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聖女の功罪  作者: 乙3
奴隷編
8/24

8.街道にて

 最初の話を書き終わったのち、まさか色々な方に読まれていたことに大変驚きました。

 読んでいただいた皆様、そしてブックマークや評価点を付けてくださった皆様、大変ありがとうございました。

 本来は最初の『六部殺し』だけの予定だったのですが、作者としての欲が出てきましたので、少しばかり続けてみようかと思いました。

 ので、よろしければこの聖女らしくない主人公に、再びお付き合いいただければ幸いです。


 街道途中にある小さな宿場町。

 ほんの数件程度の宿場だが、王都まで続く街道の中にあって、旅人にとってはありがたい存在だ。

 その宿場の端にある『小さなアヒル亭』の女将さんは、軒先でお茶とお菓子を楽しんでいる女性を、ほほえましく眺めていた。


 巡礼者のような風体の女性は20代半ばくらいだろうか。目鼻立ちの整った顔、腰にまで届かんばかりの長い銀髪が風に揺れ、柔らかい日差しでキラキラと眩い。

 黙っていればお淑やかな、と形容できそうな雰囲気であったが、ニコニコとした表情と、嬉しそうに足をバタバタさせる姿を見るとどこか幼げな感じに映った。


「どうだい、美味しいかい?」


「とぉってもぉ美味しいですよぉ」


 巡礼者風の女性、ティアリスはニコニコと答えた。


「お嬢ちゃんは巡礼の途中なのかい?」


「えーっとぉ、別にそういうわけでもないんですよねぇ」


「あらそうなのかい? てっきり青銅教のある聖都への巡礼者かと思ったんだがねぇ」


「いえいえ、わたしは精霊教ですのでぇ」


「あら、そうなのかい? 精霊様を信仰するなんて、いまどき珍しいねぇ」


「ウヘヘヘェ、美味しいドーナツを作ってくれた女将さんに、精霊様のご加護を付けておきましたよぉ」


「あら、ありがとよ」


 女将さんはにっかりと笑って返した。


 ティアリスは暢気に大して上手くもない鼻歌を歌いつつ、脚をブラブラさせていた。と思ったら急に立ち上がり、口にドーナツを咥え右手にはもう一つ掴んだまま、スタスタと街道の外れに向かって歩き始めた。

 荷物を置いていたので食い逃げということはないが、突然の行動に女将さんは「ちょっとどうしたんだい?」と声をかけた。

 ティアリスはそれに応えることはなく、草木の生い茂っている中をかき分け進んでいく。ある程度進んだところで立ち止まると、スッと屈みこんだ。

 急に姿の見えなくなったティアリスに、焦った女将さんが「だ、大丈夫かい?」と、遠くから呼びかける声が聞こえる。ティアリスは「大丈夫ですよぉー」と、いつものノホホンとした声で答える。

 ティアリスの足元を見ればとても大丈夫という状況ではないことは明白なのだが、その状況を前にしてもティアリスはにこやかな笑顔を絶やさない。


 ティアリスの足元には、全身傷だらけで襤褸を纏った顔色の悪い少年が倒れこんでいた。

 年齢は十代半ばくらい、薄汚れた顔ではあったがおおよそ美少年と言ってよい顔つきだ。


 ティアリスは近くにあった適当な枯れ枝を手に持ち、そこで倒れこんでいた少年の頬を枯れ枝でツンツンと突いた。

 少年の目がうっすらと開く。その視線がティアリスのドーナッツへと向かった気がする。


「た…………て……」


 何を呟いているのか解らない。

 とりあえずティアリスは「これはあげませんよぉ?」と答えておいた。


 少年は再び意識を失った。

 最後までお読みいただきありがとうございました。

 こんなポンコツと狂気と変人が混ざり合ったような主人公が、どうして生まれたのか、作者としても不思議でなりません。当初の予定ではもっと淑女然とした、か弱い女性をイメージしてたんですが、なぜこうなった?

 誰か教えてください。

 それでは今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

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