旗取りゲーム〜セリ元帥〜
いよいよ敵陣へと攻撃を仕掛けます!
サクラ達は、現在80人が残っており、サクラ含む70人が敵本陣に向かい、残りの負傷者10人が自軍拠点に待機している。
また、獲得した旗は、自軍の20本に加えて敵旗15本が加わり、点数では圧倒的にサクラ達チームが優勢である。
しかし、残す敵本陣にはミノア王国軍の元帥である、セリを含む50人が残っており、サクラ達は度重なる戦闘で疲弊しているが、敵本陣部隊は未だ戦闘に参加しておらず、人数ではサクラ達チームが上回っているが、油断は出来ない状況である。
「このまま時間まで守り切れば、こっちの勝ちですよ?」
クローバーは、前を歩くサクラへと声を掛ける。
「俺達にやられるようだと、この国に魔人が現れた時に民を守れないからね。ケイトウ国王やセリ元帥の考え方を変えないと。だから、完膚無きまでに叩き潰す! まぁ、馬鹿にされたのを根に持ってるのもあるけどね。」
サクラは、このミノア王国の為に攻め込むことを決めたのだ。
「目の前の勝利より、未来の勝利ですね。分かりました。」
「なら、絶対負けられないね。」
クローバーはサクラの真意を知って感心し、アイリスはサクラの真意を達成する為に、気合いを入れていた。
「ああ。みんな気合い入れて行くぞ!」
「「「おおーー!!!」」」
サクラの掛け声に、全員が拳を天に突き上げて雄叫びを上げた。
一方、セリ元帥らは……。
セリ元帥の本陣は、四方に兵を配置し、自身と中将は中央付近に天幕を張り、寛いでいた。
「まだ試合終了の狼煙は上がらないのか? 後数十分で終わりだと言うのに、大将連中は何を愚図愚図しているのだ!」
セリ元帥は、開始早々に大将らがサクラ達を叩き潰し、試合終了になるものだと高を括っていたのだが、予想に反して、試合終了を告げる狼煙は上がらず、苛々を募らせていた。
「……。」
セリ元帥の下にいる中将は、内心では大将がやられたのでは無いかと思っていたが、セリ元帥にその様な事を申せば、自分の立場が危うくなると分かっているので口に出すことはせず、ただ黙って側に控えていたのである。
「こうなったら、俺自ら奴らを叩き潰しに行ってやる!」
セリ元帥が本陣の豪華な椅子から立ち上がり、サクラ達の本陣へ向けて出撃しようとしていた。
「セリ元帥!?」
これには中将も慌てて声を掛けようとしたのだが……。
「セリ元帥! 敵襲です!」
伝令兵がセリ元帥の下へ、敵襲を告げたのである。
「向こうから来やがったか! 捻り潰してやれ!」
セリ元帥が伝令兵へ指示を出したのだが、伝令兵は直ぐに立ち去ろうとはしなかった。
「それどころではありません! 敵は火攻めして来ております! 消火作業を行なっていますが、火の勢いが強く消しきれません!」
伝令兵が言うように、サクラ達はまず敵の統率を崩す為に、各所に引火しやすい液体を魔法で流し込み、遠距離から火矢を放ちったのである。
「なんだと!? 姑息な手を使いおって!」
セリ元帥が天幕から出ると、四方から煙が立ち込め、火柱が見て取れた。
「こんな火も消せないのか! 使えん連中だ。 “猛吹雪”!」
セリ元帥を中心に、冷たい強風と雪が吹き荒れ、周囲は極寒となり、忽ち火の勢いが弱まり、火を消し止めることに成功した。
「奴らは何処にいる?」
「姿が見えませんが、一斉に四方から火の手が上がりました。」
セリ元帥は、部下の不甲斐なさに苛々していたが、伝令兵からの回答から、サクラ達が何処に居るのか想像がついた。
「て、敵襲ーー!?」
その時、四方から敵襲の声が鳴り響く。
「やはり四方からか。直ちに応戦しろ! 負けは許さん!」
セリ元帥の喝が飛び、伝令兵が直ぐ様走り出し、四方に配置して居る部隊に伝達に向かった。
火攻めの少し前……。
サクラは火攻めの作戦と配置について、仲間達に説明していた。
布陣は、敵陣正面をサクラ、アイリス、カトレア、クローバー。
背後をストック、アカンサス。
正面右手をリンドウとウメ。
正面左手をデイジーとボタン。
サクラ達を除いた残り60人を4つに分けて配置につけたのである。
「取り敢えず、火攻めは成功したな。」
「消されちゃったけど良いんですか?」
サクラは火攻めにより、敵が慌ただしく動く様子を眺め、クローバーは火を消されてしまったので、作戦は失敗したと感じていた。
「アレでいいのよ。こっちはかなり体力と魔力を消費してるのよ。敵にも少しは疲弊してもらわないと。」
「向こうの配置も崩れたし。バタついてる今がチャンスね。」
カトレアとアイリスは、サクラの作戦の意図を理解していた。
「さて、突撃するぞ!」
「うん!」
「ええ!」
「よし!」
サクラの合図に各々答え、サクラ達は正面から敵陣へと攻め込んだのだった。




