魔人襲撃②
サルビアは国王の命にて、北地区の宿屋へ転移した。
サルビアの転移は自国内では、殆ど行きたい場所へ転移出来る。
長距離の転移となると、転移場所を上手く指定できず、距離を単純に伸ばすだけなら全魔力を込めればかなりの距離を転移することが出来る。
「北地区の宿屋はここだけだから、間違い無いよね。」
宿屋の近くでは、建物が燃え、叫び声や戦闘音が鳴り響いている。
「宿屋にまだ居てくれたらいいんだけど……。」
サルビアは宿屋の入り口を開けた。
「誰かいませんか〜!」
しばらく呼び掛けてみたが宿屋の中から返事は無かった。
サルビアは、宿屋内を調べていると厨房から物音がした。
「まだ残っていたのかしら?」
サルビアが厨房へ入るとリザードマンが1体立っており、近くには男女が血だらけで倒れていた。
「リザードマン!?」
サルビアは直ぐに手をリザードマンにかざした。
「火矢」
サルビアの魔法によりリザードマンは絶命した。
「この二人は宿屋の方よね…」
その後、全部屋を探したがアイリスは見つからなかった。
「……まずい状況ね。ここに居ないとなると既に避難している。特徴と名前で探し出すしかないか。」
サルビアは宿屋を後にし、南地区へ避難するために走り出している住民を見た。
「南地区へ向かいながら、聞いて回るしかないね。」
サルビアは片っ端から避難中の住民に聞いて回ったが情報は得られなかった。
「何処にいるのよ。」
サルビアがふと路地裏に視線を向けると、金髪の少女を肩に担いだ男性が見えた。
サルビアは国王から聞いていた特徴からこの少女が気になり跡をつけた。
「この国も終わりだな。こいつは奴隷商にでも売りつければ高値で買い取ってもらえる。」
男は黒い笑みを浮かべていた。
「国の一大事だと言うのにこのクズが!」
男の跡をつけていたサルビアは、ネペンテスから取り出した杖で男の頭を思いっきり叩き付け、男は気を失って倒れた。
サルビアは倒れた少女に駆け寄り抱きかかえた。
「大丈夫?」
「……ぅぅ……ここは?」
少女は意識を取り戻した。
「あなたは、そこで伸びている男に連れ去られそうになっていたのよ。」
「……宿屋に泊まっていた方です。避難するよう呼びに行って……その後どうなったのか覚えてません。」
「成る程ね。ひとついいかしら? あなたはアイリスって名前かな?」
「はい。どうして私の名前を?」
アイリスは首を傾げた。
「私はサルビアと言います。国王様からあなたを保護して欲しいと命を受けています。」
「国王様から? 私を? どうしてですか?」
アイリスは何で国王様が自分を保護するよう言ったのか疑問だった。
「……それは……あなたが国王様の娘だからだそうです。」
サルビアは今言うべきか悩んだがいつか言うべきことと考え、事実を伝えた。
「……嘘!? 私は宿屋の娘ですよ。」
アイリスは首を振り否定した。
「嘘ではありません。国王様から直接聞いています。何よりあなたは国王様の面影がありますよ。」
サルビアはアイリスの両肩を掴んで説明した。
「じゃぁ、私のお母さんは? 私には両親がいるのよ。」
アイリスは受け入れられず、更に言葉を紡いだ。
「あなたのお母さんはあなたを生んで亡くなったそうよ。宿屋の方はあなたの奥さんの姉になると聞きました。先に宿屋に行きましたが宿屋の方は魔物に殺されていました。」
「……。」
アイリスは黙ったまま俯いた。
ドガァーン!!
近くの建物が崩れ去り、魔物の姿が見えた。
「魔物の侵攻がここまで!? 直ぐに転移します。アイリス様。」
サルビアがアイリスに触れようとした。
「この国からは一人も逃さん。」
上から声が聞こえた。
サルビアは建物の上を見上げると、全身が紫色で赤色の目をした異形の魔物が立っていた。
「魔物!? いや違う? まさか……魔人!?」
「せ・い・か・い。俺はジキタリスだ。」
ジキタリスはサルビアとアイリスを見下ろした。
「珍しい転移魔法が使える様だが、果たして魔物や俺を相手にして転移魔法が使えるのかな?」
ジキタリスはニヤニヤしながら見下ろしている。
「やれ!」
ジキタリスの指示により、魔物達がサルビアとアイリスに向かってきた。
「アイリス様。」
サルビアはアイリスの手を引いて魔物と反対方向に走り出した。
サルビアの技名はフランス語です。
合ってますかね?
サルビア→花言葉は、尊敬や知恵
ジキタリス→3月27日の誕生花
花言葉は、不誠実
ジキタリスは、毒性のある花になります。
よく見かける花にも、毒性があるのもありますので、ご注意を!




