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かおるとあかり


 ガイダンスからしばらく経った。それでも私は今日も一人。ちょうど今は昼食を食べ終え、次の講義まで眠ろうかなと考えていた頃だった。


「いつも眠そうですね」


 急に声をかけられ反射的に顔を上げると、そこには柔らかい笑顔をした彼女が立っていた。


「あ、この前の茶髪の!」


 彼女の笑顔につられ、私の口角も上を向く。眠気はどこかへ行ったようだ。


「この前は起こしちゃってごめんなさい。講義室に一人取り残すのは流石に可哀想だったから」


 そう言いながら彼女は隣へ座ってきた。どうやら地元は別のところで知り合いもいなく、他に声をかけられる人もいなかった様だ。そんな時に一人で眠たそうにしている私を見つけて声をかけてくれたらしい。私にとっては願ったり叶ったりだ。


「私はかおる。よろしくね!」


 かおるちゃんか。何だか花の匂いがしてきそうな、そんな柔らかい雰囲気と名前が妙にしっくりとくる。そんな事を考えながらお互いの名前を交換した。


「私はあかり。眠そうな人を見つけるのが得意みたいだね」


 少し冗談を言った方が早く仲良くなれるかな、なんて思ったり。かおるちゃんは笑ってくれたしこれはもう……友達だよね?

 それから私達は一緒に午後の講義へと向かった。

 平凡で退屈な毎日が突然終わりを迎えた気がする。明日からは眠たくならなそうだ。


 それから二人はいつも一緒に行動した。同じ講義を受けて同じテーブルで昼食をとり、時には二人で出かけたりもした。朝の講義だって決まって隣の席に座るほど仲が良い。

 まぁ、私は少しばかり遅刻があったりなかったり……




 ──かおるちゃんおはよ!


 今日もいつもの様に遅刻ぎりぎりでかおるちゃんの横に滑り込む。かおるちゃんはしっかりしているので必ず先に来ている。講義で使うプリントやノートは机の上に並べられ、準備はばっちりの様だ。今日は走ったおかげでいつもより少し早く着けた。更には、遅刻しそうで走ってきたことがバレない様に講義室の外で息を整える時間を捻出することにも成功した。やればできるぞ私!

 さあ、まだ始まるまでに数分あるし、ついでに昨日寝てしまった講義のノートでも見せてもらおう。こうして頭の上で手を合わせながら頭を下げる。


「かおるちゃん昨日のノートみせて! お願い!」


 よしよし。お願いの仕方もばっちりだ。三人いればノートだって完璧でしょ。こっちのノートは字が汚くて読めないけど。


 ん? 三人? かおるの隣にはもう一人、見慣れない男の人がいた。一瞬だけ目を向けるとひらひらっと小さく手を振る。とりあえずもう目は合わせないでおこうかな。何だかせっかくできた友達を盗られたような気分。


「その金髪……だれ?」



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