シルビア村の攻防〜東地区2〜
暴走したグラシリスのところから抜け出した、アイリス達。
一方、ウメの攻撃を受けたグラシリスは、涎を垂らしながら余韻に浸っていた。
「本当キモい!」
ウメは身体を抱きしめ、拒絶反応を示した。
「引くアル。」
「子供には見せられない顔ね。」
ボタンとアイリスもグラシリスには、近付きたくないと感じていた。
「ぶぅ〜。何やってるんだグラシリス〜。逃げられちゃっただろ〜。」
「ぐふふふふふふふ。嫌なそう顔もたまんないねぇ。」
ヒルスタとソレリーは、横たわって気持ちの悪いグラシリスを蹴り飛ばした。
「はぁはぁはぁ。ちょっと何するのさ。そういうの美少女にしてもらわないと、嬉しくないんだけど!」
グラシリスは、ヒルスタとソレリーに蹴飛ばされ、文句を言いながらも立ち上がった。
「よし。おめぇら大技行くぞ!」
ヒルスタの掛け声で、山賊達が一斉に魔力を練り出したのである。
「「「裸の波!!!」」」
デブ三兄弟が裸の液体を発動し、残りの山賊達が風属性の魔法を発動し、裸の液体が津波の様にアイリス達へと迫った。
「ぶぅ〜。チラリズムはお終いだ〜!」
「はぁはぁはぁ。生まれたままの姿になりな。」
「ぐふふふふふふふふ。恥ずかしいだろぅ。」
デブ三兄弟は、自分達の魔法でアイリス達が裸になることを妄想していた。
「アレスの剣よ! 私に風の力を! “逆風”!」
アイリスは、アレスの剣に魔力を注ぎ、アレスの剣を横振りすると、突風が発生し、裸の波へと向かった。
アイリスの所持するアレスの剣は、得意属性以外の他の基本属性も、得意属性のように扱えるのだ。
「負けないアル! “強風”!」
ボタンも両手を前にかざし、強風を巻き起こした。
「ダメ!? “土壁”!」
アイリスとボタンの風魔法に合わせるように、ウメは土壁を発動したのである。
人数差が有ったものの、風魔法を放った山賊達の技量不足から、アイリスとボタンの風魔法が押し勝ち、山賊達の放った裸の波は、自身らへと跳ね返ったのである。
「ぶぅ〜!?」
「はぁはぁはぁ、見られちゃうよ。」
「ぐふふふふふふふふ。俺の裸が見たかったのか?」
「「「しまったーー!」」」
デブ三兄弟は、自分達の放った魔法が、自らに迫って来ているというのに、余裕な様子だったが、他の山賊達は慌てていた。
「あっ!?」
「しまったアル!?」
この時になって、ようやくアイリスとボタンは自分達の過ちに気付いたのである。
この魔法を跳ね返してはいけなかったということに。
全員が、山賊達が魔法を浴びてしまうと慌てふためく状態となっていた戦場に奇跡が起きた。
突如として、山賊達の前に巨大な土の壁がそびえ立ち、山賊達の放った裸の波を堰き止めたのである。
「「「?」」」
デブ三兄弟は、突然現れた土の壁に困惑し、他の山賊達は、自らが裸にならずに済んだことに歓喜した。
アイリスとボタンが横を向くと、地面に手をついて額から大量の汗を流して、息を切らしているウメの姿があった。
「ウメちゃんナイス!」
「よくやったアル! ウメ!」
アイリスとボタンが、ウメのファインプレーを讃えると、ウメは親指を立ててそれに応えた。
「ぶぅ〜。折角のチャンスを〜!」
「はぁはぁはぁ。荒い息づかい!?」
「ぐふふふふふふふふ。本当は見たかった癖に。」
ヒルスタとソレリーは、裸を見せられなかったことを悔しがり、グラシリスだけは疲れ切っているウメの荒い息づかいに興奮していた。
「一気に決めるわよ! “騒音”」
アイリスから、山賊達に向けて大音量が発せられ、山賊達は、盾を持つ手を離し、両耳を抑えた。
「行くアルよ!」
「焼き豚になれ!」
「「 “火光の大砲!!」」
ボタンとウメが火属性と光属性を発動し、火と火が渦となり、巨大な魔法の砲弾が山賊達へと突き進んだ。
「ぶぅ〜。最後の手段だ!」
「はぁはぁはぁ。必死な顔も可愛いね。」
「ぐふふふふふふふふ。」
「「「“裸の雨”!」」」
デブ三兄弟は、アイリスの騒音に耐えながらも天に手を伸ばして魔法を放ったのである。
そしてボタンとウメの放った、火光の大砲が山賊達に直撃し、辺りに轟音と衝撃をもたらした。
火光の大砲の直撃した後には、デブ三兄弟を加えた山賊達全員が地に伏していた。
「終わったね。」
「お疲れアル。」
「……焼き豚になった。」
三人が勝利を噛み締めていると、空から雨が降って来た。
「ん?」
アイリスは雨に違和感を覚えた。
そう、この飴こそ、デブ三兄弟がやられる前に放った裸の雨である。
「これ服が溶けるアル!?」
「……コイツらぁ!」
アイリス達は雨宿りする場所もなく、魔法で山を作ろうかと思った時である。
戦闘開始前に上空に逃がしていたファブニールが、アイリスの前に滞空した。
「やっと僕の出番だね。“蒸発”!」
ファブニールの口から高温の炎が吹き出し、裸の雨を全て蒸発させた。
「アイリスっちも、他の二人も動かないでね。“復元”」
ファブニールから放たれた金の光がアイリス達を包み込み、金の光が消えると、アイリス達の服が元の状態に戻っていたのである。
「元に戻ってる!? ありがとうファブニール。
アイリスが自分の身体を確かめ、服が元に戻っていたのだ。
アイリス達の衣服が元に戻った頃、ちょうど応援で駆けつけた冒険者らが居たことから、山賊達を引継ぎサクラとカトレアのいる、北地区へと向かったのだった。




