シルビア村の攻防〜東地区1〜
予定通り東地区のお話しです!
シルビア村の東地区に辿り着いたアイリス達の前には、約30名の山賊達がノソノソと歩いて来ていた。
この東地区に来た山賊達は、異様であった。
それは、山賊達全員がとても膨よかな図体をしていたからである。
「な、なんかおデブしかいないアルね。」
ウメは山賊の集団を見て後ずさった。
「……キモい。」
ウメは生理的に受け付けないと言った顔を浮かべた。
「これは精神的に来るね。」
アイリスも苦笑いを浮かべていた。
山賊達がアイリス達の前で立ち止まった。
「ぶぅ〜、見ろよ〜。女だ〜。グラシリスはどの子がいい〜?」
坊主頭に、左目が赤、右目が緑のオッドアイのデブ男であるヒルスタが、隣にいるグラシリスに声を掛けた。
「はぁはぁはぁ。ヒルスタ兄、俺は勿論あのちっこい子だ。はぁはぁはぁ可愛い! ソレリーはどれにするんだ?」
ヒルスタに声を掛けられたグラシリスは、左目が緑、右目が赤のデブ男である。
「ぐふふふふふふふ。グラシリス兄さん。僕はあの盾剣の女の子がいい! 唆られるよぉ!」
ソレリーと呼ばれたデブ男は、同じく坊主頭で左目が赤、右目が紫である。
「ぶぅ〜。野郎ども配置につけぇ〜!」
ヒルスタの号令で、ヒルスタ、グラシリス、ソレリーの三人を頭とする10人ずつのチームが出来上がった。
「ぶぅ〜。構え〜! 囲めぇ〜!」
ヒルスタの号令で、山賊達が一斉に大盾を構え、アイリス、ボタン、ウメを30人で包囲したのである。
「囲まれたアル!」
「……守りが堅い。」
ボタンとウメがチャクラムと鎖で攻撃したが、弾かれてしまった。
「一点突破して、ここから抜け出そう。」
アイリスが突破し易そうな所を見つけようとしていたところ、背後から紫色の液体が飛んで来たのである。
「後ろアル!」
ボタンがアイリスに迫る液体を目にしたことから、直ぐに声を掛けた。
「え!? くぅ。」
アイリスは咄嗟に横に飛んだが、左肩から手の先まで液体を喰らってしまった。
「……アイリス大丈夫?」
ウメが直ぐに駆け寄って、アイリスの傷の具合を確かめた。
「……何とも無さそうね。」
アイリスは、手首や肩周りの動作確認をして、負傷が無いことを確かめた。
「ん? アイリスの服だけ無くなったアルね? 今のは何アルね?」
ボタンは、アイリスが液体を受けた所の衣服だけが無くなっていることを不思議に感じていた。
「兎に角、怪我も無さそうだから、早くこの包囲から抜け出しましょう。」
「確かに、こんな連中に囲まれてると、臭いが凄いアルからね。」
「……気持ち悪いです。」
三人は、デブくてむさ苦しい連中に囲まれていることで精神的ダメージを受けていた。
「はぁはぁはぁ。逃がさないよ! “裸の液体”!」
「ぶぅ〜。もっともっとだ! “裸の液体”!」
「くふふふふふふふふ。どんどん見せろ! “裸の液体”!」
デブ三兄弟により、紫色の液体がアイリス達目掛けて何度も放たれた。
「嫌な予感。」
「ヤバいアル。」
「……いや。」
アイリス達は、迫る液体を何とか回避していた。
「ぶぅ〜。まだまだ行くぞぉー!」
「はぁはぁはぁ。早くお洋服脱ぎ脱ぎしましょうねぇ。」
「ぐふふふふふふふ。そのエロい身体を早く見せろぉ!」
デブ三兄弟による液体の猛攻は、治る事なくその速度を上げて行った。
液体が足の先や脇腹等を掠めるようになり、地面に落ちた時に跳ねた液体により、所々穴が開き始めた。
「ぶう〜。いいぞぉーー! 興奮して来たぞぉ!」
「はぁはぁはぁ。エロ可愛い!」
「ぐふふふふふふふ。このチラリズムが素晴らしい!」
デブ三兄弟だけでなく、構えた盾の隙間からアイリス達を視姦していた山賊達も興奮していた。
「なんなのコイツら!」
「私の一張羅が台無しアル! 絶対許さないアルよ!」
「……殺す。コイツらの◯ン◯鎖で縛り上げて、引き千切ってやる。」
ウメの身体から殺気が溢れ出し、ウメの言葉が聞こえた山賊達の大半は、自身の急所に手を当てて腰を引いた。
しかし、一部の変人グラシリスだけがウメの言葉で更に興奮してしまい、構えた盾を放り捨てて、胸を張った状態でウメの方へ詰め寄って来たのである。
「き、き、キモい!」
ウメは鎖を巨大化させ、グラシリスを吹き飛ばした。
「はぁはぁはぁ。き、きもぢぃーー!」
グラシリスは仰向けに倒れたまま、ピクピクと身体を脈打たせていた。
「突破するよ!」
「あ〜気持ち悪かったアル。反撃開始アルね!」
「コイツらはこの世から消し去りたいです。」
アイリス達は、陣形を乱したグラシリスのところから、一点突破して包囲網から抜け出したのだった。
世界で最も肥満が多い国は、クウェートだそうです。
ってな訳で、今回登場の三兄弟は、クウェートの公用語であるアラビア語を使用してます。
三兄弟の名前は、溶かす魔法を使うので、食虫植物の名前から取りました!




