パキラとの出会い
まだアジトへ向かいません!
山賊の増援に駆けつけたのは、20名程の数だったが、ただ数がいるだけの集団だったため、数分で制圧が完了した。
「全部コイツらくらいの力だったら、今頃討伐されているよね。」
アイリスは、気絶させて縄でぐるぐる巻きにした山賊を引っ張って、山賊達を一箇所に纏めた。
「強い奴ばかりの集まりだったら、国が乗っ取られてもおかしくないからな。」
サクラも山賊を縛り上げて、山賊達の身体で築いた山へと放り込んだ。
「取り敢えず、周囲にはもう山賊は残っていないわね。」
周囲を確認したカトレアも戻って来た。
他のメンバーは、山賊を気絶させた後に周囲の警戒を
行なっていた。
「パキラさん大丈夫でしたか?」
サクラは、馬車のところで隠れていたパキラが無事か声を掛けた。
馬車の近くで戦ってはいなかったので、被害は出ていないだろうが、一応確認したのだ。
「はい。大丈夫でした。それにしてもサクラ様達はお強いのですね。」
パキラは、サクラ達の戦闘を目の当たりにして驚いていた。
パキラはサクラ達が、よく見かける冒険者らとは実力が違い過ぎると感じていた。
「みんな鍛えてますからね。じゃぁこれから、パキラさんも一度シルビア村に送りますね。」
サクラが早々に転移を発動しようと準備を始めた。
「あ、あの、ちょっと待って下さい。」
パキラは、慌てたようにサクラへ声を掛けた。
「どうかしましたか?」
サクラは、パキラへと振り返った。
「その、サクラ様の武器のことなのですが。」
パキラはサクラのクリスタルソードへと目を向けていた。
「これですか? 先程言ったように、武闘会で購入したものですよ?」
サクラは、何故パキラがこのクリスタルソードに拘っているのか分からなかった。
「そのクリスタルソードは、ヤマト様に100万コインで売ったものです。何故サクラ様がお持ちなのですか?」
パキラは、気になっていた疑問をサクラに問い質した。
何故パキラが、サクラの持つクリスタルソードをヤマトに売ったものだと分かったかと言うと、市販のクリスタルソードとは柄の部分が違うのだ。
このクリスタルソードは、鍛治職人が柄の部分を拘って製造したものであり、世界に一本しか存在しないはずなのである。
「え? もしかして、スリの女の子?」
サクラは、クリスタルソードを購入した時のことを思い出し、店に女の子がいたことを思い出したのだ。
「可愛い女の子が抱きついてるのに、スリとか酷いですよね? って、この会話はヤマト様としたものですよ!? 何でサクラ様が知っているんですか?」
パキラは、サクラがヤマトとのやり取りを知っていることに驚いた。
「ヤマトは、3歳の頃に武闘会に出るために変身していた俺ですよ。まさか、こんなところで会うなんて凄い偶然ですね。」
サクラは、ヤマトが自分だと真実をパキラに伝えた。
「ふぇ? またまた〜、何を言っているんですか? 3歳の頃? だって、ヤマト選手は国王様には敗れましたけど、準優勝される程の方ですよ! 3歳の子供があんなに強い訳無いですよー。」
パキラは、サクラが冗談を言っていると思い、笑いながら答えた。
「確かに、今思うとよく準優勝出来たと感じますよ。」
サクラは、笑いながら当時を思い出していた。
「そう言えば、サクラが変身した時には私も驚いたな。」
アイリスは魔人襲撃の際に、サクラがヤマトの姿に変身したのを見て驚いたことを思い出していた。
「……変身?」
パキラは、アイリスの口にしたことばが頭に引っかかった。
「やってみるか。勾玉のお陰で変身魔法なら魔力消費も無いしな。“変身”」
サクラは、懐かしのヤマトスタイルへと変身したのである。
「ええーー!? ほ、本当にヤマト様だ!」
パキラは目を見開いて、懐かしのヤマトを目に焼き付けていた。
パキラは、武器を探していたヤマトを一目見た時から心を射抜かれてしまい、ヤマトが出場している武闘会の試合は、全試合応援していたのである。
「これで信じてもらえましたか?」
サクラは、ヤマトスタイルでパキラへ笑顔を向けた。
「うわぁぁ、ヤマト様が私に微笑んでくれてる! 生きてて良かった〜。」
パキラの意識は遠くへ飛んで行っているようだった。
「……ねぇ、サクラ。時間があまり無いから早く転移で送ってあげたら。」
アイリスは、パキラの様子を目にし不機嫌な声でサクラを急かした。
「!? そ、そうだな。パキラさん行きますよ!」
「ふぇ〜!?」
サクラは身の危険を感じて、素早くパキラの手を引いて山賊達の山に近付いて転移を発動し、シルビア村に飛んだのだ。
「……恋敵の予感。」
アイリスは、将来パキラがライバルになることを予感していた。
シルビア村に到着したサクラは、キャトレイ辺境伯に事情を説明し、村の警備兵に山賊達を引き渡すと共に、山賊の数が多いことから収容や移送を考慮して、グラナダ王国の王都の兵も回すように依頼したのだった。
「サクラ様がヤマト様だったのですね?」
やっとサクラの言葉を信じることが出来たパキラだった。
「はい。あのクリスタルソードには、何度も助けられました。ありがとうございます。」
サクラの成長には、クリスタルソードの存在が必要不可欠なものだった。
「それは良かったです。あの、サクラ様、グラナダ王国の王都に来た際は、是非うちの店に立ち寄って下さいね。」
パキラは、サクラの手を両手で包み込むようにしてお願いした。
「ん!? ぜ、是非寄らせていただきますね。」
サクラは照れながらもパキラに答え、再びアイリス達の下へ転移したのである。
「サクラ様。……逃がしませんよ。」
パキラは、狙った獲物は逃がさないといった雰囲気を醸し出し、サクラが転移した裏山の方へ目を向けたのだった。
次回は、山賊アジトへ突入です!




