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村人(ビーイング?)との戦い

 やがて一行は森を抜ける。

 森を抜ける間に手札枚数が上限の10枚に達し、そこから引いたカードは虚空に消えていった。


 墓地2

 デッキ29/40

 手札10

 マナ7/7


 だが通常ならカウントされるはずの墓地のカウントは上がらない。

 また消えたカードもリセットしたら再び引けるようになっていた。


 墓地2

 デッキ35/40

 手札5

 マナ1/1


 どうやらこの世界では手札あふれによる強制墓地送還は発動しないようだ。

 それはつまり使わずにカードをロストするという危険は発生しないということだ。


「そのこと自体は助かるんだけど」


 そもそもロストや、ビーイングが戻せない現状では気軽にカードを使えない。

 それは手札あふれが頻繁に起こり得る。

 なので、望みのカードが来ても手札あふれで使えない可能性を示唆していた。


「リセットはわりと頻繁に行う可能性があるかもしれない」


 もしまた野生のビーイングと戦闘になったら、召喚したビーイングが消えない件と合わせて、通常のリザレバトルとは異なる立ち回りを要求されそうだった。


「ロストありのTCGか。現実にあったらクソゲーだよなぁ」


 おまけに一撃死あり。

 しかも勝利してもカードを使い切ったら意味ないから最小カード消費も縛りに入る。


「まあそんな能力なしにこんな世界飛ばされても簡単に死んでたし…物凄く分不相応で不安要素大きいけど使わせてもらおう」


 ホーンラビットも幸太郎に従ってくれる。

 あと何匹か呼び出して従ってくれるなら取り敢えずビーイングは無条件で従ってくれると信じていいかもしれない。


 ホーンラビットの案内は的確だったようで、森を抜ける頃には大きな道が見えていた。

 どうやら人は近くに住んでいたようだ。

 側には壊れて放置されたのであろう荷馬車の残骸が転がっている。


「今時、木材の荷馬車とかリアルで初めて見たわ。道路も舗装されてないし。一体どんな僻地に飛ばされたんだか…」


 いや、月が二つある世界だ。元の世界とは全く異なる。

 人間の文明があったとしても現代レベルを期待するのは間違いかもしれないし、逆に凌駕しているかもしれない。

 あるいは文明格差が地域でありすぎる可能性もある。

 前者の可能性は高いが先入観を持つのは良くない。

 ただ文明レベルは低い前提で考えておく。

 文明レベルが低いと治安や人権の面で遅れている可能性は十分あるからだ。

 つまり、命がとても軽い。

 場合によっては何回かのリセットで出て来たこの切り札を使う必要もあるだろう。


 幸太郎は未知の世界に一歩を踏み出したという実感の元、再び歩み始める。

 ホーンラビットの先導で、取り敢えず道に沿って歩く。

 ホーンラビットは時折鼻をひくつかせており、どうやら匂いで人里を探索しているようだ。

 あの時フレイムタイガーを使用(プレイ)できてなければ、あの場を逃げ切ったとしても匂いを追いかけられてそのうち追い詰められて死んでた可能性は高かっただろうと思わせられた。


 森を歩いてもホーンラビットやその他のビーイングに出くわすことはなかった。

 時折物音がしたが、それはすぐに遠ざかって行くだけで近づいてくることはない。

 どうやら、フレイムタイガーを恐れてこの辺のビーイングは近づかないらしい。

 アタック/ディフェンスが400/400なのは伊達ではないということだった。


 ふとこの世界の人間の強さが気になる。

 普通に考えたら、幸太郎と同じくらいの強さであると思いたい。

 しかし、リザレが世に出てしばらくしてから追加された新カードパック「進撃の巨神」で大量の軍隊系ビーイングが投入された。

 その中で最弱のソルジャーは100/100である。

 当時は「森のウサギと兵士が同等の強さかよw」と大笑いしたが、ホーンラビットの強さを知った今は笑い飛ばすことができない。

 訓練された兵士は、ビーイングに対抗できる程度の差の強さを持つことが必須条件なのだ。

 当然幸太郎も敵うわけないので、軍隊ともめることだけは避けないといけない。

  例え最弱のソルジャーでも4人でかかればフレイムタイガーを倒すことは可能だろうと推測されるからだ。


 リザレのルールでは、ビーイング同士のバトルでは、アタックの数値でディフェンスを削り合うのが基本になる。

 例えば100/100のソルジャーと400/400のフレイムタイガーがぶつかれば、ソルジャーはディフェンスが0になって死亡、墓場行きになるが、フレイムタイガーは400/300になる。

 ソルジャーが4人入ればフレイムタイガーは撃破可能だ。


 そして幸太郎が現在設定しているデッキでは数十人のソルジャーに対抗することなど当然不可能だ。

 ましてや、ジェネラルなどの高コストビーイングがいればさらに勝ち目がない。

 つまり幸太郎はカードのビーイングやスペルを具現化できる能力を手に入れたが、だからと言って国を相手にできるほど強大な力を手に入れたとは全く思ってなかった。


「それに同じような人がいないとも限らないし」



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 やがて幸太郎は視界に田園光景が広がるのを見つけた。


「おお、なんかすごい…中世風の村だ!」


 そこには麦の穂が広がる田園と点在する家屋がある平野が広がっていた。

 日本にいた時には見たことのない景色に幸太郎のテンションは若干上がる。


「こんなのアニメでしか見たことない。本当に黄金色の景色ってあるんだな」


 いまや日本でも見ることできない昔ながらの農村、それも麦畑のという光景に、都会っ子の幸太郎は興奮しながら、「ランランランララランランラン」と鼻歌交じりの浮かれ気分で歩いて行く。


