File.3 天使のあ~ん
サインレイド辺境伯家の朝食はシオン様争奪戦から始まります。
旦那様、奥様、兄君様方の誰がシオン様をお膝にのせてお食事をさせるのかを争います。
とは言え、天使のシオン様の前で醜い争いは避けたいのか、皆様猫なで声でシオン様をお呼びになります。
本日はご長男のスオウ様が権利を勝ち取られました。
スオウ様はまだ五歳。
椅子の上でシオン様を抱っこして落としては大変ですので、ラグを敷いてクッションを置き、そこにスオウ様がシオン様を抱っこして座ります。
そしてその前にトレイに乗せた朝食をお出しします。
もちろんシオン様の分は離乳食です。
それをスオウ様がスプーンですくってシオン様にあーんして食べさせます。
シオン様はそのお小さいお口を精一杯開けてスプーンを咥えるその愛らしさ。
そして微かに首を傾げながら、もきゅもきゅと口を動かす姿はまさしく小動物。
それを間近でご覧になるスオウ様はデレデレです。
それもそのはず、シオン様はご飯を食べさせてくれるスオウ様の方しか見てないんですから。
金髪碧眼のスオウ様が翠銀髪青眼のシオン様にあーんですよ、あーん。
ああぁ~~~
御馳走さまです。
可愛らしいお二人の仲睦まじいご様子に身悶えしてしまいます。
ついでに脳内では十年後のお二人を想像して萌えています。
それはそれは麗しいことでしょう…。
旦那様も奥様もセージ様もご自分の食事をそっちのけでお二人をみて羨ましそうにしてらっしゃいます。
「あにうえ、ずるい…。
あしたはぼくがシオンに食べさせるからね!」
まだ一度もシオン様に食べさせたことのないセージ様が主張なさっています。
大きくなられてからも、このお二人がシオン様を取り合われるところを妄想して顔がにやけてしまいます。