蒸気と歯車
初めて書いた作品で、文も読みづらいと思いますが、読んで感想をくれると嬉しいです。
俺は耳を疑った
「かつて、魔法と剣の世界が存在した」彼女は確かにそう言った。
信じられるはずがない、過去にそんな世界があった筈はない。
だってここは「蒸気と歯車の世界」なのだから。
でも見てしまった、無機質な空を一瞬でも晴らしたあの光を、
だからすがる思いで彼女に言った
「俺に教えてくれ 過去のことを、魔法のこと、そして君のこと、」
「ひどい口説き文句だな、いいよ教えてやろう、その代わり私の力を貸してくれ
あの人の意思をこの時代に伝えるために」
12時間前、、、、、、
「マーク!マーク!おきろ!」
まぶたが重い、まぶたの隙間から光が差し込み、無理やり瞳を空に晒してくる。
、、と同時に酸っぱい油と炭の匂いがする。 流石に6年もここで仕事をしていれば、この匂いに慣れて来るのだが、年々匂いがキツくなってくる気がする。
煙を吐き出す煙突を持つ無機質なコンクリートでできた直方体の建物が目に入る。
とたん目の前に鼻が真っ黒になっている中年男性が現れた。
「休憩時間は終わりだぞ、さっさと歯車の製造に取り掛かれ」彼はそういうと歯車の金型を指差して見せた、彼が俺の上司にあたる人物で名を マクル という。 かれこれ6年間彼の下で働いている。
俺はなぜ自己紹介をしているのか、誰かの都合なのだろうが構わず話を進めるとしよう。
彼の紹介をする前に自分の紹介をするべきだった。 俺の名はマークという、年齢は大体16歳ぐらいだったと記憶している。だとするともう10歳の頃からこの壁に囲まれた仕事場で働いていた計算になる。次に皆さんも知りたいだろう、この世界について俺が知っていることを話させてもらう。
ここは言うなれば、皆さんから言えばスチームパンクという呼び名で呼ばれているであろう世界だ。
簡単にいうと蒸気と歯車で成り立っている機械の世界だ。 仕組みはよくわからないが、いろいろな形の歯車を蒸気で動かし、様々な作用を引き起こす、その繰り返しでできた世界がこの世界だそうだ。
実際これについては何も疑う余地はない。
俺たちはその歯車を作る仕事をしている、半ば奴隷のような扱いをされながら、、
途端俺の自分語りは
「おいっ!俺の最高傑作ができたかも知れねえぞ!!」と叫んだ彼の声にかき消された
この声の主は ジャルラガ 俺の同期だ。 作った歯車の形にこだわる変人であり、なぜか金型も使わないとの噂だ。
「みてみろよ、この滑らかな角!この形はな計6つもの歯車に対応しているんだ、昨日寝ずにやすり掛けしたんだぜ!」
「お前さあ、そんなことしなくても金型でそこそこの形はできるし、何より効率が悪い なんのためにそんな無駄な努力をする?」少しイライラしていたのかも知れない、言い返してしまった。
「そりゃあ」
数十秒の間が開く
「こんな壁で、死ぬまで何の残せずに何も為せずにいるつもりはねえよ」
俺は自分が同じことを思っている気がした。
「俺、いつか蒸気職人になりたいんだ、の歯車をもっと鍛えてもっと磨いていて、、いつか必ず、、、」
地雷を踏んでしまったことに気がついた、いつも自信満々だった彼の顔は一瞬で萎れてしまった。
そりゃあ俺だって壁の中でこのまま一生を迎えるのは嫌だ。 だけどどうすることもできないじゃないか、
可能性を閉ざすこの壁の中じゃ、、、、、俺たちは生まれた時から「歯車奴隷」で、あいつらは選ばれて、
「蒸気職人」になるんだから、この差は何物でも埋められないじゃないか。
黄昏ていると声が聞こえた。「おめえ!発注した歯車と違うじゃねえか!!」マクルの声だ。
声の方向へ振り返ると、鉄の棒が顔面に衝突した。
「てめえ!奴隷のくせになんで一丁前にミスするんだ!歯車だけは機械は作れない、だからおめえらの仕事が、あるんだろうが!立場を弁えろクズが!」
めちゃくちゃだ、その場に顔を覆って崩れ落ちる。マクルは構わず鉄の棒で追い討ちをかける。
気が動転している、早く鎮めないと、だけどその前に し ん で し ま う 、 、 、
「光の魔法 第五の呪文 ホーリーメルキス」 女性の声が聞こえた。
と同時に地面が発光し、マクルは何かの衝撃を受け、吹っ飛び、気を失った。
なんだ?今のは、機械の発光か?違う、機械よりももっと神秘的な、、ふと上を見上げる、空に誰かが浮いている。 女性だ、おそらくあの声の主だ。。
「やっぱりこの魔法は完全だったんだ」
魔法?知らない単語だが、どこか懐かしさを感じる響きだ。
「君!今のは何なんだ?どうやってやったんだ?」
気づいた時には声が出ていた。彼女はこちらに目をやり、こう言った。
「かつて剣と魔法の世界が存在した、だが滅んでしまった。あの忌々しい蒸気と歯車によって」
単語の意味は理解できなかった、だけどなぜか安心した。だけど信じられなかった、だが気持ちが、口が動いてしまった。今を変えたい、だからこのチャンスは逃せない。
「俺に教えてくれ 過去のことを、魔法のこと、そして君のこと、」
彼女は僕に目を合わせ、微笑みこう言った。
「ひどい口説き文句だな、いいよ教えてやろう、その代わり私の力を貸してくれ
あの人の意思をこの時代に伝えるために」
心臓の鼓動が体を駆け巡る。手に、足に、血が通ってゆく。体を機械に、感動を蒸気に俺の機械が動き出した