波乱の幕開け?
旅行だーー!
学校が一丸となって、魔物の大群と魔人コルチカムを撃破したニュースは、瞬く間に各国に伝えられ話題となった。
この世界で初めて魔人が倒されたことに世界中が歓喜していたが、犠牲になった者も大勢いた。
デルフィニウム学校長の話でも、今回討伐した魔人コルチカムは、前回のサルディーナ帝国を襲撃した魔人より弱かったそうだ。
俺も過去に戦った、魔人アネモネの方が強いと思った。
魔人の中でも恐らく一番格下だった可能性が高いというのが、実際に戦った俺達の感想なのだが、各国はそのことを伏せて、世界中に魔人を倒したことだけを伝えた。
俺は学校が再開されるまでの間、寮母さんに修行をつけてもらっていた。
勿論、寮母さんの仕事が優先なので合間合間に見てもらっていた感じだったが。
みんなからは、俺が魔人コルチカムを倒したようなもんだと言われたが、あれはデルフィニウム学校長が奴を疲弊させていたことや、黒の世界を魔人コルチカムが発動中に、オロチとペチュニアさんから反撃されていたことが大きいと説明した。
俺は少ない魔力を補うために、生命エネルギーを魔力変換して奥義を放ったが、寮母さんからは危険だから、本当に必要な時だけ使用するよう厳しく言われた。
ただ、「まぁ今回は仕方なかったですね。」と言ってもらえたので、今回はノーカンである。
それにしても寮母さんって、見た目が幼いけど、いくつなんだろうか? 聞いたら殺されそうな気がするから聞かないけどね。
「……今日の授業はここまでだ。」
俺が考え事をしているうちに、授業の終わりをハルジオン先生が告げた。
今日は、戦後処理を終えて初の授業だった。
「今日は大事な話がある。魔人襲撃でバタバタしていたが、学校長から文化祭一位の我がクラスにプレゼントを戴いた。」
ハルジオン先生は、我がクラスを強調して喋った。
「おおーー忘れてたぜ!」
「あんな事があったから、話が流れたと思ってました!」
「プレゼントプレゼント!」
「楽しみだねぇ。」
クラスメイト達は、期待に満ちた表情で話し合っていた。
「今年は何と……世界7カ国の観光旅行だ! まぁ、ここはお前らを鍛えるための学校だから、勿論各国の兵士達との合同訓練なんかもやるけどな。出発は明後日だから、必要な物を各々準備しておくようすに!」
ハルジオン先生は、完全に観光気分なのだろう、顔が緩みきっている。
「「「「「おおーー!!」」」」」
クラス中から、歓声が上がった。
「ハルジオン先生、最初はどこの国に行くんですか?」
俺は、ハルジオン先生に行き先を聞いてみた。
「おお、言い忘れていたな。最初の国だけ伝えておこう、最初の国は、倭国だ。このクラスには倭国の王子のザクロがいたな。お前ら、なんかあったらザクロに聞けよ!」
ハルジオン先生は、最後にザクロへ目を向けて喋ったが、ザクロは返事や相槌もせずに無表情だった。
……倭国か。
俺は複雑な心境だったが、倭国へ着いたら父さんと母さんの墓標に花を手向けようと思った。
そして、いよいよ旅行当日を迎えた。
「よーーし。お前ら準備はいいかーー?」
ハルジオン先生が大声で、みんなに呼び掛けた。
「早く行きてぇ!」
「楽しみだね。」
「異国の美女とランデブー!」
「強い人とやりあえるかな!」
「美味い飯あるかな?」
クラスメイト達も各々の思惑があるのか楽しそうにしていた。
「あれ? ここから倭国まで距離がありますけど、どうやって移動するんですか?」
俺達に移動手段は伝えられていなかった。
……嫌な予感がするんだが。
「ん? 伝えてなかったか?」
ハルジオン先生は、こいつ何言ってんのって顔をしていた。
「聞いてませんよ。」
俺の返事に、クラスメイト達も頷いていた。
「ハルジオン先生伝えてなかったんですか!?」
ネモフィラ先生は、驚いた顔をしてハルジオン先生に見ていた。
「あーー。冒険者や騎士、王様になろうってんだ。突然の出来事に対応出来ねぇとな! ここからは、チーム毎に倭国へ行ってもらう! 目的地に無事に辿り着くことも訓練だ! 7日後に倭国の国王様と面会の予定だから、7日後までには着くように! 滞在期間は今日から14回後までだから、早く着けばその分観光出来るぞ!」
ハルジオン先生は、まさに今考えましたと言わんばかりの言い訳を口にした。
倭国までの転移も出来ると思うけど、移動も旅の醍醐味だろうなとと考えているうちに、クラスメイト達は口々にハルジオン先生へ不満をぶつけていた。
こうして俺達は、倭国へと旅立った。
俺達のチームは道中で、色々な街に立ち寄りつつ、無事6日後に倭国へと辿り着いたのだった。
この後、倭国の陰謀に巻き込まれることになるとは、俺には知る由もなかった。
サクラ達に何が起こるのか!?
次回
サクラの正体がバレる?




