1話的ななにか
「あなたが橋渡しの方ですか。」
目の前の多分少女の形をとる何かへと声をかける。
橋渡しの方、界隈の魔法使い、まぐわいの魔法使い、境界の道しるべ等かの方を知る人、たいていは魔術、魔法というカテゴリーに含まれることに触れている人たちなのだが、それぞれ彼らの好きなように呼ばれている。その方は、人の形をしているが人ではない何か。老若男女、その日の気分によって姿を変える。そして、相応の対価を支払えば世界と世界の間の超えることができない境界を超える扉を開くと聞いた。だから、今日の気分が黒髪ロングの和風美少女の気分なのだろう。建物も和風で縁側に腰掛けているし。
誰だったかのか忘れたが、世界を渡ること事に手を貸すんだ神の代行者か神そのものじゃないか、と言っていたがそれは間違いだ。かの方は神そのもの。数時間前に神を名乗る存在にあったがその時感じなかった畏怖を感じる。
自然と両膝を土に着け、頭を下げる。
「地球で魔術師をしてます暁、大悟です。元の世界に戻るための橋渡しをお願いしたくきました。」
「地球? どこの? 他の世界じゃなくて。異界の血が入っているのに?」
「父母両方の家系に迷い人が。それが中途半端に覚醒したようです。」
今更だけれど、僕の名前は暁大悟、高校2年生。受験? 何それおいしいのと、思う程度には時間を自分の好きなことに費やしている。
そして、父の母の祖母の家系と母の父の祖母の家系に迷い人がいる。聞いたところによると両方とも女性で元いた世界の婚約者に身に覚えない罪で婚約破棄され、国境付近の森に捨てられ国外追放、森をどうあるいたのかわからないが気づいたら境界を渡り、困っているところを魔術を受け継ぐ男性に拾われた? らしい。
ちなみに、二人の元いた国がゲームや映画の舞台になるような中世のヨーロッパ風貴族社会身分制度ありとなんでそんなに一緒なことが多いの? つくたったの? と思うぐらい似ている世界で、魔術師の家系なのにもかかわらず不思議なこともあるのだと思った。
ついでに言うと、この世界を超える方法のもっとも一般的なことは偶発的に超えるだ。
世界と世界が近いのか、ただ世界を隔てる境界に隙間があるのか、理由はわからないが世界を渡る人がいる。そうして超えてきた人を迷い人とか、異界人とかよばれ、よその世界の情報と引きかえに一生遊べるとまではいかないがそれなりの生活費とどうやってかわからないけれど戸籍がもらえる。たいていの迷い人はなんの躊躇もなく情報を渡す。まあ、元の世界に帰れないのが確定しているので持っていても意味がない。それなら生活するための必要なお金をえるというのは自明の理だとか。どこの世界でもお金は大事なのだ。
そして、一般的な方法ではない方法は強制的に世界の境界に穴をあけそこを通ること。けれど、これはよっぽどのことがない限り成功しない。人的に穴をあけるのでその大小にかかわらず、元いた世界に地震、竜巻、かみなりと穴を塞ぐ過程で歪みが生じる。だからなのかもしれないが、ことを成そうとするとなんらかしらの力ではじかれるらしい。
「あなた、変なにおいがする。」
「対価は、そのまとっているモノとあなたがここに来るまでの情報。あなたの持つ情報には意義がある。」
「わかりました。」
「わからないでください。異界の術者さん。」
少女をそのまま大人にし、畏怖が無くなった女性がお盆にお茶を三つ乗せ、当たり前のように少女の隣に座った。
「初めまして、異界の術者さん。ここの主です。」
え、と自然と驚きの声が漏れた。だって、主ということはこの人が橋渡しの方ということになる。なら、畏怖を感じるこの少女は。
「この方は、元世界の管理権限者です。」
「そなたもあったろう。」
「この場所はどこにでもあって、どこにもない。特別な場所。だから、例外だけれど、たいてい意図して世界を超えるときには管理権限者に触れるのだけれど、覚えてない?」
「身に覚えがあるみたいね。せっかくだからお茶を飲みながらでも話を聞かせてくれるかな。」
あ、と不意に漏れ出した声に女性が当然のようにお茶を隣に置き、何の疑問を持たず当たり前のようにそこに座った。そして、数時間前?の出来事を思い出した。
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