気になること〜サイネリア〜
ギルマスの部屋では、スターチスとサイネリアが向かい合って座っていた。
「スターチスさんに聞きたいことがあるんですが。」
サイネリアさんは気になっていたことをスターチスに切り出した。
「なんですか?」
「保護した女の子のアイリスちゃんのことですが……見覚えがあるというか誰かに似てるというか……そんな感覚なんですが、スターチスさんはどうですか?」
サイネリアの話にスターチスはしばし考えて込んだ。
「……いや、見覚えはないな。」
「……そうですか。記憶を無くしているそうなので、力になれたらと思ったんですが。」
サイネリアは肩を落として俯いた。
「俺はこの周辺でしか活動していないからな。サイネリアはメロヴィング王国辺りでも活動してたから、そっちで見たとかじゃないか?」
「成る程。思い出せたらいいんですが。」
「そうだね。思い出せたら教えてあげるといい。」
スターチスの言葉にサイネリアは頷いた。
「……話は変わるんですが、スターチスさんってシャクヤク様のお知り合いですか?」
サイネリアは体を乗り出してスターチスに詰め寄った。
「!? シャクヤクは学生時代の同期だからね。」
スターチスは後退りしながら答えた。
「シャクヤク様は結婚されているんですか?」
サイネリアは更に詰め寄った。
「……していないよ。どうしたんだい?」
スターチスも更に後退した。
「紹介して下さい!」
サイネリアは興奮した様子でスターチスに更に詰め寄る。
「わ、わかったよ! 紹介するから落ち着いて!」
スターチスは両手を挙げて降参を示した。
「絶対ですよ! 絶対ですからね! 紹介してくれなかったら、ギルマスの椅子から叩き落としますよ!」
サイネリアは鬼気迫る形相でスターチスに詰め寄った。
「……女って怖い。シャクヤク、ご愁傷様。」
スターチスはサイネリアに聞こえない様小さく呟いた。
スターチスとサイネリアの漫才?が終わって直ぐ、女性職員がギルマスの部屋に飛び込んできた。
「マスター大変です! ……!? お取り込み中でしたか?」
女性職員が目にしたのは、興奮した様子のサイネリアがスターチスに迫っている状況だった。
「!? ち、ちがうぞ! 俺達は何もしてない!」
スターチスは弁明するがサイネリアはキョトンとして頭に?が浮かんでいた。
「そんなことより! 2日前メロヴィン王国の首都が魔人の襲撃により滅びたとのことです!」
「何だと!?」
スターチスは驚きを露わにした。
「……嘘!? 私の知り合いも首都にはたくさんいる……サルビア……無事だといいけど……。」
サイネリアも驚き、そして昔の友人を思い出していた。
「……魔人のその後は?」
スターチスは今後の方針を決めるために質問した。
「メロヴィング王国襲撃後に姿を消したそうです。」
「……分かった。ありがとう。」
女性職員は一礼して部屋から出て行った。
「……ここ数年なかった魔人の襲撃か。」
スターチスはいつ目の前に魔人が現れるか分からない恐怖を覚えたのだった。




