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ノイシュバンシュタイン城〜ユリウス家〜

吸血鬼シャガとの戦闘を終えたサクラ達。


戦後の話です。

 激闘の末、サクラ達は吸血鬼シャガの討伐に成功した。


 ノイシュバンシュタイン城前のゾンビ達も、オロチ達により殲滅されていた。


「や、やった!? ゾンビ共を倒したぞ! 俺様の手柄だ!」

 スナップは一人、大喜びを始める。


 スナップは、今回の吸血鬼討伐を自身の手柄として報告するつもりだった。


「……。」

 その様子を、軽蔑するような目で黙ってストックは見ていた。


「……ストック。アイツは知り合いなのか?」

 サクラはストックの様子や言葉から、ストックがスナップの事を知っているのではと感じていた。


「こっちが知ってるだけだ。」

 ストックは、サクラの問いに簡単に答える。


「俺様達のお陰なのに、手柄を横取りするつもりか?」

 スナップの声が聞こえていたオロチは、不機嫌そうにスナップへと近付き声を掛ける。


「あ? 俺様が指揮した戦場だぞ! 俺様の手柄に決まっているだろ!」

 スナップは怒りを露わにして、オロチへと怒鳴り散らす。


「貴様の指揮? お前の仲間なんか一人もいねぇぞ。調子に乗ってるとぶっ殺すぞ。」


「ひっ!?」

 オロチはスナップへと殺気を放った為、スナップは腰を抜かして後ずさる。


「ち、近付くな無礼者! 俺様はユリウス家の次期当主なんだぞ! 俺様に手を出せばこの国が黙ってないぞ!」

 スナップは声を震わせ、オロチを見上げながら虚勢を張る。


「……。」

 オロチはスナップをどうするかサクラへと目線を向けると、ストックがスナップへと近付く。


「よっと。……さっさと消えろ。」

 ストックはスナップを立たせると、冷たく言い放つ。


「くっ!? 貴様らがなんと言おうが、今回の討伐は俺様の手柄になる。上の者の言葉が絶対なんだよ!」

 スナップは勝ち誇った顔で言い放ち、その場を去ろうとする。


「成る程。上の者の言葉が絶対か。」


「誰だ……な!?」

 スナップは背後からの声に振り向き、言葉を失う。


「ふむ。誰と来るか、知らん顔でも無いだろうに。儂はハプスブルク王国軍総司令のフェンネルじゃ。」


「フェ、フェンネル総司令官!? どうしてこちらに?」


「緊急要請により、儂が来たんじゃよ。まぁ必要無かったようじゃがな。」

 なんと言葉に登場したのは、ハプスブルク王国軍の総司令官だったのだ。


「え、ええ、吸血鬼らは私が討伐しました。」


「ほお、ユリウス家が討伐したと。」

 スナップは、空かさずフェンネル総司令官に自分の手柄のように報告する。


「は、はい。」


「成る程の。それでは国王様にユリウス家の活躍を御報告しなければならんな。」

 この言葉にスナップは満面の笑みを浮かべ、自身の未来の様子を想像していた。


「ユリウス家()()()()()()とその仲間達の活躍により、吸血鬼討伐を果たしたと報告させてもらおう。」


「……は?」

 フェンネル総司令官の言葉に、スナップは耳を疑う。


「フェンネル総司令官、私の名前は()()()()ですよ。ストックではありません。」


「……間違っておらん筈じゃが?」

 スナップはフェンネル総司令官の間違いだと指摘したが、フェンネル総司令官はストックへと目を向けて言葉を発した。


「……。」


「ユリウス家次男ストック、いやマティオラの息子ストックよ。間違ってはおらんじゃろ?」

 ストックは返事に困り、黙り込んでいたが、フェンネル総司令官は全てを知っていたのである。


 フェンネル総司令官の言葉に、サクラ達やスナップは驚きを露わにする。


「はぁ〜、昔も今も俺は只のストックですよ。」


「そうか。……スナップよ。貴様の指揮により部隊が全滅したことは国王様へと報告する。それに加え、討伐ランクSSの魔物を発見していながら報告を怠り、勝手な行動により国民を危険に晒した、近いうちに罰を受けることになるだろう。」

 この瞬間、スナップは先程までの元気を失い、うな垂れるように地面に座り込んだのだった。


「儂らが何とかしなければいけなかったものを、君達のお陰で助かった。礼を言おう。」


「フェンネル総司令官様は、何処かで俺達の戦いを見ていたのですか?」

 フェンネル総司令官からお礼を言われたサクラは、フェンネル総司令官が何処かから戦場を見ていたのではないかと感じていた。


「偵察部隊を出していたのでな。偵察部隊からの報告を聞き、急いで駆け付けたのだが、間に合わなかった。君達には本当に感謝している。」

 フェンネル総司令官は深く、サクラやストック出してに頭を下げる。


「フェンネル総司令官様!? 俺様に弟など居ない!コイツがユリウス家次男? そんな訳が無い!」

 スナップは興奮しながらストックを指差す。


スナップからしたら、今回の失敗があろうとユリウス家当主になれる筈だが、ストックがユリウス家の者となれば話しは変わってくる。


ストックに、ユリウス家当主の座を奪われてしまうと必死だったのだ。


「……。」


「俺はユリウス家から捨てられたんだよ。マティオラさんに救われて、育ててもらっていた。」

 フェンネル総司令官がストックへと目を向けると、ストックは過去のことを話し始めた。


「そんな話し、父上と母上から聞いたことが無い!」

 スナップは、自身が聞かされていないことだと憤慨していた。


「儂も古い友人から聞いた話じゃが、間違いでは無い。ユリウス家当主に聞くと良いじゃろう。」

 フェンネル総司令官の言葉を受けて、スナップはふらふらと歩き出す。


「……ストック。」


「みんなには話しても良かったんだけどな。ユリウス家なんて関係無いし。」


「そっか。」

 アカンサスは実の両親に捨てられたストックに同情したが、ストックの表情からは、悲しみよりも今の状況に満足しているように感じられたのだった。


「ストックよ。お主の生い立ちを話すのは不味かったかの?」

 フェンネル総司令官は、気まずくそうにストックへと尋ねる。


「いえ。いつかみんなには知ってもらいたいと思っていましたし、ユリウス家が俺に何かしようとしても、今の俺には仲間がいます。」

 ストックの言葉にサクラ達は頷き、その光景にフェンネル総司令官は胸を撫で下ろす。


 そして、話を一通り終えたサクラ達は、ノイシュバンシュタイン城の中を確認する為に、城内へと足を踏み入れるこにしたのだった。

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