山賊事件終結
俺とカトレアがいきなり現れたことに、アイリスとキャトレイさん、その他にも知り合いの人に驚かれた。
「カトレアーー!」
キャトレイ辺境伯はカトレアに駆け寄り抱きしめた。
「父上!」
カトレアもキャトレイを抱きしめ返した。
「……心配したんだぞ。」
キャトレイは涙を流していた。
「……ごめんなさい。」
カトレアは俯きながら答えた。
「本当に無事で良かった。」
キャトレイはカトレアの頭を撫でて、サクラに目を向けた。
「……キャトレイさん。カトレアを危険な目に遭わせてしまい、申し……?」
俺はカトレアの危険な目に遭わせてしまったことをキャトレイさんに謝ろうとしたが、キャトレイさんに頭を下げられて言葉に詰まってしまった。
「サクラ君。娘の……カトレアの危機を救ってくれてありがとう。」
キャトレイさんは深く頭を下げたままお礼を述べた。
「……キャトレイさん、頭を上げて下さい。……俺が上手く戦えていたら、そもそもカトレアは捕まらなかったかも知れないんです。」
俺はキャトレイさんに頭を上げるよう頼んだ。
「冒険者になると決めたのはカトレアだ。……捕まったのもカトレアの実力不足。……サクラ君はカトレアを救ってくれた。君は悪くない。」
キャトレイさんの言葉で、俺は救われた気がした。
「……ありがとうございます。」
俺はキャトレイさんに感謝の気持ちを込めて頭を上げた。
「……それで今回のことなんだが、経緯はアイリスちゃんから聞いている。洞窟内での出来事を教えてもらえるかな?」
キャトレイさんは辺境伯の立場として詳細を把握したいとのことだった。
「私も一緒に聞かせてもらえるかな?」
ギルマスのクフェアさんが近づいて来た。
ギルマスとは、何度かギルドで話をしたことがあり、既に顔見知りになっている。
「分かりました。ですがその前に、崩落の影響が無ければ、捕まっている女性達の救出をお願いします。洞窟を進んで分かれ道を左に行ったところに、数名の女性が囚われていました。山賊の生き残りは……居ない筈です。」
俺はカトレア救出前に見た女性達のことをキャトレイさんとクフェアさんに伝えた。
「何だと!?」
「何ですって!?」
二人は驚いたが、直ぐに部下の人に指示を出して、洞窟内の探索に向かった。
そして、俺は洞窟内での出来事を二人に伝えた。
アイリスが応援を連れて来るのを待っていたが、女性の悲鳴が聞こえた為、洞窟に突入したこと。
山賊に囚われている女性を発見したこと。
山賊との戦いのこと。
オオバコとゲウムと名乗る者を取り逃がしたこと。
「成る程ね。本当なら私たちの到着を待ってもらいたかったけど、生きて戻って来れたから良かったわ。」
クフェアさんにやんわりと注意されたが、確かに俺が待っていれば、オオバコとゲウムを取り逃がさずに済んだかも知れない。
「本当に無事で良かった。……それにしても、サクラ君は、転移魔法が使えたのかい?」
キャトレイはサクラが転移魔法を使用したのを一度も見たことがなかった為、疑問に思い質問した。
「今までは使えませんでした。……洞窟が崩落する中で、生きようと必死でした。……転移魔法が使えたのは奇跡ですよ。」
俺は、洞窟が崩落する時の事を思い出して身震いした。
「……基本属性なら分かるが、特殊属性は元々無いと使えない筈だが? サクラ君は特別なのかな? ……あまり詮索は良くないな。」
俺が持っていなかった特殊属性を使用した事で、クフェアさんが何かに気付いたようだが聞いては来なかった。
詳細の説明を終えた頃、洞窟内から囚われていた女性達が無事に救出されて来た。
「ありがとう。あなたのお陰で助かったと聞きました。本当にありがとう。」
女性達は、俺に近づいて口々に感謝の言葉を述べて言った。
「無事で良かったです。」
俺は女性達に声を返し、女性達は応援で来ていた馬車に乗り込み、シルビア村まで送られた。
「俺達も帰ろう。」
俺はアイリスとカトレアに声を掛け、シルビア村へ向け出発した。
次回と次次回は、戦闘ありません。




