File.5 天使の膝小僧
シオン様が歩けるようになってから、片時も目を離せなくなりました。
出来るだけシオン様がお散歩なさるときは誰かが手を繋いでいるのですが、時折何かを見つけては手を放して走っていこうとなさいます。
すると、まだ満足に走れないシオン様は躓いてこけてしまいます。
「あっ!」
今日もまた、私の手を振り払って走り出しました。
が、数メートル先でトテン・・・
「ふ、え~~~~ん」
大泣きをされてしまいました。
「シ、シオン様~。お怪我はございませんか?」
私は慌ててシオン様を立ち上がらせて怪我をされていないか確かめます。
あ、可愛らしい膝が擦りむいています。
私は少し治癒魔法が使えますので、怪我を治そうと(本当は舐めて差し上げたい~)手を翳そうとしました。
「シオン!」
シオン様の二人目の兄君、セージ様が駆けつけてこられました。
「ああ、シオン怪我はない? あ、膝が・・・」
セージ様は膝のケガに目を止められました。
すぐさまシオン様を座らせると、擦りむいた膝を舐め始めました。
それから、膝に手を当てて治癒魔法を使われました。
セージ様。最初から治癒魔法を使われたほうが早かったのでは・・・
でも、御馳走さまです。
しかしセージ様、いつの間に治癒魔法を使えるようになったのでしょう?
スオウ様も三歳から魔法を使えるようになったとは聞いていましたが、セージ様まで。
流石はサークレイド辺境伯家のご子息です。普通は五歳でもまだ早いぐらいです。
これはシオン様にも期待できますね。
それにしても・・・
ああ~~ 羨ましい。私も舐めたかった!