ドクダミ山賊団再び
シルビア村は、サクラの知識を取り入れてから急速な発展を遂げ、現在のグラナダ王国には欠かせない村となった。
魔法が無くても高い生活水準を得られるように、風力発電装置を作り上げ、電球や扇風機と言った家電の数々を作り出して世に売り出したのである。
農業としても、日本の田んぼ作りの技術を取り入れて効率が良く、より栄養価の高い作物が育つようになった。
こうしてサクラの知識によって、フラワーワールドの中で最も快適な生活を送れる場所として、シルビア村は有名になり、村の規模は拡大されていったのである。
そして、シルビア村には金があると思った一味が最近シルビア村周辺で暴れ回り、シルビア村を出入りする商隊を襲う事案が多発するようになったのである。
「……シルビア村は、サクラ君のお陰でここまで素晴らしい村となったが、最近は山賊にいいようにやられていてな。」
キャトレイ辺境伯は、サクラ達に最近の悩みを打ち明けたのだ。
「成る程。冒険者達を雇ってもダメなんですか? これだけ儲かっているのだから、冒険者を雇うくらい出来ますよね?」
俺の考えでは、潤ったお金で何とかそう言ったことにも対応出来る筈だったんだが。
「利益優先の者や、冒険者の裏切り、山賊の戦力が想像以上に高くて、中々上手くいかない状況なんだ。」
キャトレイ辺境伯は、そう言うと本当に困った顔をしていた。
「山賊の戦力は分かっているのしかしら?」
カトレアも自分の生まれ故郷をなんとかしたい気持ちだった。
「何とも言えないが、恐らく100名くらい居る筈だ。奴らは、ドクダミ山賊団と名乗っていたそうだ。」
キャトレイ辺境伯の言葉に、サクラは昔カトレアが拐われたことや、相手を取り逃がしたことを思い出していた。
「……アイツらもいるのか。」
元々冒険者をしていたオオバコと洞窟を崩落させたゲウムの二人を思い浮かべた。
「サクラ。」
カトレアも不安そうな顔を浮かべている。
「私達もあれからかなり強くなったし、何とか出来るよ!」
アイリスは、サクラとカトレアへ声をかけた。
アイリスの言うように、あの頃とは比べ物にならないくらい三人は強くなっている。
「そうだな。キャトレイさん、俺達が山賊団を討伐して来ます。」
俺は、次は必ず逃がさないと気持ちを高めた。
「やってくれるか? 何でも裏山を根城にしているようなんだ。」
キャトレイ辺境伯は、サクラ達が引き受けてくれたことで安心した。
「分かりました。」
サクラ達がキャトレイ辺境伯との話を終えて部屋から退室しようとしたところで、部屋がノックされた。
「キャトレイ辺境伯様、大変です!」
屋敷の執事の者が血相を変えて飛び込んで来たのである。
「どうしたの言うのだ、そんなに慌てて?」
キャトレイ辺境伯は、執事を落ち着かせて事情を話すよう求めた。
「そ、それが、パチャママ神様の仏像が山賊団に盗まれました!」
執事の言うパチャママ神とは、シルビア村に古くから伝わる神様であり、村の中心にある仏像である。
「何だと!?」
キャトレイ辺境伯は、村の守り神であるパチャママ神様の仏像が盗まれたと知り、怒りを露わにした。
「あの仏像って、盗めるサイズだったかしら?」
カトレアは仏像の大きさから考えて、あり得ないと言った表情を浮かべた。
それもそのはずで、仏像の大きさは20メートルに及んでいる。
「まぁ盗もうと思えば出来るんじゃないか? 転移させるか、大きさを変化させれば可能だろう。」
サクラは、そんな大きさのある仏像を盗む手段を上げた。
「仏像って盗むメリットがあるのかな?」
アイリスは仏像に盗む価値があるのか疑問を感じていた。
「……カトレアにも話したことは無かったんだが、実はパチャママ神様の仏像の中には黄金が隠されていると言い伝えがあってな。」
キャトレイ辺境伯の言葉に、サクラ達は目を見開いた。
「黄金ですか?」
サクラは何故仏像に黄金が隠されているのか、意図が分からず、キャトレイ辺境伯に尋ねた。
「代々村長や領主が口伝されるものでな、この村は大昔に一度滅びかけたことがあったんだ。そんな時、パチャママ神様の仏像の前に突如として、大量の黄金が現れたそうだ。それにより村は滅びずに済み、パチャママ神様の仏像の中には黄金が隠されていると伝わるようになったのだ。」
キャトレイ辺境伯は、この事を聞いた時のことを思い出しながら、サクラ達に話をした。
「とすると、その情報を何処かで山賊が入手していたということですね。」
サクラの言葉に、キャトレイ辺境伯は頷いていた。
「そうなるな。頼む、パチャママ神様の仏像を取り戻してくれ!」
キャトレイ辺境伯は、深く頭を下げてサクラ達に頼み込んだ。
「頭を上げて下さいキャトレイさん。必ず取り返してみせます!」
サクラはキャトレイ辺境伯に力強く答え、キャトレイ辺境伯の部屋を後にした。
サクラは、チームメイトにも協力を求めるため、みんなの待つ部屋へと足を運んだ。
「おっ、やっと帰って来たな。これからみんなでシルビア村の観光をしようって話してたとこだったんだ。案内してくれよ。」
ストックが笑顔で、サクラ達に村の案内を頼んで来た。
「悪いストック。今はそれどころじゃないんだ。」
サクラは申し訳なさそうな表情で案内を断った。
「何かあったのか?」
デイジーは、サクラ達の雰囲気から何かを察した。
「実はな。」
サクラは、キャトレイ辺境伯とのやり取りを話したのである。
「そう言うことなら、僕も協力させてもらうよ。」
デイジーの言葉に、他のみんなも協力する意思を示した。
「……みんな、ありがとう。」
カトレアは、村の為に力を貸してくれるみんなに感謝した。
「じゃぁちゃっちゃっと山賊やっつけて村の観光しようぜ!」
ストックの言葉にみんなは笑顔を浮かべ、みんなで屋敷を出たのであった。




