姉の威厳の危機
青いもやもやに付いていきしばらく歩くと、青、緑、赤、黄のもやもやがたくさん目の前に現れた。
「色々な色のもやもやが見えるのだけど、もしかして精霊さんがいたりするのかしら?」
「うん!色んな色の精霊さんがいる!」
青、緑、赤、黄という何だか定番の様な色にピンときた私は、玲奈にある事を伝えた。
「わー!すごーい!!」
玲奈が大きな声をあげてはしゃいでいる。
どうやらさきほど思いついたことは正解だったようで、緑の精霊は風、赤の精霊は火、黄の精霊は土を操作できるようだ。
これなら青の精霊に頼めば飲み水は確保出来るし、上手くやれば狩りで食料も手に入るだろう。
当面の問題は半ば解決したと言えるが、重要な問題が浮上してしまった。
こんな姉、カッコよくない!!
そう、私は頼れるカッコいい姉でいたいのだ。
これでは妹に頼りっぱなしである。
このままでは姉としての威厳が!!
取り乱してしまったが、何とかなるかもしれない。
先程、精霊達が火や風を起こしているのを見た際、精霊程の濃い色ではないがもやもやが動いているのに気がついたのだ。
もしかしたらこのもやもやは魔力で、精霊達はこれを使って不可思議な現象を起こしているのかもしれないと仮説を立てた。
このもやもやが動く感触も何となく掴めている。
さっそく試してみよう。
まずは火…は危なそうだから水だ。
薄くて見えにくいだけで青い魔力はそこらじゅうにある。
意識を集中し、青い魔力を手のひらの上に集めるイメージをする。
すると、段々と青い魔力が集まってきた。だが、集まっただけで何も起らない。
青い魔力を集めるだけでは駄目なようだ。
どうすればこの青い魔力を水にできるだろうか。
先程はイメージで青い魔力を集められたのだから、空気中の水分が水滴になるイメージをすればよいのかもしれない。
空気中の水蒸気が飽和することで生じる水滴をイメージした。
すると、手のひらの上にこぶし大程の大きさの水が現れた。
私にも水がだせた。姉の尊厳は守られた!
そう思い、玲奈を見るとその大きな目を丸くしていた。
「お姉ちゃん、すごい!それどうやったの!」
水が出した方とは反対の腕に抱きながら興味津々な様子だ。
玲奈にすごいと言われてとても気分が良くなったが、カッコイイ姉でいたい私は、顔が崩れそうになるのをこらえつつ、先程水を出した方法を伝えた。
結果から言うと、玲奈は精霊に意思を伝えて何か現象を起こす事は出来たが、精霊経由なしでは現象を起こす事は出来なかった。
「何が違うんだろうね?」
「分からないわ。でもひとつ言えるのは、玲奈は精霊が見えて意思を伝えて何かを起こせて、私はもやもや、ひとまず魔力と呼ぶけれど、魔力を使って何かを起こせると言う事ね」
「うーん、よくわからないけど、便利ではあるからいっか!」
「それもそうね」
「それよりもお姉ちゃん!もしかして火とか土とか風も起こせたりするの?やってみて!」
そう言ってキラキラした期待の目を私に向けてくる。
「どうかしら?水が出来たのだし、他のもやってみましょうか」
色々試してみたが、「火は赤色の魔力で空気に圧力を加えて圧縮熱を生み出すイメージ」、「風は緑色の魔力で気体を押すイメージ」、「土は黄色の魔力で地面の土を運ぶイメージ」でそれぞれ精霊と同じような事が出来た。
火や風、土を操作する度に、玲奈なは私をすごいすごいと褒めてくれる。
また表情が崩れそうになるのをこらえつつ、内心でホッと息をつくのだった。
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