アカンサスの実家〜爺ちゃんの悪戯〜
今回でアカンサスのお家話を終わらせようと思ってましたが、後1話かかりそうです(; ̄ェ ̄)
アカンサスたちが目撃したのは、正座させられているアカンサスの祖父ハアザミの姿だった。
「ねぇ、お母さん、ハアザミ爺ちゃん何してるの?」
アカンサスが母親のスピノサスに現状を把握するために、疑問をぶつける。
「わ、わしゃ何も悪いことなんぞしておらん! 決して風呂など覗こうなどと……あ!?」
ハアザミは、自ら覗こうとしたことを暴露してしまったのだ。
アカンサスは無言でハアザミの肩に手を置いた。
「わしを慰めてくれるのか? 何ていい子なんだ!」
ハアザミは、アカンサスが自分に同情してくれたものと考えたのだが。
「……“重力上昇”」
「うげぇ!? な、何をするんだアカンサス?」
アカンサスは、ハアザミの重力を上昇させ、簡単に立ち上がることが出来ないようにしたのだ。
「何覗こうとしてんのよ。……エロジジイ。」
「ひぃ!?」
アカンサスは、ハアザミを射殺すような眼で見下ろし、ハアザミは怯えて身を縮めた。
「アカンサス、そのくらいにしてやれよ。爺ちゃんが可哀想だろ。」
ストックがアカンサスの肩に手を置き、アカンサスを見つめた。
アカンサスの頬が、次第に赤く染まり始めた。
アカンサスは、先程の入浴中の恋話トークで、ストックのことを普段以上に意識してしまい、動揺していたのだ。
「……わ、分かってるわよ。 “重力上昇”」
「うがぁ!?」
アカンサスは、解除しようと思ったのだが、ストックに触れられたことで緊張してしまい、再び重力上昇を発動してしまった。
「おいおい。アカンサス、それじゃ本当に爺ちゃんがヤベェぞ!?」
ストックが慌てて、アカンサスの肩を揺さぶり、少し正気に戻ったアカンサスが目の前のハアザミを見ると、完全に俯せの状態となり、身体が床にめり込んでいたのである。
「ごめんごめん!?」
アカンサスは、今度こそ重力上昇を解除したのだが、暫くハアザミは、俯せのまま立ち上がることは出来なかった。
「全く、爺ちゃんを殺すつもりか?」
暫くして、復活を果たしたハアザミにより、アカンサスはネチネチと小言を言われていた。
「ごめんって言ったでしょ? 大体、爺ちゃんが覗こうとするのがいけないのよ。」
アカンサスは、謝りつつもハアザミに言い返す。
「うぐっ!?」
ハアザミは、反省してこれ以上反論はしなかった。
「みんな、うちの爺ちゃんが騒がせてごめんね。」
アカンサスは、アイリス達に頭を下げて、ハアザミが覗こうとしたことを謝ったのである。
「覗かれた訳じゃないし、もういいんじゃない?」
「そうですわね。」
「お爺ちゃんには、優しくするアル。」
「……覗いていたら、木に逆さ吊りだったのに。」
アイリス、カトレア、ボタンはハアザミを許していたが、ウメだけはちょっぴり怖い発言をしていた。
「よし。そろそろ、寝室に行きましょうか?」
アカンサスは会話を打ち切って、布団への移動を促す。
「おう。布団なら敷いておいたぞ。」
「そうなの? 機が効くわね。」
ストックの言葉に、アカンサスは首を傾げながら反応し、一同は布団を敷き詰めた一室へと向かったのである。
部屋の中には、布団が11組敷き詰められていた。
サクラ達は布団を敷いた側なので、この光景を見ても反応は無かったが、アカンサス達女性陣の反応は違う。
「……ストックこれは何?」
アカンサスの顔から表情が消え、淡々とストックの方を向いて疑問をぶつける。
「ん? 何って、布団敷いといた部屋だろ?」
ストックは、アカンサスの表情を気にすることなく事実を口にした。
その瞬間、ストックの身体はくの字に曲がることとなる。
「“重い拳”! 何で男女同じ部屋なのよ!?」
アカンサスの重力属性を纏い、強化された拳がストックの腹部に突き刺さる。
「がはあ!?」
ストックはお腹を抑えながら、何故怒られたのか訳も分からずに俯せに倒れた。
「「「「ストック!?」」」」
サクラ達男性陣は、ストックに駆け寄り、回復魔法を施した。
「なぁ、アカンサス。お前の爺ちゃんに、こう布団を敷くように言われたんだが、この地方ではこうやって寝るんじゃないのか?」
サクラがストックの名誉を守る為に、布団を敷いた経緯を説明した。
「……ハアザミ爺ちゃん。」
アカンサスの色の無い目が、ハアザミを見つめる。
「……てへ。」
ハアザミは一目散に駆け出し、現場から立ち去った。
「はぁ〜。またしてもごめんね。布団、別の部屋に持って行こう。」
アカンサスは、祖父の悪戯を謝り、空いている部屋に布団を移そうと提案した。
「たまには、みんなでなるのもいいかもアルね。」
「私も別にみんななら、信頼しているし。」
「私も良いわよ。」
「……布団動かすのも面倒。」
「俺様は早く寝たい。」
ボタンがこのままの状態を受け入れる発言をすると、他のみんなも同意したのである。
「え? このまま。……みんながそれで良いなら。」
アカンサスは、みんなが嫌がらなかったため、このまま寝ることを受け入れた。
しかし、この後ここが戦場になるとは、この時のサクラ達は知る由もなかった。
この後、サクラ達を待ち受けているものは一体!?




