恐怖を感じる声だった。

 そんな彼の言葉で、皆現実を受け止め、覚悟を決める。


 「単純に一人1000万だろ?殺ってやろうぜ!」


 「萠、お前どこまで単細胞なんだw」


 「あ?てめぇも大概だろうがよ!衂!」


 「こらこら二人共!喧嘩しないで!これから命を預け合うんだから!」


 「違うぞユリ。こいつが勝手に怒ってるだけだ。単細胞だからw」

 

 「衂てめぇ、奴らより先にぶっ殺してやろうか、」


 「まぁまぁ萠さん落ち着いて」

 

 「あぁ?クルエル、邪魔するってんならお前から…なんだ?」


 突然地面が小刻みに揺れ始め、その揺れはどんどん大きくなっていく。

 慌てる本部に、補佐官が一人、扉を吹き飛ばす勢いで入ってきた。


 「総督!大変です!」

 

 「どうした!」


 「来ました…奴らが攻めてきました!」

 

 「いよいよか…皆!改めて言う。君達7人に人類の命運は託された。」

次話以降は7人それぞれの過去が詳細に描かれる予定です。

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