アジト潜入
アイリスが村に応援要請に向かってから、一時間が経過していた。
「アイリスは、まだ掛かるか。村までの距離もあるし、直ぐに準備してもまだ数時間は掛かるよな。」
「……いやぁー……」
洞窟から微かに悲鳴が聞こえた。
洞窟から女性の声!?
カトレアの声じゃない!?
他にも高まってる人がいるのか!
「……アイリスごめん。もう待てないよ。」
俺は覚悟を決めた。
「“変身”」
俺は、洞窟の中に入った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
サクラが悲鳴を聞く、少し前の洞窟内
「この小娘が、シルビア村の辺境伯の娘なんですかい?」
薄汚い格好の男がオオバコに話しかけた。
「あー。間違いねぇ。この小娘だ。」
オオバコは答えた。
「村から討伐隊が組まれて、ここに攻め込んでくるんじゃねぇですかい?」
男は狼狽えながらオオバコに質問した。
「心配するこたぁねぇ。村からここまでは距離がある。討伐隊が来る前にトンズラすりゃ良いんだよ!」
オオバコは既に洞窟内の荷物を纏め始めていた。
「さっすが、オオバコさん! アッタマいいーぜ!」
男はヘラヘラと笑い、自分の荷物を纏め始めた。
「……小娘には、しっかり『魔力封じの手枷』はしたんだろうな?」
「勿論ですぜ! さっきの戦闘で小娘の魔法を見ましたが、この歳であれだけの魔法……そのまま置いとけませんぜ!」
「……全くだ。……監禁している女達も馬車に入れて連れて行くぞ。準備しておけ。」
「分かってますぜ。」
男はそう言って手荷物を持ち、オオバコのそばを離れた。
「……手酷くやられたもんだ。早く頭の所に合流した方がいいな。」
オオバコは、その後も荷造りを続けていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「 お前らにオオバコさんからの指示を伝えぜ。移動の準備をしろ! 荷物を纏め、女達を馬車に乗せろい!……討伐隊が来るまで、まだ少し時間があるってこった!滾ってる奴がいるなら解消しとけぃ!」
男の言葉に男達は、女達を監禁している牢屋に向かった。
男達が向かった牢屋の中には、10代半ばから30代くらいの女性が10人ほど鎖で繋がれていた。
男の一人が牢屋の鍵を開け、男達は次々に中に入り、女性に乱暴を始めた。
「いやぁーーーー」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「……うっ。……ここは?」
私は意識を取り戻し、周りを見回すと薄暗く、洞窟の中にいると理解した。
「……私は捕まちゃったのか。」
私は自分が情けなくて仕方がなかった。
「あんなに訓練したのに、……サクラとアイリスは無事かしら。」
私は自分の今後も心配だったけど、サクラとアイリスのことも気になった。
「……近くに居ないってことは、二人は無事なのかしら?」
……助けに来てくれるかな?
……違う、二人に頼りきっちゃ駄目だよね。
何とか私に出来ることを……
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
サクラが悲鳴を聞いた頃、アイリスは村に辿り着いた。
アイリスがこの短時間に村まで辿り着けたのは、残り少ない魔力を効率的に使用して、雷鎧を纏い、高速で駆けたためである。
「ハァァハァァ……ハァァハァァ。」
やっと村まで帰ってこれた、早く警備隊に伝えないと。
「アイリスちゃんどうした!? そんなに慌ててどうした!? 朝護衛で出て行ったばかりだろ!?」
アイリス達をよく知る門番が駆け寄って来た。
「さ、山賊の一味だった、オオバコさんに、護衛対象を、殺されました。カトレアも、山賊に、連れ去られました。助けを!」
アイリスは息も絶え絶えに門番に事情を説明した。
「なっ!? なんだって!! おい!ここの持ち場を代わってくれ! 緊急事態だ!」
門番の男は、直ぐに休憩中の男に声を掛けた。
「アイリスちゃん。よく頑張ったね。後は大人に任せるんだ。俺が警備隊とギルドへ走る。道案内出来るかい?」
門番はアイリスに労いの言葉を掛けた。
「お願い、します。私が山賊のアジトまで案内します。」
アイリスの言葉を聞いて、門番の男は直ぐに警備隊詰所へ駆け出した。
「サクラ着いたよ。直ぐに戻るから早まらないでね。」
アイリスの願いも虚しく、丁度サクラは単身アジトへ潜入したのだった。




