【25:騙されちゃダメだ!御堂はスケベだぞ!】
「違うけどだめだ。堅田が嫌がってる。それが唯一無二の理由だ」
「ああん、御堂君ありがとう……」
俺の背中にしがみついて礼を言う堅田に目をやると、うっとりした目で俺を見つめていた。
──うん、照れる。
「うわ、なんか御堂のやつ、いいカッコしてないか?」
「メガネ拾う作戦なんてずるいぞ」
「堅田さん、騙されちゃダメだ! 御堂はスケベだぞ!」
「切山やめとけ。だけど御堂も棚ぼた許せん」
なんかめちゃくちゃ言ってるやつがいる。
普段はこんな無茶を言うやつらじゃないのに、集団心理ってのは恐ろしい。
それとそれだけ堅田がめちゃくちゃ可愛いから、みんな顔を見たいんだよな?
すげえよ堅田。
でもどうしよ?
こんなに大勢の男子に囲まれて、みんな諦めてくれない。
「なあみんな! 堅田さんが困ってるじゃないか。いい加減にしろよ!」
教室に怒気を含んだ男子の声が響いた。
声の方を見ると、俺の親友、谷町 遊助が仁王立ちでみんなを睨んでる。
遊助はイケメンで背の高いスポーツマンで明るくて優しい。
女子から人気ナンバーワンなのはもちろん、男子からも人望が厚い。
普段は優しい遊助が珍しく怒ったものだから、男子達はギクッとした様子で静かになった。
さすが遊助だ。
俺がいくら言っても聞かなかった男子達が一瞬で黙るなんて。
「あ、そうだな。ふざけすぎちゃったよ。すまんな谷町」
「謝るなら堅田さんに謝ってくれ」
「あ、堅田さんごめん」
切山が謝ると、はやし立てていた他の男子も気まずそうにペコっと頭を下げる。
──と思ったら。
今度は女子たちから黄色い歓声が上がる。
「きゃあああ、谷町クンカッコいい~」
「顔も行動もイケメン!」
「ううん、やっぱ素敵ぃ~」
堅田も遊助を見つめている。
「あ、ありがとうございます谷町クン」
あ。堅田はすっごく照れてる。顔が真っ赤だ。
切山が遊助の顔を見ながら、誰に聞かせるともなく呟いた。
「ああ、堅田さんも谷町に惚れちゃったかぁ。男が見てもカッコいいもんな。頼る相手は御堂じゃなくて谷町だって、ようやく気づいたみたいだな、あはは」
やっぱ堅田も俺なんかより、イケメンの遊助の方が好きだよな。
寂しい気もするけど……うん、それは仕方ない。
「あの……切山クン。勝手に決めつけないでください。谷町クンはとってもいい人ですけど……御堂君も負けないくらいカッコいいんです」
は?
なにを言い出すんだ?
堅田の爆弾発言のせいで周りがざわつく。
「え? え? え? 私……何か変なこと言いましたか?」
堅田は両手で頬を抑えて、真っ赤になってる。
うん、かなり変なことを言ったぞ。
俺がカッコいいなんて言ったら、気がふれたかと思われるぞ。
「いや、堅田さん。君はまったく間違っていない。俺もそう思う。翔也はカッコいいよ」
遊助までなにを言うんだよ。
恥ずかしくて隠れたいけど、あまりに恥ずかしすぎると身体が硬直して動けないということを知った。
「で、ですよね……」
嬉しそうに笑う堅田を見て、切山が忌々《いまいま》しそうにつぶやいた。
「けっ。御堂なんて谷町の腰巾着だから、陽キャだって勘違いされてるだけ。ニセ陽キャのくせに偉そうにするから困ったもんだ」
小さな声だけど、自分の名前を呼ばれたからか聞こえてしまった。
だけど全部事実だから、言い返さないでおく。
俺が陽キャのように振る舞えてるのは、ツッコミと遊助のおかげだ。
「ちょっと待てよ切山。今のは聞き捨てならないな」
「え?」
あ、遊助にも聞こえてたのか。
「いや遊助、いいから。俺をかばってくれるのはありがたいけど、別にいいよ。俺は気にしてないから」
「いや、翔也が気にしてなくても俺が気にするんだ」
なんだか聞いたことのあるセリフ。
デジャブか?
──あ、そうだ。
前に堅田が上級生に地味なブスだとバカにされた時だ。
堅田は気にしないって言ったけど、俺が気にするって言ったっけ。
「翔也は俺の腰巾着なんかじゃない。逆に俺が翔也にくっつきに行ってるんだ。友達として大好きだから」
急にざわつく教室。
流れがわかってない一部の女子から「いやん、BL?」なんて声も上がる。
違うから!
でも遊助。いくらなんでも、それは俺を持ち上げすぎだぞ。
「俺は翔也のおかげで今がある。こいつはめっちゃ良いヤツなんだ。翔也を侮辱するやつは許せない。謝れ」
うわ、ちょっと待って。
めっちゃ嬉しいけど、それはいくらなんでも言い過ぎだよ。
切山なんて遊助にビビって、おどおどしてるし。
「わ、悪かったよ。謝る」
それにしても、遊助がこんなに激怒りするなんて……
ホントに珍しい。
後で俺が遊助にお礼を言ったら「親友だから当たり前だろ」って、なんともまたイケメンなセリフを返してくれた。




