神フローラ〜アレスの剣とマルスの盾〜
イリス女王の協力により、アイリス襲撃に関与した者達を捉えることに成功したサクラ達は、イリス女王から国へ招待されていた。
「今回は、私の母が飛んだ迷惑をお掛けしてしまい、本当にごめんなさい!」
イリス女王は、涙を浮かべながら深く謝罪した。
「イリスは何も悪くないんだから、そんなに謝らないで。」
アイリスは、イリス女王の肩に手を乗せて、優しく言葉を投げかけた。
「イリスが協力してくれたお陰で解決出来たんだ。ありがとな。」
俺は、イリスに感謝の気持ちを伝えた。
「そう言ってもらえると救われます。」
イリス女王も笑顔で応えた。
「それより、これから大丈夫?」
アイリスは、イリス女王の今後を案じていたのである。
「何とも言えませんが、皆さんと力を合わせて頑張りたいと思っています。」
イリス女王は、決意を固めた表情を浮かべた。
「まぁ困ったことがあったら、アイリスを頼ると良い。姉妹なんだからな! 俺も協力するよ。」
俺の言葉にアイリスも頷き、イリスは笑顔を見せた。
「ありがとうございます。……一つアイリスにお願いがあるのですが。」
イリス女王は、言いにくそうな表情を浮かべてアイリスの方を向いた。
「イリスのお願いなら聞いちゃうよ。」
アイリスも二つ返事で了承した。
「実家は大臣達から、国民の信頼回復や国の復興に際して、アイリスを王女として国民に公表する案が出ているの。私もアイリスを王女として迎え入れたい考えなんだけど、お願い出来ないかな?」
イリス女王の話を聞いて、アイリスは申し訳なさそうな表情を浮かべた。
「そう言うお願いか〜。……う〜ん。イリスの力にはなりたいけど、私にはサクラと一緒にやるべきことがあるから、ごめんなさい。」
アイリスは王女となり、この国にずっと入れない為、イリス女王のお願いを断ったのである。
「あ、謝らないで。そう答えるとは思っていたの。だから、王女として公表させてもらって、アイリスはアイリスのやりたいことをやって! アイリスのやるべきことが終わったら帰って来てね。 」
イリス女王は、初めからアイリスが断ることは分かっていた。
イリス女王は大臣達と話し合い、アイリスを王女として公表すれば、メロヴィング王国の王女が魔人を討伐したと世界が認識し、メロヴィング王国の国力が低下するどころか、高くなっていると思わせることが狙いなのだ。
「成る程ね。そう言うこのなら、この国の為に協力するよ。」
アイリスも事情を理解して、祖国の為になるならと快く受け入れたのである。
「ありがとうアイリス。」
こうして、アイリスをメロヴィング王国の王女として公表することが決まった。
「そうと決まれば、裏の寺院にあるフローラ神様の神像にご報告しないといけませんね。」
イリスの言葉に、俺とアイリスは首を傾げた。
「この国の決まりで、国王を決める時や大事なことを公表する際には、フローラ神様の神像にご報告するのが慣わしなんです。国民は一年に一度しかお目にかかれませんけどね。」
イリスの説明を受けながら、俺達はフローラ神様の神像が祀られている寺院へと足を運んだのである。
イリス女王は目を閉じてフローラ神様に、ご報告している様子だった。
アイリスも長年フローラ神様を崇めており、幼き頃は毎年この寺院に足を運んでいたのである。
(ご無沙汰していました。フローラ神様。私は王女としてこの国の為に、魔人と戦います。これからも見守っていて下さい。)
(やっと来てくれましたねアイリス。)
「?」
アイリスは頭に響いた声に驚き、周りを見渡した。
「どうしたアイリス?」
俺はアイリスが辺りを見回していることを不思議に思った。
「今、女性の声が聴こえて……。」
アイリスの言葉に、俺はスサノオ神様のことを思い出した。
(私の声は、貴女にしか聴こえていませんよ。私はフローラです。)
(フ、フローラ神様!?)
(貴女が成長して、この場所に戻って来るのを心待ちにしていましたよ。)
(私を待っていた?)
(ええ、貴女なら私の力を授けられる器だと分かっていました。)
(フローラ神様の力をですか?)
(貴女は盾と剣を使うのですね。私と同じです。そんな貴女には、私の力を込めたアレスの剣|とマルスの盾を与えます。)
(え!?)
アイリスの手には、虹色のような輝きを放つ剣と盾が
握られていたのである。
「アイリスそれは?」
アイリスの手に突如として輝く剣と盾が現れ、イリスは驚いていた。
俺は、アイリスの持つ剣と盾の神々しさと、それを持つアイリスの姿に見惚れていた。
(とてもよく似合っていますよ。)
(フローラ神様。……ありがとうございます。)
アイリスは、自身が持つ剣と盾に目を向け、フローラ神様へ感謝を伝えた。
(それともう一つ贈り物です。)
フローラ神様の言葉の後に、アイリスの前に黄金に輝くものが現れた。
(これは? ……雛?)
アイリスの手には、小さな黄金色に輝く小鳥くらいの大きさの生物がいたのである。
(その子は、ファブニールというドラゴンの幼体です。きっと貴女の役に立ってくれる筈です。)
(ありがとうございます。フローラ神様。)
「アイリス、そのちっこいのは何なんだ?」
俺はアイリスの手に抱かれている生物を指差した。
「クァ〜。」
小さな生物は、鳴き声を上げた。
「フローラ神様が言うには、ドラゴンの幼体のようです。」
俺はアイリスの言葉を聞いて、再び小さな生物を見たが、どう見てもこの愛くるしい見た目からはドラゴンとは想像も付かなかった。
「クァ〜。」
ファブニールは、アイリスの手の中で気持ち良さそうに大きく口を開けて欠伸をしていたのだった。
ちっさなドラゴンが仲間入りです!




