ローリエ国王について
お食事会の後のお話です。
食事会を終えた俺達は、宿泊施設に向かって歩いていた。
「サクラ落ち着いた?」
アイリスが俯く俺の顔を覗き込んで来た。
「……ああ、助かったよ。ありがとな、アイリス、カトレア。」
俺は、暴走を止めてくれた二人に感謝した。
「……ローリエ国王様、サクラのことをワザと怒らせたように感じたんだけど?」
「私もそう感じたわ。普通、前の国王様のことをあんな風に言わないわよ。」
アイリスの言葉にカトレアも同意した。
「やっぱそうだよな〜。父さんのことを馬鹿にされて、冷静さを失ってたよ。」
俺も冷静になった今考えると、ローリエ国王の発言の意図を理解出来た。
「……バレたかな?」
俺は二人に、ローリエ国王に俺の正体がバレたのか聞いてみた。
「どうかな〜サクラもその後、上手く言い返せたと思うし。」
「サクラのお父さんの兄弟なら、事情を話してもいいんじゃないかしら?」
アイリスは恐らくバレていないと答え、カトレアは既に国王が決まっているのだから、俺の事情を話した方がいいのではと答えた。
「確かに、事情を話してもいいのかも知れないけど、上手く言えないんだけど、ローリエ国王を見た時から違和感があるんだよね。上手く説明出来ないけど。」
俺は自分が感じていたことを伝えた。
「神眼で見てみたら?」
カトレアが直ぐに答えた。
「国王を覗き見るのか? 昔、節操無く隠蔽を駆使した神眼で冒険者見てたら、スッゲー怒られたんだよな。《勝手に覗くんじゃない!》って。その人に何で分かったのか聞いてみたら、《実力者や気配に敏感な人、対応するスキル持ちには分かるもんだ!》って言われたんだよ。それ以降、勝手に人の中を覗くのは控えてるんだ。」
いや〜あの時は本当に怒られた。
正座のまま4時間は説教された所為で、頭はぼうっとするし、足が痺れて暫く動けなかったからな。
足の痺れが治った後で、回復魔法使えば良かったんだったと気付いた時はショックだったな。
「そんなことがあったんだ。」
カトレアは俺の言葉に納得した。
そうこうしている内に宿泊施設に着いて、夕飯まで自由行動となった。
コンコン
俺が部屋で寛いでいると部屋がノックされた。
「開いてますよ。」
誰が来たか分からないが、取り敢えず扉が開いていると答えた。
「おう、入るぞサクラ。」
サザンカさんがズカズカと部屋に入って来た。
「昼間は失礼しました。どうぞ、掛けてください。お茶淹れますね。」
俺は部屋に備え付けられていたお茶を淹れて、サザンカさんに差し出した。
「悪いな。じゃぁ、早速だが事情を話してもらうぞ。」
サザンカさんに俺は、魔人襲撃時から今迄の経緯を説明した。
「そんなことがあったんだな。……それにしても、立派になったな。」
サザンカさんは優しく微笑んで、俺の頭を撫でた。
「やめて下さいよ。子供じゃないんだから。」
俺はサザンカさんの手を退かした。
「悪い悪い。」
サザンカさんは、あんまり悪いと思っていないように感じた。
「そういえば、ローリエ国王様ってどうなんですか? 噂しか知らなくて。」
俺はローリエ国王のことを、サザンカさんに尋ねた。
「ん〜、確かに見た目はリュウオウ様の面影があるけど、内面はゲッケイジュに近いな。金にガメツイとことか、野心家なところがある。噂じゃかなり私腹を肥やしているようだぜ。」
サザンカさんは包み隠さずに教えてくれた。
「それは……国が心配ですね。」
そんな奴に、父さんと母さんが大切にしていた国を任せたくないな。
「心配は、まだ尽きないんだよ。王子のザクロのことなんだが、昔はかなり性格も人当たりも良かったんだが、急に人が変わったように暗いし、悪いこともするようになったんだ。」
サザンカさんがザクロの事を話し出した。
「昔は、違ったんですか? 何かきっかけでも?」
何が起きたら、性格が変わるんだろうか。
「……これは私が集めた情報だが、何でもザクロは国の内政を調べていて、ある時ローリエ国王に大事な話があると言って、ローリエ国王と二人きりになったそうた。その後から今のようになったらしい。」
サザンカさんの話から導き出される答えは、ローリエ国王がザクロに何かした可能性が高いということだ。
「ローリエ国王が怪しいですね。」
俺は自身の考えを口にした。
「そうだな。私は立場上動きが取りにくくてな。何か確かな情報があれば他の者にも話せるんだが、どこにローリエ国王の手の者がいるか分からないから迂闊に動けないんだ。」
サザンカさんは、頭を抱えていた。
「俺の方でも、何か分かったら連絡します。……ところで、ゲッケイジュは死んだんですか?」
魔人襲撃時に死んだのか生きているのか、気になったので尋ねてみた。
「ゲッケイジュの消息は不明だ。遺体は見つかっていないことなら、恐らく襲撃騒動に紛れて逃げたのだろう。」
サザンカさんは、昔を思い出すように上を見つめながら答えた。
「そうですか。ゲッケイジュが生きていれば、ローリエ国王のことが聞けたのに。」
ゲッケイジュが素直に答えるかは分からないが。
「そろそろ、墓参りに行くか? 案内するぞ。」
サザンカさんが立ち上がったので、俺も立ち上がった。
「お願いします。行く前に、花屋さんに寄らせて下さい。」
こうして、俺はサザンカさんと一緒に墓参りに向かったのだった。
次回は、お墓参りです。




