鍛治の心
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ありがとうございます!
サクラ達は、再びフランクティ洞窟内に辿り着いた。
アカンサスの手には、アカンサスが製作した敵を叩き潰すことに特化した斧が握られている。
《……随分早く戻って来たな。》
「ん? 声が聞こえたぞ。」
ストックと同じ様に、サクラ達にも声が聞こえた。
鍛治神ガイアは、気を利かせてアカンサス以外にも会話が聞こえるようにしたのだ。
「……ガイア様の声よ。今の私に作れる最高の物が出来ました。」
アカンサスは、みんなにも会話が聞こえていると分かり、声に出して答えた。
《……成る程。どれどれ。》
沈黙が場を支配し、ほんの少しの時間であったが、アカンサスにはとても長い時間に感じられた。
《……悪くは無いが……この斧が、お主の最高の物なのか?》
鍛治神ガイアは、アカンサスに期待していただけに、残念な気持ちだった。
この言葉に、サクラ達はアカンサスが鍛治神ガイアを納得させられるような物が出来ていないことを悟った。
「な!? 何でだよ! アカンサスが一生懸命作った斧だぞ! 鍛治の神様だか何だか知らねぇけど、ふざけんじゃねぇ!」
鍛治神ガイアの言葉に、ストックの怒りが爆発した。
学校に入学した当初から、アカンサスはサクラとの修行だけでなく、時間を作っては鍛治の鍛錬も行なっていたことをストックは知っていた。
そのアカンサスが作り上げて来た物を、悪くは無いがなどと言われては、頭に来ない訳が無い。
「ちょ、ちょっとストック!」
アカンサスはストックの暴走を止めようとするが、ストックの暴走は止まらなかった。
「俺が今、身に着けている防具は、さっきアカンサスが作ってくれたもんだ! 俺には勿体ないくらいのすげぇ防具だ! アカンサスは、こんなすげぇもんを作れる奴なんだよ! この防具からは、アカンサスの気持ちが、心が、守りたいって言う想いが伝わって来るんだ!」
ストックは、思いの丈を叫び続ける。
「……ひっく。ありがとう、ストック。」
ストックの言葉に、アカンサスの目には涙が浮かんでいた。
《ん? その防具もお主が作った物なのか?》
「あんた俺の言ってること分かってんのか!? アカンサスに謝!? うぐぐぐ!?」
ストックが鍛治神ガイアに謝れと言う直前、サクラがストックの口を塞いだ。
「はい。私の大事な仲間《大切な人》を守りたい、その想いを込めて作った物です。」
アカンサスは、自身が防具に込めた想いを伝えた。
言葉では大事な仲間と口にしたが、頭では、心では、大切な人と思っていることを鍛治神ガイアには伝わった。
《これは、とても良い防具だ。鍛治職人の心が込められている。》
「鍛治職人の心?」
サクラは、理解出来ず口から言葉が出ていた。
《そうだ。鍛治職人が、作り上げる物に込める想い、使い手を想う気持ち、そう言った鍛治職人の心が込められた物は、真の鍛治職人にしか作り出せない。》
「ってぇことは? つまり?」
ストックは、鍛治神ガイアに結論を求めた。
《アカンサス、文句無しの合格だ。》
「あ、ありがとうございます!」
アカンサスは深々と頭を下げ、顔を上げた時には満面の笑顔を浮かべていた。
「やったなアカンサス!」
「ありがとうストック。」
ストックが握り拳を前に突き出し、アカンサスはそれに応えるように、握り拳を合わせた。
《約束の力を授ける。俺がかつて使用していた武器、ガイアの斧だ。この武器は、追加攻撃の特殊能力がある。対象物に当たった時の威力がもう一撃発生する。つまり、ガードの固い奴に有効だ。一撃ガードされても瞬時に追撃が入り敵を吹き飛ばせる。一撃ガードして敵が油断してくれれば、予想外の追撃が大ダメージとなる。》
アカンサスの目の前に、黒をベースとした斧が現れた。
ガイアの斧は、攻撃部位が片側は平らになっており、叩き潰すのに適しており、反対側は敵を叩き割れるように刃が付けられている。
「す、凄い。初めて手にしたのに、昔から使っていたかのように手に馴染む。」
アカンサスは、数回試し振りをして感触を確かめた。
《それから鍛治に魅了された魔物、一つ目巨人のサイクロプスだ。コイツは俺に懐いて、鍛治を手伝ってくれていたんだが、今はそのガイアの斧の中で生活している。サイクロプスの力を借りたい時は呼び出すと良い。》
「ありがとうございます。」
アカンサスは、サイクロプスに出て来るよう念じるとサイクロプスが斧から飛び出して来た。
サイクロプスの見た目は、一つ目であり、身体は人間の3倍
「ガイア様じゃない? 誰だ?」
サイクロプスは、ガイアの斧の所持者が鍛治神ガイアじゃないことに気が付き、警戒している。
「初めまして、私はアカンサス。ガイア様から、このガイアの斧を授かりました。」
「ガイア様から? なら、俺はどうすれば?」
《サイクロプスよ。お前も少しは外の世界の刺激を受けた方が良い。アカンサスをしっかりサポートしてやれ。》
「この声はガイア様!? 分かりました。アカンサスと言ったな。宜しく頼む。」
サイクロプスから差し出された手を、アカンサスは握り返した。
こうしてアカンサスの鍛治の試練は無事合格に終わり、新たな武器と仲間が加わったのだった。
今回は、主人公のサクラを差し置いてストックの台詞多めとなりました(^-^)




