青いもやもやと精霊
「お姉ちゃん、あそこ、何か光ってない?」
「光?」
山を目指して歩く途中、玲奈が突然立ち止まり何もない虚空を指を指した。
しかし、そこには草原があるばかりで玲奈のいう光は確認出来なかった。
「何も光っている様には見えないけれど…」
「本当?あんなにはっきりと光ってるのに?」
「…見えないわ。でも玲奈が嘘をつくとも思えないし…。その光っている物?のところまで連れて行ってくれるかしら?」
「うん!わかった!」
そう言うと玲奈は私の手を引っ張り歩き出す。
しばらく歩くとまた玲奈が足を止めた。
「え、人が浮いてる?」
「人?!人を見つけたの?!」
「そ、そうじゃなくて!さっき見つけた光が本当は小さな人でふわふわと浮いてるの!」
「?」
状況が分からず思わず首を傾げてしまう。
なぜなら私には光も小さな人も見えなかったのだ。
「ねえ玲奈、本当に光る小さな人がいるの?」
「お姉ちゃんには見えないの?」
「ええ。何だか青いもやもやは何となく見えるけれど…」
「青いもやもや?私はそのもやもやは見えないよ?」
なぜかお互いに見える物が違うようだ。
そうような会話を交わしつつ、青いもやもやの近くまで移動した。
「背中のあれは…羽根?」
玲奈によればどうやら小さな人の背中に羽根があるらしい。
「お姉ちゃん、こういう何処か分からない場所で羽根がある小さな人に出会うのって本で読んだことがあるよ。異世界?ってやつじゃない?この子、もしかしたら精霊だったりするのかな?」
玲奈はそう言って目をキラキラさせている。
玲奈の言う言葉を疑う訳ではないが、私には玲奈の言う精霊は見えないためどうにも実感が湧かない。
「異世界で精霊と言ったら魔法とか使えるのかしら。試しにその精霊に風を起こしたり、水を出したり出来ないか伝えてみてくれない?」
「うん、ちょっと待ってね」
玲奈が青いもやもやがあるあたりにに話しかける。
すると、青いもやもやの周りにそれよりも薄い青色のもやもやが集まりだし、何もなかった場所に水の玉が現れた。
ここまで不思議な光景を見ると、いよいよここが異世界だという現実を受け止めなければならないかもしれない。
私達がいた世界には羽根のついた小さな人などいなかったし、こんな風に急に水が現れることはなかった。
元の世界に帰れるのかは気になったが、当面の生活を好転させるチャンスかもしれない。
私も試してみよう
「ねえ精霊さん、私にはあなたの事は見えないけれど私にも水を出してもらえるかしら?」
青いもやもやに話しかけてみた、水は出てこなかった。
「どうやら私では駄目みたいね」
「私みたいに精霊が見えないと駄目なのかも?」
「かもしれないわね。玲奈、今度は精霊さんに火を出したり出来たいか聞いてみてくれる?」
「お願いしてみる!」
玲奈が青いもやもやに話しかけると、もやもやが移動しだした。
「精霊さんが移動しているみたいだけど、どうしたの?」
「あの精霊さん、火は出せないみたいな仕草をしてたよ。そしたら急に移動し始めたんだけど、何だか付いて来るように誘われてる気がするんだよね」
「では付いていってみましょうか」
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