魔法訓練
今日は母さんに抱っこされながら、倭国の兵の訓練を眺めていた。
剣で打ち合っている者や筋力トレーニングする者などが大勢いる中で、俺の目には魔法訓練をしている者しか映らなかった。
「“火球”」
若い兵が訓練用の的に手をかざして、野球ボールくらいの火の球を飛ばしていた。
的に火の球が命中していたが、的は壊れることなく残っていた。
的にバリアとかが掛かっているのかな? 一回で的が壊れたら的を変えるのも大変だろうし、と自己完結した。
しかし、国に仕える兵だけあって、凄いな! 他にはどんな魔法があるんだろう。
「ダー! ダー! ダー!」
翻訳「凄い! 俺も早く魔法を使いたい! やるぞー!」
俺は闘志を燃やしていた。
先程火の球を飛ばしていた人が“風球”と唱え、風の球を的に飛ばしていた。
「属性の能力を高めるためには、1日1属性の訓練が効率的だよ!」
訓練場に声が響いた。
この国の筆頭魔法使いのシャクヤクさんだ。
シャクヤクさんは、30歳くらいの男性で、白髪の爽やかイケメンである。
若いのに魔法の天才らしく、魔法のことならシャクヤクさんが倭国一らしい。
俺も、もうすこし大きくなったら教えてもらいたいな。
俺はそんなことを考えながら、抱っこされたまま訓練場を後にした。
俺は、魔法訓練を目にしてから、早く魔法を使いたい気持ちが高まり、トレーニングは魔法練習がメインになった。
魔法練習をする場所は、城の中庭を使うことにした。
自室で練習して、もし火事になったら大変だからな!
“風”なら自室でも出来るかも知れないが、とりあえず一つずつ試してみよう。
俺は技名を唱えた、
「アッアッ!」
翻訳「“火”!」
「プスッ」
……この前は煙すら出なかったのに!? 今日は煙が出たぞ! この調子なら直ぐに火くらい出せるようになるかな?
技名を叫ばずにも魔法は使えるようだが、やはり技名を言った方がイメージしやすいな。
……それでも火は出なかったが。
俺は魔力を練って、ファイヤーを唱えた。
ファイヤーを唱えて5回目くらいで、
「ボッ!」
今、一瞬火が見えたぞ!
今までより惜しかった!
そう思えたが、次の瞬間俺の意識は途絶えた。
俺が目を覚ましたら、見慣れた天井が視界に入ってきた。
周りを見ると母さんが心配そうに俺を見ていた。
「よかった! 気がついたのね!」
母さんが目に涙を浮かべながら抱きしめてきた。
魔力が無くなって倒れたのかな? 心配かけちゃったな。
「アッ! アッ!」
翻訳「ごめんなさい! 心配かけて!」
俺は母さんに謝った。
「中庭で倒れていたから心配したのよ。眠かったのかしら?」
母さんは首を傾げながら言ってきた。
魔力を使い切った感覚は何となく分かったから、今後は気をつけよう。
……なんて考えていた時期もあったんだけどね?
でもね! 魔法練習に夢中になって、毎回倒れるまでやってしまう。
母さんには申し訳ないと思ってます!
ごめんなさい!
でも、倒れ続けたおかげで、俺が1歳になる頃にはやっと火の魔法が出来るようになった。
「アッアッ!」
翻訳「“火”!」
俺の掌には、小豆大の火の玉が浮かんでいる。
まだ、この大きさだけど、もっと練習してデカイ火出してやる!
俺は気づいていなかった。
……1歳になったばかりの子供が魔法を発動することの異常さを。
うちの子、ダーダー言うんです。
主人公も、ダーダー言わせちゃいました。
シャクヤク→芍薬5月8日の誕生花
花言葉は、生まれながらの素質