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金髪



 講義が終わると、私は早速かおるに再び尋ねる。


「その金髪、知り合い……?」


 私は眉を細めて口を尖らせる。そんな滲み出る敵意にかおるちゃんはくすりと笑った。


「確かにこの頭は目立つよね。この人は高校の先輩なの。まさか同じ大学で、しかも同じ講義を受けてたなんてびっくりしちゃった。」


 あれ……思っていたものと違う返答が帰ってきたので私の理解は追いつかない。元々、頭は良い方ではないけど、それでも。

 先輩? なのに同じ授業をとってるの? もしかして元々仲良しだった?

 頭の中をハテナが駆け巡る。それが伝わったのかようやく隣の金髪が口を開く。


「バイトし過ぎて単位やばくてさ、留年したから同じ一年だと思ってよ」


 清々しい笑顔を向ける金髪はまるで絵に描いたかの様な大学生だった。まさかそんなものが実在するものだったなんて。この講義だってあまり出席していなかったみたいだし……まあ、私も大概だけど。


「俺はかつき! タメ口でいいから仲良くしてくれ! あ、あと、あわよくばノートも見せてくれたら…」


 ああ…少し苦手かもなあ。と、またもや表情に出ていたらしい。すかさずご飯も奢るから! と付け足してきた。

 ふーん。なんだ、この金髪は悪い人じゃないのかも。ご飯奢ってくれるなら別にいいかな。案外、私ってちょろかったりして?



 それから、私とかおるは新しい大学生活を二人で過ごした。それぞれの家に集まり、一緒にご飯を作ったり、勉強会を開いたり。まあ、たまに金髪が紛れ込んでくる事があったけど、それはそれで楽しかった。そんなある日、


「なあ、金髪じゃなくて他の呼び方で呼んでくれよ! 外じゃ恥ずかしくて、おちおち金髪にもできない!」


 金髪が大袈裟な悲壮感を漂わせて訴えてきた。どうせ金髪はずっと金髪なんだしって思ったけど、少し仲良くなって情も出てきちゃった。可哀想だしこの機会に呼び方を変えてあげようかな。私はしばらく考えた……

 でも、あだ名ってどうやってつけるんだっけなぁ。しばらく友達がいなかった私は頭を高速で回転させて思考を巡らす。金髪のイメージが強すぎて金髪以外にしっくりくるもの……しっくりくるもの……


「じゃあ……かつきだし、かっちゃんはどう?」


 あれだけ考えておいてそのまんまじゃんか! と金髪、いや、かっちゃんがその場に崩れ落ちた。私はそれ以上の呼び方は浮かばなかったけれど、そのやりとりを見てかおるちゃんは耐えられなかったらしい。顔を隠して肩を振るわせながら笑っている。そんな光景を見て堪らず私も笑みを溢してしまった。これで呼び方はかっちゃんに決定。


 何だかんだ、この三人でいると楽しい。ずっとこのままの時間を過ごしていたい。私は心の中でそう思っていた。



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