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異世界での初めての夜

拠点を作り終わり日が暮れてきたため、私と玲奈は睡眠をとるために屋根に開けた穴から拠点に入る。

飛行するタイプの魔物がいるかもしれないため屋根の穴は塞いでおこう。厚さは屋根と同じくらいで、穴よりも一回りほどの大きさの土の板を穴が隠れるように置く。

かなりの重量があるから簡単にはずらされないだろう。


「屋根の穴は塞いで壁も屋根もこれだけ頑丈に作れば、不寝番をせずとも安全でしょう。さあ、明日早起きするためにも今日はもう寝ましょうか」

「…うん、そうだね…」

暗くて表情はわからないが、玲奈の声には元気がない。

昼間は精霊や魔法を目にして楽しそうにしていたが、夜になって不安になってきたのかもしれない。


「お姉ちゃん、寝る前に少しいい…?」

「いいわよ。どうしたの?」

そう答えると玲奈は火をだして、数秒後に火を消した。

何をしているのかと疑問に思っていると、玲奈が手を絡めてきた。どうやら火の明かりで私の場所を確認したかったようだ。

そのようなことを考えていると、今度は私の胸元に顔をうずめて抱き着いてきた。

玲奈はむせび泣きながら震えていた。


「玲奈…」

玲奈の頭を撫でる。しばらくそうしていると、抱き着いたままだが玲奈が胸から顔を上げた気がした。


「少しは落ち着けた?」

「うん…。突然ごめんね、お姉ちゃん」

「いいのよ。私はあなたが少しでも元気になれたのならそれでいいの」

「お姉ちゃんはどうしてそんなに落ち着いてられるの…?不安じゃないの?」

「これでも内心は不安なのよ?でも、玲奈に頼りなるかっこいい姉と思われたくて頑張って隠してるの」

そうおどけて言うと、玲奈がくすくすと笑い始めた。

「ふふっ。それってそう思われたかったら言っちゃ駄目だよね?」

「そうかもしれないわね。でも、玲奈が元気になったみたいだからこれでいいの」

「そんなこと言って誤魔化そうとしてない?泣いた後で説得力ないかもしれないけど、これでもお姉ちゃんが無理してないか心配してるんだよ?」

「大丈夫よ。私は玲奈とこうして一緒にいられればそれでいいの。でも、玲奈が気にしてしまうのなら、私も少し玲奈に甘えさせてもらおうかしら」

「いいけど、どうしたらいいの?」

「久しぶりに、小さい頃みたいに玲奈と手をつなぎながら寝たいわ」

「そんなことでいいの?」

「玲奈がすぐそばにいるってわかれば安心できるの。駄目かしら?」

「ううん、駄目じゃない。それに…私も手、つなぎなたいな」

そう会話を交わし、私たちは地面の上に横になった。

私が右、玲奈が左に寝て、手をつなぐ。


「こうやって一緒の部屋で手をつないで寝るのって久しぶりだね。小学校卒業以来かな?」

「そうね。中学からは部屋が別々になったから」

「そうだね。懐かしいなあ」

そう言って、玲奈は昔を懐かしんでいる。昔のことを思い出すくらいの余裕はでてきたようだ。



「ねえ、お姉ちゃん」

「なあに?」

「私もね、お姉ちゃんと同じだよ」

「同じ?」

「お姉ちゃんと一緒にいられて、お姉ちゃんが元気なら他はどうだっていいの。元の世界に二度と帰れなかったとしても、お姉ちゃんと一緒なら他は何もいらない」

「玲奈…」

「だからね、お姉ちゃん、一人で無理しちゃ、嫌だよ。知らないうちにお姉ちゃんだけが大変な思いをしていたなんて後から知ったら、私耐えられない」

玲奈とつないでいた手の上に、玲奈のもう片方の手が重ねられた。

「お姉ちゃん、約束して。この先、何があっても二人で頑張るの。お互いに、一人で抱え込まずに一緒に乗り越えるの」

「わかった、約束よ。でも、私は玲奈のお姉ちゃんだから、いざとなったら私は何としてでもあなたを守る。これだけは譲れないわ」

「じゃあ、私はそうならないように強くならなくちゃね。お姉ちゃんに守られるだけじゃいくらいに」

暗闇で顔はみえないが、声色から玲奈がしょうがないなあというような表情をしている気がした。

お読みいただきありがとうございます。

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