帰還④
俺達が無事に倭国に到着し、城の皆んなにとても心配されていたことを知った。
そして、数時間も経たない内に、師匠の手によりゲッケイジュを確保したとの報告が父さんに上がってきた。
これで今後の心配は無くなっただろう。
父さんは身内の犯行に酷く落ち込んでいるように見えた。
母さんも無事にゲッケイジュが捕まったと聞いて安心したような顔をしていた。
「サクラ、今後は中庭でお昼寝する時は、ちゃんと声を掛けるのよ。ってまだ言っても分からないかしら。」
ちゃんと理解出来てますよ! 母さん。
「わかった。」
俺が返事をしたことに母さんが驚いていた。
「あら、しっかりお返事が出来てサクラは偉いねぇ。」
母さんはそう言って俺の頭を撫でてくれた。
今回の件で心配かけちゃったからな。
流石に魔法の訓練は皆んなが寝てる時とか、師匠のところでやるようにしよう。
そして俺は今、師匠の部屋に来ていた。
「師匠〜。ゲッケイジュをどうやって確保したんですか? 証拠でも出て来たんですか?」
俺はどうやって師匠がゲッケイジュを捕まえたのか気になっていたので、聞いてみることにした。
「前に話したけど、魔法には特殊属性があります。そして私には変化という特殊属性があります。この魔法で私は奴隷商に化けてゲッケイジュと接触したんです。後は勝手に自滅して終わりましたよ。」
と事の顛末を話してくれた。
「そういう事でしたか。」
今回の件で改めて俺は強くなりたいと感じた。
次があって欲しくはないが、次は自力で切り抜けられるように。
「師匠。俺強くなりたい。自分を守るためにも。守りたいと思った人を守るためにも。」
「私が教えられることは全部教えますよ。王子ならきっと強くなれます。ただ、その力を間違ったことには使わないで下さいね?」
「分かっています。」
「将来有望な弟子がいて、師匠としては嬉しい限りですよ。」
師匠は笑顔を浮かべた。
「直ぐに師匠を越えてみせますよ!」
俺は師匠を力強い目で見た。
「それは師匠として見っともないので、簡単には越えさせませんよ。」
師匠はそう言って、俺の頭を撫でて来た。
「そういえば、アイリスちゃんは王子の侍従になったそうですね。」
師匠はニヤニヤしながら俺を小突いて来た。
「……えぇまぁ……アイリスもそれでいいそうなので。」
師匠が言ったように、アイリスは俺の侍従になった。
今は侍従長に色々教わっている。
「そう言えば、師匠って結婚しているんですか?」
「……突然な質問だね。……してないよ。」
「見た目はいいのに……性格に難があるんですか?」
俺はストレートに聞いてみた。
グサっ!!
なんか効果音が聞こえたような?
「……まぁ声は掛けられるんだけどね。こんな地位にいるから付き合うまでの話にもならないし。この人って人とも出会いがなかったからね。それに、魔法のこととなると少し暴走してしまうこともあってね。」
なるほどね。
「サイネリアさんはどうですか? 可愛いし、優しいし、冒険者だから魔法の件も分かってくれそうですし、師匠を見た時のサイネリアさんは絶対師匠に気がありそうでしたよ。」
と俺は師匠にサイネリアさんを勧めてみた。
というか、アイリスでからかわれたのでやり返したかっただけだが。
「えっ!?」
あれぇ〜?この反応は……。
「……師匠。サイネリアさんのこと。」
「……王子を救っていただいた方なので、ギルドを出る前に少し話をしたのですが……まぁ……。」
師匠は照れたように、ごにょごにょ喋っている。
師匠は魔法は凄くても、恋愛はダメなようだ。
「……師匠。頑張ってください。」
シャクヤク師匠は、一目惚れしちゃいました。




