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サクラのネペンテス

 俺達は、何とか魔物を撃退することに成功した。


「この魔物どうする?」

 カトレアが俺達に意見を求めた。


「俺のネペンテスなら入ると思うよ?」

 俺は左手の人差し指で、右腕のネペンテスを指差した。


「いやいやいやいや! ネペンテスってそんなに入らないでしょ?武器の出し入れくらいって聞いたわよ!」

 カトレアに疑われた。


「試してみましょう。」

 アイリスも入りきるのか信じ切ってない感じだ。


「“収納(ストレージ)”」

 俺は、右腕を魔物へ向けて、ネペンテスの収納能力を使用して、魔物三匹をネペンテスに入れた。


「入った入った!」

 俺は魔物が収納出来たことを喜んだ。

 だってそうだろう?討伐部位も分からないし、何処が売れる部位なのかも分からないのだから、丸々持って帰るのが一番だ。


「「……。」」

 二人は言葉を失い、目をパチクリしていた。


「お、おかしいわよ! なんでそんなに入るのよ!」

 カトレアは魔物がネペンテスに収納出来たことに驚いていた。


「……特別製だし。」

 俺は、ボソッと声を出して答えた。


「どんだけ〜!」

 カトレアは呆れた感じになっていた。


「特別な魔石を使用しているらしいし、付与してくれた人達が凄かったから。」


 そもそも、ネペンテスや魔法付与される物には、魔石が必要である。


 魔石の質や大きさが大事であり、魔石の質が良いと大量の魔力を貯蔵出来るし、使用する際は少量の魔力で済む。


 俺が身に付けているネペンテスは、特別な魔石と聞いている。


 勾玉の方は、そこそこな魔石を使っている。


 俺は、寝る前などに魔石に魔力を補充しているため、ネペンテスはいつでも稼働出来るし、俺の変身が解けることもない。


「それより、やっぱり早めに二人の武器も仕入れた方がいいね。今回みたいなことがあると危ないし。」

 受付嬢の言っていた、()が起きてしまったんだから仕方ないと思うよりも、可能性があるなら警戒しておくべきだったと反省した。


「そうね。」

「そうよね。」

 二人の返事を聞き、俺達はシルビア村に戻るために歩き出した。


 俺達はシルビア村に戻り、その足でギルドへ向かった。


「戻りました〜。」

 俺は受付嬢に声を掛けた。


「お帰りなさい。薬草採取は出来たかしら?」

 受付嬢が首を傾げながら聞いて来た。


「何とか出来ましたよ。カウンターに出していいんですか?」

 俺は魔力草を出す場所を確認した。

 ここに置いたら、カウンターが魔力草だらけになるな。


「別室でお願いします。」

 俺達は受付嬢に別室へ案内され、シートの上に魔力草を出すように言われた。


「これが魔力草50本です。」

 俺はそう言って、ネペンテスから魔力草50本を取り出した。


「? これだけ? 毒草とか結構混じると思うから足りないと思うわよ? 多めに採取しなかったの?」

 受付嬢は、俺達が魔力草を見分けられると思わなかったようだ。


「大丈夫ですよ。これ全部魔力草なんで。」

 見えたのだから間違い無い筈だ。


「……鑑定眼でも持っているの?……スキルの詮索は良く無いわね。今から確認するわね。」

 そう言うと、受付嬢の目が光、スキルを発動したのが分かった。


「本当に全部魔力草ね!数もきっちり50本だから、依頼達成ね。」

 受付嬢はスキルを解除して、報酬を手渡してくれた。


「良かった。……あとお願いがあるんですけど、魔物の買取ってお願いできますか?」

 俺は報酬を受け取り、受付嬢に魔物の買取が出来ないか聞いてみた。


「え? 魔物の買取なら出来るけど、……もしかして薬草採取で魔物に襲われたの!?」

 受付嬢は驚いて大声を出した。


「そうなんですよ。結構幅取りそうですけど、シートの上に出して良いですか?」

 俺は、薬草を先程出したシートを指差した。

 既に薬草は受付嬢に回収されている。


「良いですけど……魔物の牙や毛皮を持っているようには見えませんが?」

 ……やっぱり魔物の牙とか毛皮を持って帰って来ればよかったのか?


「じゃあ出しまーす!“取り出す(テイクアウト)”」


 余談だが、ネペンテスの武器の取り出しは、ブロッサムが発動のキーワードになっているけど、俺の特別製は、収納(ストレージ)取り出す(テイクアウト)が武器以外の物の出し入れの発動キーになっている。


 俺は、シートの上に魔物三匹の死体を取り出した。


「えっ!? 討伐部位とかじゃないの! 魔物がそのまま!? ……というか、この魔物はCランク相当の土猪(スエロハバリー)じゃない! それが三匹も!」

 受付嬢は、そのままの魔物の形が出て来るとは思ってなかったようでかなり驚いていた。

 てか、この魔物はCランクだったのか。


「討伐部位や使えるところが分からなかったので、そのまま持ってきてしまいました。ダメですか?」

 この運び込みがダメなら魔物ごとの討伐部位や素材箇所を覚えなきゃならない。


「いえいえ、そのままの方が価値がありますよ。冒険者の方は、持ち帰る苦労があるので討伐部位や素材を剥ぎ取っているのですから!」

 確かに、俺もネペンテスが無かったら荷物を増やしたくはないな。


「こちらは、全て買取でよろしいのですか?……凄く状態が良いように見えますが……。」

 受付嬢は、魔物の死体を見ながらそう言った。


「あ〜たぶんですけど。俺のネペンテスに時魔法も組み込まれているので、収納状態の時が止まっていたからだと思います。」

 俺の言葉に受付嬢は固まっていた。


「え!? そんなネペンテス聞いたことない! というか、魔物三匹が入ること自体が……。」

 受付嬢は驚きながらも、他の職員を呼んで魔物の解体を依頼していた。


「魔物の報酬は、解体後にギルドから支払われるので翌日以降に受け取りに来てください。」

 俺達は受付嬢の言葉に頷いた。


「それにしても無事でよかったわ。まさかFランクの子達がCランクの魔物三匹を倒して帰って来るなんてね。君達は大物になりそうね。……あっ!? 私の名前言ってなかったわよね!私はアロニアよ。今後もよろしくね。」

 受付嬢改め、アロニアさんの見た目は、20歳くらいの赤髪ショートに赤い瞳のお姉さんです。

 あれ? 俺達が大物になりそうだから自己紹介したのかな?


「「「よろしくお願います。」」」

 俺達はアロニアさんに頭を下げた。


「よろしい。後、今回の依頼達成でEランクに昇格よ。」

 アロニアさんは、そう言って俺達からギルドカードを預かり、Eランクに更新されたギルドカードを手渡してくれた。


「次も頑張ってね。」

 アロニアさんに手を振られ、俺達はギルドを後にした。


 そのまま俺達はガウラさんの宿屋で、初昇格祝いを行い、帰宅した。


 ……流石に祝いの席で、たまごかけご飯は食べなかったよ。

今更ですが、ネペンテスはウツボカツラの別名です。

写真だと袋みたいな形になってるので、収納道具の名前にさせてもらいました。


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