旗取りゲーム〜防衛戦2〜
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サクラ達は本陣を森の南側に敷き、前と左右に部隊を展開し、背後を海にすることで後ろをカバーした布陣にしていた。
また、本陣に残っているサクラとアイリスを除く40人は、本陣の前と左右に10人ずつ、中央に設置した旗の左右に4人ずつ配置し、サクラとアイリスは、旗の前に立っていた。
「ねぇサクラ? 予定通り、偵察部隊からの報告を待って動くので良いの?」
「そのつもりだよ。島自体が小さいから動き回っても良いんだけど、人数も分散されるし、闇雲に動くより敵の拠点を把握して攻めた方が得策だと思う。このゲームはこっちは初めてで、向こうはベテランだから、取り敢えず様子見かな。」
サクラは、昨日の作戦会議通り、偵察部隊からの報告を受けて行動を開始することにしたのだ、
また、サクラのチームメイトなら信頼の絆を使えばら偵察からの報告を直ぐに受け取れるのだが、みんなでやってる訓練なので、使用を控えたのだ。
「分かった。……待ってるのって暇ね。」
アイリスは、足下の小石を軽く蹴飛ばしながら最後の方は小さく呟いた。
(……アイリスって戦闘狂だったっけ?)
サクラはアイリスの呟きを耳で捉えており、アイリスの意外な一面に驚いたのである。
サクラは、その後自軍の配置について考えを巡らせていた。
(本陣以外の配置は、海を背にして左手の岩山側をカトレア、ストック、アカンサスの部隊。正面をデイジー、クローバー、ボタンの部隊。右手をリンドウ、ウメの部隊。一番最初に敵とぶつかり合うとしたら岩山側のカトレア達の所になるかな? あっちは落とし穴も仕掛けたから結構敵を削れる筈だな。)
カトレア達がグズマニア大将部隊の中将が率いる部隊と接触した頃。
海側からサクラ達の本陣へと忍び寄る集団が居たことに、誰一人気付くことは無かった。
その集団は声を出す事無く、身振り手振りやアイコンタクトで確実にサクラ達の旗へと近付いていた。
集団の先頭を走るのは、青髪を靡かせているブルースター大将だ。
ブルースター大将は、旗の見える位置に到着すると部隊へと振り返り、両手の指10本を前に出し、その後、人差し指を旗のように振り、人差し指を回した後に指先を後ろに向けた。
ブルースター大将のこの合図は、10人が旗を取り回収するものだった。
部隊員達は合図を理解して頷いた為、ブルースター大将は続けて側の左右に立つ8人の敵を指差し、弾く仕草をした。
ブルースター大将は、旗の左右に立つ者達が自分達を気にしていないことに気付き、突撃の合図を送ったのだ。
ブルースター大将の部隊員達は、一斉に物陰から飛び出し、足音に気付いた者が振り返ったが、油断していた試して、一瞬にして気絶させられてしまった。
ブルースター大将の部隊員は、そのまま大旗含めて10本の旗を取り、戦闘することなく来た道を戻って行く。
サクラとアイリスは異変に気付いて振り返ると、既に敵に旗の半分を奪われた後だった。
「何で敵が?」
「後ろからだと!? 転移か? いや、海から来たのか!」
アイリスは突然敵が現れたことに驚き、サクラは敵が背後から現れたことから、転移の可能性を考えたがピンポイントでここに現れることは出来ないと判断し、海から攻めて来たことに気が付いたのだ。
「残りの旗はコイツらを片付けてからだ! お前ら好きに暴れろ!」
ブルースター大将は部隊に指示を出し、サクラへと槍を突き刺した。
「背後からとはやってくれるね!」
サクラは、ブルースター大将の槍を草薙剣で捌きながら悪態をついた。
「ほぉ。私の槍を捌くとは大したものだな。」
ブルースター大将は槍の腕に自信があり、それを捌いて見せたサクラを実力者と認めた。
「そりゃどうも!」
「私は、ミノア王国軍大将のブルースターだ。名を聞いておこう。」
「サクラだ。……攻めて来たのは、あんたの部隊だけか?」
サクラは少しでも情報を得ようと話を続けた。
「私の部隊だけだ。グズマニアやタンジーとは、どの部隊が一番点数を稼げるか勝負しているでな。」
ブルースター大将は、特に隠す事もなく、攻めて来たのは自分の部隊だけと答えた。
「成る程ね。……纏まって来なかったことを後悔させてやるよ。」
こうしてサクラ対ブルースター大将の戦いが始まったのである。
「サクラ! ちょっと、邪魔しないで!」
アイリスがサクラへと加勢しに行こうとすると、サクラの前にブルースター大将部隊の中将が現れた。
「行かせません。」
中将は、ブルースター大将と同じように青い髪をしており、槍の矛先をアイリスへと向けた。
「……私の前に立ちはだかったことを後悔しなさい!」
サクラへと駆け付けるのを邪魔された、怒りのアイリス対中将の戦いも始まる。
サクラとアイリスが戦闘を開始したころ、周りは混戦状態となっていた。
ブルースター大将の部隊員と衝突する前に、本陣内で展開していた者の中から1名が、本陣前と左右の部隊に応援要請に向かっていた。
サクラとブルースター、アイリスと中将の戦いは一進一退の攻防を繰り返していた。
周りに展開していた者達は、何とかやられずに応戦出来ていた。
そして遂に、本陣前と左右に配置していた部隊が応援要請を受けて戻って来たのである。
これによりブルースター大将の部隊員は、20人がやられ、残った部隊員は中央で激しい戦闘を繰り広げているブルースター大将の下まで後退を余儀なくされた。
サクラ達の増援と、自軍がやられている状況を理解したブルースター大将は、一旦離脱することを考えていた。
「おいおい、簡単に逃げられると思うなよ。」
サクラはブルースター大将の考えを読み、更に速度を上げて攻撃を繰り出して行く。
「チッ! まだ本気じゃなかったのか!? だが、私もまだこんなもんじゃないんだよ!」
ブルースター大将も更に攻撃速度を上げて来た。
サクラ達の戦闘が更に激しさを増した頃、本陣前が慌ただしくなる。
「ん? 何だ?」
サクラはあまりの轟音に、一瞬本陣前に目を向けてしまった。
「ふっ。まだまだ甘いな。」
ブルースター大将と中将は、一瞬の隙を突いて残った部隊員と共に、海へと逃走したのである。
「しまった!? くそっ! 今度は一体何だ?」
サクラはブルースター大将を取り逃がしたことを後悔し、轟音のした本陣前へと目を向けた。
本陣前では、グズマニア大将らがボタン、クローバー、ウメの部隊と戦闘を開始していた。
近くの木の上では、タンジー大将がサクラ達の本陣を眺めていた。
「グズマニアさん貸し一つですよ。さぁて、君達の力を見せてくれ。その為に偵察の子を戦闘不能にしたんだから。」
グズマニア大将の部隊を本陣へと報告に向かった者は、タンジー大将の手で仕留められていたのだった。
旗取りゲームが長くなりそうです(^◇^;)




