カトレアと両親
俺達は、宿屋のクエストを達成し、ギルドへクエスト達成報告と報酬の受け取りに来ていた。
ギルド側でのクエスト達成確認は、依頼者からクエスト達成用紙を貰うか、討伐クエストなら魔物の素材を持ち帰るかギルド側が後で確認して達成になるそうだ。
「初クエストお疲れ様でした。こちらが報酬になります。」
受付嬢から報酬を受け取った俺達は、キャトレイの邸宅まで帰ってきた。
「今日は楽しかったわ。」
カトレアは、サクラ達に笑顔を向けた。
「俺もだよ。」
「私も。」
俺達は、笑い合いながら玄関を開けた。
玄関を開けた先に待っていたものは……鬼だった。
いや、鬼の顔をしたキャトレイ辺境伯様だ。
「カトレア。何処で何をしていたんだ?」
キャトレイ辺境……面倒だな。
キャトレイさんは、静かでそれでいて凄みのある声でカトレアに詰め寄った。
「私は、冒険者登録をして依頼をやってましたわ。」
カトレアは、キャトレイの気迫に負けず、堂々と言い返した。
「……ん? すまんな。耳が遠くなったのかよく聞こえなかった。もう一度言ってくれ。」
キャトレイさんは、先程までの気迫が吹っ飛び、キョトンとしてワンモアを求めた。
「ですから、冒険者になり、依頼をやって来たのです。」
カトレアは、キャトレイさんの耳元に口を近づけて、大声で答えた。
「なっ!? なんでカトレアが冒険者に!? 君達がうちのカトレアを唆したのか?」
キャトレイさんは狼狽え、サクラ達に疑いの目を向けた。
「俺達は、カトレアを無理矢理冒険者にしていませんよ。ギルドまで案内はしてもらいましたけど……。」
俺は、事実をキャトレイさんに伝えた。
「そうよ。私の意思で冒険者になったの! 私は魔人が襲って来ても死にたくない! 守ってくれる誰かを当てにしない! 私は強くなって魔人を倒す!」
カトレアは、真剣な眼差しでキャトレイを見上げた。
「……お前はまだ子供だ! お前はそんなこと気にしなくていいんだ!」
キャトレイは、カトレアの考えを否定した。
「じゃぁ魔人がここに現れたら、父上が魔人を倒してくれるの? 」
カトレアは、キャトレイに質問した。
「俺が死んでもお前たちを守る! 心配するな!」
キャトレイは、必死にカトレアを説得していた。
「父上が死んでは、私と母上が悲しみます! 私が魔人が来ても魔人を倒して、父上と母上を守れるようになります!」
カトレアは、キャトレイに言い返した。
「なっ!? ……カトレア。」
キャトレイは、驚いて言葉が出なかった。
「あなた。……カトレアのやりたいようにやらせてあげましょう。」
オルキデアが奥から出て来て、キャトレイにそう告げた。
「何を言っているんだ!? 」
「貴方とカトレアの話は聞こえていました。カトレアは、まだ子供ですがしっかりした子です。この子が自分で決めたのだから、親としてわたしはカトレアを応援します。」
オルキデアは、驚くキャトレイにそう告げた。
「……母上。」
「カトレア。自分でやると決めたのならしっかりやり通しなさい! いいですね?」
「はい! ありがとうございます母上。」
カトレアは、オルキデアに頭を下げた。
「〜〜〜。はあ〜分かった。カトレアの頑固な所はオルキデアに似たのかな。」
キャトレイは、溜息を吐いて渋々納得した。
「あら〜あなた。だ・れ・が、頑固なのかしら〜?」
オルキデアは、怖い笑みを浮かべ、キャトレイの耳を引っ張って連れて行ってしまった。
「い〜〜いたい、痛いって!」
キャトレイは、痛がっていたがオルキデアは離してくれなかった。
「両親の許可も降りたことだし、明日からもよろしくね。」
カトレアは、俺達に振り返り笑顔を向けたのだった。




