私の王子様
現れた魔物は、一匹ではなかった。
「うそ?」
カトレアは、驚き後ずさった。
アイリスは、身構えて戦闘準備に入った。
俺達の前には、同じ猪型の魔物が三匹いたのだ。
正面に一匹、左右斜め前に一匹ずついる。
「魔物との初バトルは3対3かよ! アイリス姉さんとカトレアは俺が加勢するまで、魔法で牽制して持ち堪えて!ブロッサム!」
俺は、2人に言葉を掛けて素早くネペンテスから草薙剣を取り出した。
「わ、わかったわ。」
「はい。」
カトレアとアイリスの返事を聞くや、俺は素早く正面の魔物に斬りかかった。
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「はい。」
私が返事をすると、サクラは直ぐに正面の魔物へ向かった。
「私の相手はこっちね。」
私は、左斜め前から現れた魔物に向かい合った。
「当たって! “雷球”!」
私は、雷属性の魔力球を作り出して魔物へ放った。
「GAAAAAAA!」
魔物は私の雷球を受けて、悲鳴を上げた。
「やった!」
私は、自分の雷球が命中して喜んで、油断してしまった。
「BOOO!」
あまりダメージがなかったのか、魔物は態勢を立て直して私に突進してきた。
「きゃ!」
回避が遅れて、魔物の突進を躱しきれずに右腕を掠めてしまった。
「くぅ〜。“回復”」
私は、左手を負傷した右腕に当てて光属性による回復魔法を使用した。
「……もっと威力が無いとダメか。……“雷槍”!」
私は、雷属性の槍をイメージし、魔力を練り上げて、雷槍を作り出し、魔物へ放った。
「BOO!!」
魔物が叫ぶと、私の放った雷槍が土の壁によって防がれていた。
「魔法!?」
下位の魔物は魔法を殆ど使わないって聞いたことがあるから、この魔物は下位よりも上!
私は、魔物と一定の距離を保ちながら魔法を放ち、時間を稼ぐことにした。
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「わ、わかったわ。」
私は返事をして、サクラが正面、アイリスが左の敵に向かい合うのを見て、右斜め前にいる敵に体を向けた。
「食らいなさい!“火”!」
私は、火属性の魔法を敵に飛ばした。
しかし、敵は魔法で土塊を飛ばして私の魔法を打ち消し、そのまま私の方に土塊が迫って来た。
私は咄嗟に横へ飛び、ギリギリで躱すことが出来た。
「……どうしよう?」
今の私では、敵に勝てる実力も方法も無かった。
私が考え事をしている間に、敵が私に向かって突進して来ていた。
「!?」
私は声も出せず、その場から動けなくなってしまった。
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俺は正面の魔物に斬りかかったが、魔物は魔法で土の壁を作り出し、俺の攻撃を防いだ。
「ちっ!」
俺は、一度バックステップで魔物と距離を取り、アイリスを見ると、決め手に欠けるようだが何とか耐えられそうだった。
しかし、カトレアの方は明らかに実力不足と見られる状況だった。
その時、カトレアへ向かって魔物が突進していった。
不味い! このままだとカトレアがやられる!
俺は、正面の敵を警戒しつつ、右手をカトレアが相手をしている魔物に向けた。
「“竜巻”!!」
俺は竜巻の先端を尖らせるイメージで竜巻を作り出した。
魔物の胴体に竜巻が当たり、カトレアへ突進を仕掛けていた魔物の胴体に風穴が開き、魔物は倒れた。
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私は敵の突進でやられると思い、目をつぶってしまった。
いつまで経っても衝撃や痛みが無いことに疑問を感じ、目を開けると私の目の前には私に突進していた敵が胴体に風穴が開いた状態で倒れていた。
「えっ?」
私は腰が抜けて、地面に座り込んでしまった。
「カトレア! 怪我は無いか?」
サクラの声が聞こえた。
「……だ、大丈夫よ。」
サクラが助けてくれたのかな?
「すぐ終わらせるから、少し待っててくれ!」
サクラは、顔は敵に向けたままそう言った。
私の顔は、きっと恐怖から安堵に変わるとともに、赤くなっていたと思う。
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俺はカトレアの無事を確認し、再びアイリスを見たが、まだ持ち堪えられそうな状況だった。
「“雷形態”」
俺は雷属性を身に纏った。
「“風球”」
俺は右手を魔物へ向けて風球を放った。
魔物は、俺の放った風球を土の壁を作り出して防いだ。
単純だな!
魔物は、作り出した土の壁を解除した。
「BO!?」
魔物は俺の姿が無いことに驚いたようだ。
俺は、魔物が土の壁を作った直後に魔物の背後に高速で移動していた。
「“雷突き”!」
俺の背後からの雷突きに、魔物は倒れた。
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「はぁはぁはぁ。」
私は魔物に何度も魔法を打ち込んでいるのに、魔物には避けられたり防がれたりしていた。
魔物も体に傷が出来ているが、まだ余力があるようだった。
魔物が後ろ足で地面を蹴ったと思ったら、また突進して来た。
……今度は頭に土属性の角が付いていた。
「この! “雷槍”」
私はありったけの魔力を込めて魔法を放った。
バチン!
「うそ!?」
私の魔法は角に弾かれ、魔物は殆ど減速せずに私に迫っていた。
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俺が魔物を倒し終えて、アイリスを見ると、魔物が土の角を付けて突進しているところだった。
「アイリス! “雷光形態”!」
俺が叫ぶと同時に、アイリスは雷槍を放ったが魔物に弾かれていた。
俺は雷光を纏って、思いっきり地面を蹴って魔物へ駆け出した。
「“雷光掌”!」
魔物がアイリスに突進する直前に、魔物へ辿り着き、魔物の胴体に雷光の掌底を叩き込んだ。
「GAAAAAAA……。」
魔物は煙を上げながら崩れ落ちた。
「悪いアイリス。助けに来るのが遅くなった。」
俺はアイリスに謝罪した。
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私に魔物が迫っている時に、サクラが私を呼ぶ声が聞こえた。
私が声を聞いた直ぐ後に、サクラは私の目の前で、私に迫っていた魔物に掌底を打ち込んで倒していた。
……サクラは私に謝った。
サクラは、また私を助けてくれた。
サクラは私のヒーローであり、私の王子様。
……今回も助けられちゃった。
……このままじゃダメだ。
私はサクラと肩を並べて歩けるようになりたい。
「ありがとう。サクラ。」
私はサクラに飛びっきりの笑顔を向けた。




