脱出不可能!?
出入口を塞ぐように、オオバコと山賊10名が立ち並び、俺たちに向けて武器を構えていた。
「……おい。コザ、なんで小娘の手枷を外してやがるんだ?」
オオバコはカトレアの手枷に目を向けた後、俺に視線を移した。
「……。」
……洞窟からの出口を塞がれてしまった。
「黙ってねぇで何とか言ったらどうだ!」
オオバコが俺に向かって叫び声を上げた。
「……カトレア行けそう?」
俺は小声でカトレアに声を掛けた。
「……やってやるわよ。」
カトレアは、外されていたネペンテスを腕に装着した。
「何ごちゃごちゃ言ってやがる!?」
オオバコは額に血管を浮かばせて怒っていた。
「行くよカトレア。“変身”、“ブロッサム”」
俺は、山賊姿から戦い易いヤマトの姿に変身し、ネペンテスから草薙剣を取り出して構えた。
「“ブロッサム”」
カトレアもネペンテスから薙刀を取り出して構えた。
「……? 後で説明しなさいよ」
カトレアは俺の変身した姿を見て驚いていたが、戦いに意識を切り替えたようだ。
「ここから出たら説明するよ。」
俺はカトレアにそう返した。
「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」
山賊たちは、突然のことに頭が追いついていなかった。
「な!? 姿が変わっただと!?……何者かしらねぇがお前らやっちまえ!」
オオバコの指示により、山賊たちがサクラ達に向かっていった。
「カトレア! 連携して戦うよ! 左手側から切り崩すぞ!」
俺はカトレアに声を掛け、左手側から迫って来ていた山賊に向かった。
俺は、出来ることなら広範囲魔法で山賊を纏めて仕留めたかったが、洞窟が崩れ落ちたら生き埋めになると考え、カトレアと共に属性付与による武器での攻撃をメインにして戦った。
山賊たちも同じ考えなのか、それとも大規模な魔法を使えないのか、洞窟が崩れるような魔法を使用してこなかった。
「やあぁーー! “火回転”」
カトレアが薙刀に火属性を付与して、回転攻撃を繰り出した。
「はあぁーー! “雷突き”」
俺は、カトレアの攻撃が止まると空かさず、雷属性を草薙剣に付与して突き飛ばした。
「くそぉーー。何て強さだ。」
山賊も残り2人と数を減らしていた。
「そんなガキ相手に何をやっているんだ!挟み込んで倒すんだ!」
オオバコの指示で、山賊は左右に配置を変えて武器を構えた。
「「死ねぇーー!」」
斧を持った山賊二人が同時に駆け出して来た。
「はぁーー! 終わりだ!」
俺は、山賊の振り下ろした斧の柄部分を下から掬い上げて跳ね除け、返す刃で山賊を斬り伏せた。
「“光一閃”!」
カトレアは、薙刀に光属性を付与して山賊の振り下ろす斧より先に、山賊の胴に光の一閃を叩き込んで山賊を倒した。
「……使えねぇ連中だ!」
オオバコが出入口から離れて、サクラ達に駆け出していた。
「俺様が相手してやる!“土鎧”」
オオバコが土属性を身に纏い、サクラ目掛けて大剣を
振り下ろした。
不味い!
「“雷形態”」
俺は咄嗟に雷属性を身に纏い、草薙剣でオオバコの大剣を防いだ。
「くっ!」」
……前の時は、魔法衣は使用してなかった筈!?
こいつかなり強くなってる!?
「死ねぇ!」
オオバコが更に力を込めて来た。
やばい!?
「やぁーー!!」
俺がやられると思ったその時、カトレアの薙刀がオオバコの脇腹に傷をつけた。
「ちっ!」
オオバコはバックステップで俺から距離を取った。
「サクラ大丈夫?」
俺の側にカトレアが近づいて来た。
「ありがとうカトレア。助かったよ。」
俺はオオバコから目を逸らさずに、カトレアにお礼を言った。
「一撃で終わらせてやる!“土の巨人剣”」
オオバコが土属性を大剣に付与し、大剣が巨大な土の剣と化した。
「うそ!?」
カトレアは驚き動けなかった。
「“水の半球形”!」
俺は、連戦により殆ど魔力が無くなっており、残り少ない魔力で水のドームを作り出した。
「しゃらくせぇー!」
オオバコが土の巨人剣を振り下ろした。
びしゃぁぁーーん!
「うわぁーー!」
「きゃっ!」
俺の水のドームにより、オオバコの土の巨人剣の威力をだいぶ削ぐ事が出来たが、水のドームは弾け飛び、俺とカトレアは吹き飛ばされた。
「ぜーはーぜーはー!……見たか、俺様の、ち、か、ら、を……。」
俺は何とか上体を起こして、オオバコを見ると、オオバコの体が震えていた。
「?」
何が起きてるんだ。
「……か、体が、うごか、ねぇ。」
オオバコは大剣を手から離し、地面に倒れた。
「……やっと効いてきたみたいね。」
カトレアがオオバコの姿を見てそう言った。
「……なに、を、しやがったぁーー!?」
オオバコは血反吐を吐きながら叫んだ。
「さっきの攻撃の時に、毒と麻痺をプレゼントしてやったのよ。」
俺とカトレアは立ち上がり、互いに支え合って立った。
「……ぐっ、ぐぞぉー。」
オオバコは仰向けのままピクピクと痙攣していた。
「……カトレアを助けに来たのに、逆に助けられちゃったね?」
俺は苦笑いしながらそう言った。
「サクラが来てくれたから助かったのよ。ありがとね。」
カトレアは笑顔で返事をした。
俺は、変身を解除して金髪姿に戻った。
「そろそろ応援も着く頃だね。早く休みたいよ。」
「そうね。私もクタクタよ。」
俺達は肩を組んで支え合いながら出口に向かおうとした。
「素晴らしい! こんな餓鬼がオオバコを倒すとは!?」
フードの人物が拍手して向かって来た。
「「!?」」
そうだ! まだこいつが残っていたんだ!
俺達は武器を構えた。
「そう焦るな。」
フードの人物は一瞬でオオバコの側に移動していた。
速すぎだろ!?
……転移か?
「全く。お前は実力だけならB相当なんだからしっかりしろよ。頭の所に送るから治してもらえ。」
フードの人物がそう言ってオオバコに触れると、オオバコの姿が消えた。
「……転移か?」
今のを目の前で見て、俺の考えは確信に変わった。
「……ほぉ。……楽しい殺し合いが出来そうだったが、殆ど魔力を使い果たしたみたいだな。……そんな奴とやってもつまらんだけだな。」
フードの人物が溜息を吐き、天井に手を向けた。
「お前達を殺す者の名くらい教えてやろう、俺の名はゲウム! あばよ餓鬼ども!“闇の衝撃”!」
ゲウムと名乗った者の闇魔法が洞窟の天井に直撃し、天井が崩れ出した。
「“移動”」
ゲウムの姿が消えた。
……俺とカトレアに崩落した洞窟の天井が迫っていた。
ゲウム→9月4日の誕生花
花言葉は、前途多難




