拠点づくり
水の問題は魔法によって解決できたが新たな問題が浮上した。
魔物の存在だ。
今の所当たり前の様に精霊も魔法も目にしている。
どちらも異世界物のライトノベルと定番ではあるが…だとしたら魔物も当然のようにいると考えるべきだろう。
実際の危険度は分からないが、魔物ではない普通の動物よりは危険な存在のはずだ。より一層、慎重な判断と行動をせざるを得ないだろう。
玲奈とまた行動方針についての話し合いが必要そうだ。
そう思い、玲奈を見ると、よほど面白いのか精霊達の使う魔法ではしゃいでいた。
「楽しんでいるところ申し訳ないけれど、ちょっといいかしら?」
「うん、どうしたの?」
「山の麓を目指していたけれど、一旦中止しましょう。元々は水を探すのが主な目的で山を向かっていたけれど、水は魔法でなんとかなったわ。でも魔法があって精霊もいるということは、魔物もきっといると思うのよね」
「魔物?そっか、異世界なら魔物がいてもおかしくないよね」
「ええ、だから一旦立ち止まって自衛のためにも魔法の練習をしましょう。最低限、普通の野生動物を相手どれるくらいには魔法を使えるようになるべきね。でもまずは安定した生活基盤の構築が必要よ」
「生活基盤…水は魔法で用意できるから、次に必要なのは安全な拠点か食料かな?」
「夜に安全に睡眠をとるためにもまずは拠点づくりね。魔法を使えば私たちでも簡易的な拠点であれば作れるでしょう。水さえあれば食料は多少後回しでも問題ないはずよ」
確か水さえあれば3週間から1か月は生活できると聞いたことがある。
運動量が多くなるであろうこれからのサバイバル生活を考慮すると、水のみで活動できる期間は短くなるとは思うが数日は大丈夫なはずだ。
「それじゃあ早速作り始めないと。太陽の位置からすればもうお昼くらいだし、日が暮れるまでに間に合わせないとね」
玲奈と協力し、数時間かけて(時計がないため正確な時間はわからないが)何とか日が暮れるまでに拠点を作ることができた。
同じ形の3m四方の土の板を正方形に並べ、そこに同じ形の土の板を乗せただけの拠点だ。
魔物に襲われても壁が壊れないように土をできるか限り圧縮し、50cmほどの厚さにした。
床は寝心地を考え、強度はそこそこにして水魔法で水分を操作して湿気を抜いた。
出入りは屋根の一部に穴を空け、出入りのたびに土魔法で台座を作って上り下りすることにした。手間ではあるが安全性を考慮すると壁に穴を空けるわけにはいかなかった。
建築も魔法も初心者であることを考えれば、即席にしてはよくできた方だろう。
「何とか日が暮れるまでに完成したね、お姉ちゃん」
「ええ。玲奈が魔法が上手でとても助かったわ」
「ありがとう。でもお姉ちゃんだけでも拠点作れたよね?」
玲奈は少し不満げな顔をしている。床から水分を抜くことが出来なかったが、そのことを言っているのだろうか?
「そんなことないわ。魔力が足りないのかこれ以上は魔法を使えそうにないし、多分、私だけじゃ完成させられなかったわ。」
そう言って誤魔化しつつ、玲奈の頭を撫でる。
「そのことじゃないんだけど…」
口調は不満げではあるものの、表情を見ると期限がよさそうだ。
こんな事で誤魔化されてくれる玲奈に苦笑しつつ、明日のことを考える。
水も拠点も、魔法を使用することで、多少は魔法の訓練ができた。だが明日からは狩りをするために、本格的に魔法の訓練が必要だ。それも、攻撃性の魔法だ。
武術や格闘術の経験のない普通の女の子である玲奈に狩りをさせることになるのは非常に心苦しい。
なるべく私が矢面に立つようにしなければ…。
―――自分も同じように武術も格闘術も経験のないことを棚に上げつつ、そう考えるのだった。
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