魔人襲撃③
サルビアとアイリスは魔人から逃走を図るもアイリスはまだ子供であり、直ぐに魔物に追いつかれてしまった。
サルビアはアイリスを背に隠して魔物の前に立ちはだかった。
「……このままじゃ逃げ切れない。転移するには集中する余裕がない。」
サルビアは焦っていた。
自分一人で魔物だけを相手にするなら何とか出来る自信と実力はあるが、アイリスを守りつつではかなり厳しい状況であり、尚且つ魔人までいるのでは勝算はなかった。
「……何とか時間を稼がないと。」
魔物達がサルビア達を囲い始め、距離を詰めてきた。
「……火円」
サルビアは、自身を中心に火で円状の壁を作り上げた。
「今の内に……。」
サルビアはこの隙に、転移魔法を発動しようとアイリスに振り返った。
ズブッ!
「かはっ!?」
紫色の槍を模した魔法がサルビアの背中からお腹を貫いていた。
「サルビアさん!?」
アイリスは涙を浮かべ、サルビアを支えた。
「逃がす訳ないだろ。」
ジキタリスがサルビアに向けて手をかざしていた。
サルビアは火円を維持出来なくなり、魔物を足止めしていた火円が消え去った。
「喰っちまいな!」
ジキタリスの指示により魔物達がサルビア達に襲いかかった。
サルビアはアイリスを抱きしめて守った。
「うっ。くっ……。」
サルビアの体は魔物に噛み付かれ、引っ掻かれ、立っているのが不思議なくらいだ。
「……ぃゃ。」
アイリスは泣きじゃくっていた。
「……私はもう助かりませんが、アイリス様は生きてください。」
サルビアは口から血を流しながら言葉を発し、アイリスの頭を撫でた。
すると、アイリスはその場から消えた。
「なに!?」
ジキタリスは驚き目を見開いた。
サルビアはダメージと転移魔法を全魔力で発動したため地面に倒れ込んだ。
倒れたサルビアは満足そうな顔をしていた。
「……一人逃しちまったか……まぁいい。さっさとこの国を潰すぞ。」
ジキタリスは魔物達を引き連れてメロヴィング王国を蹂躙したのだった。
その頃、サルビアの転移魔法により倭国内の森に転移されたアイリスは倒れていた。
目が覚めたアイリスは、両親(育ての親)が死んだことやサルビアが目の前で殺されたことがショックで名前以外の記憶を失った。
その後奴隷商に捕まり、サクラと出会った。
これにて、魔人襲撃編は終わりです。




