初代現る!?
戦いの前段になります。
俺は、いつも通り寮の部屋にあるベッドで寝ていた。
いつもの変わらない日常だった。
……この瞬間まで。
……ドクン!
ネペンテスに収納している、草薙剣が鼓動音を発した。
俺は、目をパチパチさせ辺りを見回すと、真っ白な何もない空間だった。
地面は見えないが、足の裏に感覚があり、立つことが出来ていた。
「……ここはどこだ? 俺は、確か部屋で寝ていた筈なんだが? 」
俺は、自分の行動を思い返してみたが、今の状況がまるで理解出来なかった。
再び辺りを見回し、上に目を向けると、何かが落ちて来ているのが分かった。
「……あれは? なんだ?」
俺は、警戒しながら身構えた。
「……どうなってるんだ?」
俺の目の前には、草薙剣が独りでに浮かんでいた。
《やっと、俺の念話が通じる力量に達したか。》
俺の頭に直接声が響いて来た。
「……草薙剣が喋ってるのか?」
俺は、この状況で考えられることを口にした。
《そうだ。正確には、草薙剣を長年使っていた、倭建命だ。俺の意思がこの剣に宿っている。ここは、俺が作り出した別空間だ。》
「そうですか。……夢か? これは?」
俺は、このよく分からない空間で、剣と会話するという不思議な状況を夢だと思いたかった。
《こらこら。これは、夢ではないぞ。お前の力量が足りなかったから、今までは呼び掛けても通じなかっただけだ。……やっと、ここまで辿り着いた。》
「……俺と会話したかったのか?」
《そんなところだな。お前の力量がこの域に達するのが間に合って良かった。……この草薙剣に封印されている力が解き放たれようとしている。》
「……封印されている力?」
《そうだ。この草薙剣は、長い時を八岐大蛇という強力な魔物の胎内に取り込まれていた。八岐大蛇をスサノオ神様が倒したが、その時に八岐大蛇は、自身の力を草薙剣に移したんだ。……草薙剣を手にしたスサノオ神様は、姉であるアマテラス神様の草薙剣を渡したた。……時を経て、倭姫命から俺が草薙剣を譲り受けて使用していたが、草薙剣から胎動が聞こえ、草薙剣から八岐大蛇が飛び出して来た。最終的に、自分の命と引き換えに草薙剣から出た八岐大蛇を押さえ込んだ。……そして今、八岐大蛇が再び草薙剣から出ようとしている。》
「そんな危なそうな武器を、スサノオ神様はくれたのか!?」
俺は、頬をヒクつかせて草薙剣を見た。
《俺の時は、スサノオ神様から“信頼の絆”と言う指輪を授かった。指輪に分身魔法と通信魔法、位置魔法等が付与されていて、所有者と信頼関係にある者のみ使用可能なものだ。付ける場所は、左手の中指って指定はあったけどね。》
何て羨ましい物を貰っているんだ! 俺の草薙剣は確かに優秀な武器だったが取扱注意どころか、禁止の品だろ!
……スサノオ神様から、授かった?
「もしかして、初代倭国国王様ですか?」
以前、シャクヤク師匠から、俺以外にスサノオ神様から何かを授かったのは、初代倭国国王様と聞いたことがある。
《おおーー! 良く分かったな。そうだ。俺が初代倭国国王だ。……何で分かったんだ?》
「……他の人も居ませんし、変身魔法解除。……俺は倭国国王リュウオウの息子、倭国王子のサクラです。現在は、王子ではありませんが。初代様のことは、倭国筆頭魔法使いから、スサノオ神様から何か授かったのは、俺以外には初代様だけど聞いていたからです。」
俺は、変身魔法を解除し、久しぶりに素の姿に戻った。
《そうなのか!? 俺の子孫なのか。じゃぁ、頑張って八岐大蛇を倒さないとな!》
「初代様が命と引き換えに何とか封印した、八岐大蛇が今出て来たら俺は勝てるんですか!?」
魔人を倒すために鍛えて来てるが、八岐大蛇ってのがどれだけ強いのか分からない。
……今更だが、この世界はちょいちょい前の世界と同じような言葉なんかが出て来るな!?
《……ん〜。8本の首に8本の尾があり、胴体が一つなのが八岐大蛇なんだが、全てを相手にするのは難しいだろうな。》
「どうすれば?」
《俺が7本の首と尾を抑え込もう。今の世界の基準は良く分からないが、俺の時代での八岐大蛇の討伐ランクはSSだった。俺が7本抑えても、残る1本にどれだけ力が移動するか分からないが、1本ならAからSってとこだな。》
「初代様は、そこまで抑え込めるのですか?」
《子孫の為にも何とかしてみせるさ! ……そろそろ八岐大蛇が出そうだ! 行けるか!?》
「今!? 分かりました! ここで殺される訳には行かない! ブロッサム片手剣」
草薙剣から、1本の首と尾を持つ魔物が姿を現した。
初代ネタは、37話の草薙剣で登場してます。
次回は、サクラ対八岐大蛇!




