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第二話 ブタっぽい俺の自転車ダイエットと異世界

「さていくか」


 真っ白なランニングに、ドデカズボンとサンダルを履き裸の大将装備に身を包んだ俺は、何本もの水筒をぶら下げ、大きめの傘パラソルを突き刺した登山用の巨大なリュックを背負って、安物のママチャリに股がると、自らを鼓舞するように気合いの声をあげる。


 もちろん背負っているのは、自転車ダイエットの道中小腹がすいた時に食べるお菓子に、飲料水(特大コーラ)などだ。


 しかも今回は自転車ダイエットで遠出をするために、念には念を入れて、遭難(道に迷った)したときのために、少し多めに食料(お菓子)や飲料水を持ってきているのだ。


 遭難は怖い。道が全くわからなくなるのだ。


 そうなれば小腹がすいた時に毎度おせわになっている行きつけの食べ放題店やスーパーやお菓子屋さんにたどり着けなくなるのだ。


 だから俺は、念には念を入れて、どんなに道に迷おうと、例えラノベやネット小説で言われているトラックにタックルを喰らって異世界転移されようとも、しばらくは腹を空かせずに生き長らえれるように、入念な準備をしたのだ。


 ま、異世界転移なんてあるわけないけど念のためだ。


 こうして入念な準備をした俺は、自転車ダイエットをするために、俺がまたがるだけで満タンに空気が入っているにもかかわらず、タイヤがぺちゃんこになる安物のママチャリのペダルをこぎ始めた。


 もうかれこれどのぐらいペダルをこぎ続けただろうか? すきやの牛丼のように全身汗だくだく(汁だく)になりながら、俺は時計を見る。


 もちろん時計と言っても、腕時計ではない。


 なぜなら俺の腕周りを網羅できる時計が、俺のいるご近所さんでは、販売されていなかったからだ。


 そのため自転車のかごの中でガタガタ揺さぶられていた目覚まし時計を手でつかみ上げて、俺は時刻を表示するアナログ時計の針を見つめる。


 俺の目に飛び込んできたのは、こんなにも俺が汗だくだくになっているというのに、ほとんど微動だにしていない時計の分針の姿だった。


 は? まだ五分しか経過していないだと? そんな馬鹿な! なぜだっすでに二時間は全力で自転車をこいでいる気がするのに、実働五分というのはいくらなんでもおかしくないか? 俺は自分の体感時間と実働時間のあまりの落差に疑問を持ちつつも、さすがに運動時間が五分では、あまりにも短いと思った俺は、しかたなしにさらにペダルをこぎ続けた。


「はあはあはあ」


 そうして再びペダルをこぎ続け、いい加減息も絶え絶えになっていた俺は、再び自転車のかごに偉そうに鎮座している時計に視線を向ける。


 そこで俺が目にしたのは、先ほど見た時計の分針が三つほど右に動いているだけの光景だった。


 三分。さっきから、三分しか経っていないだと!? 俺は実働時間と体感時間のあまりの落差に唖然としつつも、あることに気が付がついた。


 はっまさかこれが噂に聞くデブの時間。デブ時間か⁉ デブ時間とは、通常人より体脂肪比率が高く。普段まったく運動していないために、ダイエットのための運動をすると、普通の人よりも極端に消耗し、ダイエット時の時間が異常に長く感じる時間のことだ。


 そのためダイエットに挑もうと言うデブは、デブ時間にダイエットを阻まれて、皆すべからく挫折すると言う都市伝説だ。


 まさか噂のデブ時間が本当に存在していた事実に驚きつつも、俺は負けぬ。たかがデブ時間などに俺は負けぬ。という鋼の意識をもって、デブ時間に抗い。ママチャリのペダルをこぎ続ける。


 もちろん俺の鉄の意思を維持するために、ママチャリのハンドルを持っていない手には、飲料水(特大コーラ)をもち、喉に流し込みながらだ。


 俺はそうして鋼の意思を保ちながら、時にコーラを、時にポテチを口にしながらママチャリをこぎ続けた。


 それから幾ばくか、約十五分ほどの時が流れたとき。


 不意に無理をした俺の体が不調を訴えて、視界が朦朧とするが、俺はデブ時間に負けまいと、体にむち打ちペダルをこぐ足に力を込め走る速度を強めた。


 瞬間、小さな車が通り抜けられるほどの光のドアのようなものが、俺の視界の先に出現した。


 俺はとっさに、光のドアのようなものをかわそうとするが、すでにママチャリをこぎ続け、乳酸まみれになっていた俺の体には、俺の言うことを聞くような体力など一切残っているはずもなく、俺の体は自転車ごと光のドアにダイブインした。

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