魔人襲撃①
……時は、サクラが誘拐される前日に遡る……ここは倭国から遠く離れたメロヴィング王国……規模としては倭国と同程度の国である。
この国の玉座には、金髪に黄色の瞳の40歳代の男性が座っていた。
この国の国王クロヴィス・アポロである。
「国王!魔族の大群が北門を突破しました!」
兵士が慌てた様子で玉座に座る国王へ報告に来た。
「な、なんだと! 北門の兵は何をしていたのだ!」
国王は憤慨した様子で兵士を怒鳴りつけた。
「……それが……北門から運良く逃げ延びた兵の話ですと、北門前に魔物の群れが現れ、部隊を派遣したそうです。その後、殲滅直前に別の魔物の群れがそこに突撃して来たため、北門の残りの部隊を派遣したそうなのですが対応中に北門を陥され、部隊は挟み撃ちに遭い、全滅したそうです。」
兵士は逃げ延びた兵から聞いた話を国王へ報告した。
「ば、バカな!? たかが魔物の分際でそのような行動を取るなど……まさかっ!? 魔人かっ?」
国王は驚き、玉座から立ち上がった。
「……!? 報告に上がっていませんが、魔物の行動から魔人がいる可能性が高いとのことです。」
兵士も国王の意見どうよう魔人の仕業だと感じていた。
魔人は魔物と違い高い知能を有している。
また、魔物の上位に位置しており魔物を従える力を持っている。
過去にも魔人との戦いが数度起きており、その中には魔人一人に国が滅ぼされたこともあるなど、魔人は魔物とは比べ物にならないほど強力な存在なのだ。
「魔人の関与など近年聞いていないというのに……残りの門をすべて閉ざし、全ての兵士を北門へ! 敵を殲滅しろ! ……民は南地区への避難を急がせろ!」
国王は矢継ぎ早に命令を下した。
「はっ!」
兵士は直ぐに命令を伝えるために部屋を後にした。
「…凌ぎきれるのか……なんとか北門付近で抑え、南地区の民を守らねば……ん、北門!? アイリス!! サルビアをここへ呼べ。」
国王は慌てた様子で控えていた兵士に告げた。
「分かりました。」
兵は足早に部屋を退出した。
「まずい、北地区にはアイリスが……無事でいてくれ。」
王は再び玉座に腰を落とした。
「サルビア参りました。」
玉座の前で、赤髪に紫目のショートカットの若い女性が跪き、名乗りを上げた。
「北地区にある宿屋に、金髪に黄色の瞳をした、アイリスという6歳の娘がいる私の娘だ。サルビアの特殊属性の転移があればここから脱出出来るはずだ。……娘を頼む!」
国王は玉座から降り、サルビアの前で土下座をした。
「!? 頭を上げてください国王様! 分かりました。直ちに向かい、ここへ連れて来ます。」
サルビアは驚きながら答えた。
「… …ここへ連れて来なくてよい。国王が国を捨てるわけにはいかん。アイリスの母はあの子を生んで直ぐに亡くなり、父親のことも聞いていないはずだ。今はあの子の母の姉が母親代わりとして育てている。アイリス達を保護したら直ぐに転移でここから脱出しろ。アイリスのことを頼む。」
国王は再び頭を下げた。
「命に代えてもアイリス様をお守りします。」
サルビアは国王に頭を下げ、北地区に向け転移した。
メロヴィング朝(旧フランス)→メロヴィング王国
合ってるかな?
アポロはアイリスの別名(花)です。




