表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/21

3-2 ゴブリンもランドルへ

 

 ランドルの言う通り、あまり時間はなかった。邪王龍は小走りで螺旋階段を上り始めた。


「ッ……やっぱり遅いがこのペースじゃないと後で辛そうだな」

『どっちにしても、この距離を時間内に素直に上っていくのは無理やすよ?』

「む、無理なのか?」

『はい、無理やす。だってココ、地下2万メートルって聞いたことあるやす』


「に、2万!?」


 邪王龍の異世界の故郷にあった山でも4千メートル弱だったはずだ。その5倍にもなると……耳を塞ぎたくなる。


 さすがの邪王龍もその数字を聞くと諦めた。


 もしかしたら、というか100%かつての力を持った邪王龍ならばそのまま走って、または飛んでいっただろう。しかし今の状態では厳しいと判断したようだ。


「じゃあ、徒歩以外の移動手段を考えるしかないな」


『あ! あそこにミニゴブリンがいるやす!』


 ここにいるミニゴブリンはこのダンジョンを取り締まっているウィライズ王国の召喚士が正式に召喚した使い魔だ。このミニゴブリンは身長1メートルと小柄ながらも、王国の言伝を魔王たちに伝えたり、ちゃんと冒険者を襲ったりしている。


 それなら一応魔王の味方だろう。何か助けてもらえるかもしれない。


 そのミニゴブリンはなぜかシャベルを持って穴を掘っていた。邪王龍は大声でミニゴブリンを呼び、近寄る。


「おーい! ミニゴブ! ちょっと頼みがあるんだが……」


 ミニゴブリンは手を止め、声がした方にくるっと振り返る。ミニゴブリンの赤い瞳は暗闇の中で怪しく光っていた。


『人間、殺る!』


 その瞬間ミニゴブリンは恐ろしい勢いで距離を詰め、シャベルを振りかぶった。


 人間以下の身体能力である邪王龍は避ける素振りもせず、頭の上から直で食らった。


『主!?』


 邪王龍の隣で浮遊していたランドルは攻撃は見切れけたものの、サポートする余裕はなかった。



「チッ。痛すぎだろ!? 血出た? 出たよな! また魔力無駄にしたぁ!!」


 ……ランドルの心配は必要なかったようだ。


 邪王龍は頭から血を流していたのだが、傍から見ればただ騒いでいるだけに思えてしまう。きっと解放の時に負った自分の痛みより軽かったのだろう。


 ミニゴブリンはあの直撃を受けても死んでいないことに驚いたが、すぐにもう一度シャベルを構えてきた。


 一方、邪王龍の方は……


「お前、よくも俺の大事な魔力を!」


 ミニゴブの方へ走っていき……


「うぎゃっ!」


 ミニゴブに行きつく前に魔力が尽きて倒れた。



『何やってるんやすか……』


 ランドルは呆れて邪王龍を浮遊させ、一時撤収……と思いきや、ミニゴブリンはまだ帰してはくれないようだった。



『人間!』

『人間!』

『人間!』


 暗闇の奥から赤い光が斑点のように増えてゆく。同時に殺気も徐々に増していった。



「なぁ、ランドル」

『なんやすか』


「俺、もうほとんど動けないからこのまま浮かばせて地上まで運んでくれないか?」



『……拒否するやす』


「裏切り者ぉぉ!!」


 ランドルは邪王龍をドサッと地面へ降ろし、邪王龍を見捨てて逃げていった。 

 ミニゴブもそれぞれ武器を持って襲いかかってくる。


『殺る!』


 邪王龍は急いで立ち上がり、最後の力を振り絞って一歩踏み出した。


「んぎゃっ!?」


 すると……邪王龍の足場が崩れ、するすると穴へ飲み込まれていった。

 ダンッと尻を地面にぶつけた。穴はそう深くはなかった。誰でも簡単に掘れるような……。


「まさか! この穴、ミニゴブの罠かよ!?」


 邪王龍が声をかける前にミニゴブリンがシャベルを持っていたのは落とし穴を作るためである。邪王龍はまんまとそれにひっかかったわけだ。


 ミニゴブリンたちはこのチャンスを逃さず、次々と穴に飛び込んでいく。


『人間!』

『人間!』

『殺る!』


「人間人間ってうるせえ! 厳密にはちがうっつーの! 散れ散れ!」


 邪王龍は穴の中で人間以下の拳を振るって抵抗していた。しかし最奥付近のモンスターはたとえモブでも決して弱くなかった。というか今の邪王龍の何倍も強かった。


『主!?』


 先を行っていたランドルは浮遊していたため落とし穴に気付かなかったようだ。急いで邪王龍の元へ向かう。


『邪魔やす! モブごときがぁぁ!!』


 口に縫われた糸をプチプチと引きちぎり、大口を開けて立ちはだかるミニゴブたちを噛み砕き、ブルドーザーのようにミニゴブの肉塊を集めていった。


 仲間の危機を察知したミニゴブは邪王龍から目を離し、ランドルを最優先攻撃対象として定めた。溢れるようにして穴から出てきたミニゴブたちをランドルは一網打尽に食い荒らした。


 ……しばらくすると、戦場はひどく赤黒くて、邪王龍が落ちた穴は小さな血の池になっていた。


 ランドルが穴を覗くと、邪王龍が拗ねているのが見えた。 


「ランドル! 助かったのは事実だが、お前の裏切り行為はまだ許してないぞ!」

『ああ、それは悪かっーゴホッゴホッ』


「ら、ランドル!?」


ありがとうございます!


改稿しました


次はゴブリンの群れとド派手に戦います(?)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