「動くな」


 だから幸太郎はホーンラビットが毛を逆立てて、フレイムタイガーがうなり声を上げているのも気づかずに、村人たちが待ち伏せしせたところに入り込んで、あっという間に囲まれてしまった。


「へ?」


 周囲の麦畑の中から、農民らしき男たちが立ち上がる。

 手には弓やクワを抱えており、友好的な雰囲気は皆無だった。

 訳もわからず、幸太郎は取り敢えず手をあげる。

 警察にフリーズと言われた時は必ず手を上げろという海外に行った時の講習を思い出したからだ。


「よし、そのまま動くんじゃないぞ!おまえは何者だ?人間か?それとも魔族か?」

「え?それはどういう意味ですか?」


 その中で弓矢を抱えたリーダー格らしき農民が幸太郎に訪ねてくるが、幸太郎は全く意味がわからずそう聞き返した。


「とぼける気か!おまえは魔物を引き連れているだろうが!そんなのを連れて一体この村に何の用だ!」

「あ」


 そこでようやく幸太郎は、ビーイングを引き連れていることが原因で村人から危険人物だと判断されたことにようやく思い至った。

 いや、それは予期してたことだ。

 どうやらビーイングのことをこの世界では魔物と呼んでいるらしいが、ホーンラビットですら幸太郎に死の危険を与えた。

 村人からすれば、そんなのを連れている時点で確かにやばいと思うだろう。


「特にそこの、なんだその炎をまとう虎は!貴様この畑を焼くつもりか!」


 いや、村人の危惧は魔物を連れたこともそうだが、炎なんて危険物を畑に持ち込んだことも大きな要因のようだった。

 確かにこんなの連れていたら放火魔と思われても仕方ない。


「あ、いえ違うんです。この炎は見た目だけというか、調整できるといいますか…」

「ふざけるな!!現にいま地面が焦げているだろうが!!」

「ああ!確かに臨戦態勢になると普通に燃えるんだった!ちょっとまってください!フレイムタイガー!炎を消して!」


 そう幸太郎が懇願すると、フレイムタイガーはうなりながらも渋々と炎を消した。

 それによって周囲の空気がほんの少しだが弛緩した。

 村人にとって畑を焼かれるのは死活問題だったのだろう。

 これで少しは疑いが晴れるといいが。と幸太郎は考えた。


「こいつ魔物を自在にあやっているぞ!」

「やはりこいつは魔族じゃないのか?魔族は魔物を従えていると聞くぞ」

「クソ、こんな辺境まで魔族が攻めてきたのか!」

「やはり殺すべきだ!」


 魔物をあやったことが村人たちを余計に怖がらせてしまい村人たちの顔が凶相に染まる。


「殺せ!」


 1人がそう行って弓矢を放った。


「ひっ!」


 もはやなりふり構っていられない。

 そう考えた幸太郎は一枚のカードを使用する。


 スケリトルドラゴン

 ビーイング

 アタック300

 ディフェンス300

 マナコスト3

 守護


 そのカードは、守護というマスターへの攻撃を必ずシャットする能力を持っていた。

 リザレでは基本的に召喚されたビーイングは次のターンから無条件でマスターを直接攻撃(ダイレクトアタック)できるが、このカードがあると必ずこのビーイングを先に攻撃しなくてはいけない。

 そのため高ディフェンスの守護持ちビーイングがいると、相手が大量の低コスト召喚でダメージを与える戦法を使った時に、それを止めることができて有効だった。


 そしてスケリトルドラゴンが具現化される。

 まず地面から骨の塊が飛び出した。

 それは幸太郎をまとうように出現して、弓矢の攻撃から幸太郎を守った。

 やがて骨の集合体は骨格となり、ドラゴンの形状になる。


「ヴォルオオオオオオオオオ!!」


 そうして骨でできたドラゴンが登場して歓喜とも怒りとも取れる雄たけびを上げた。

 スケリトルドラゴンは肋骨の中に幸太郎を格納したまま、前足を振り上げて、近づいてきたクワを持った男性を張り飛ばそうとして、


「あ、まって殺すのはダメだ!」


 手加減して一瞬男をすくうような形で拾ってそのまま宙空に投げ飛ばした。


「あああああ??!!げふ!」


 男は叫び声をあげて空を飛び、その後放物線を描くようにした少し離れた麦畑にたたきつけられてそのまま気絶した。


「おのれ、よくもグロントを殺したな!」

「うう、痛えよお」

「いや殺してないですよ!さっきのセリフ聞きました!?本人もうめき声あげてますよ!」


 とはいえあんだけ派手に空を飛んだら死んだと思われても仕方ないが、ビーイングは命令には従ってくれたようだ。


「うおおお!」


 しかし村人たちは冷静でなくなったようだ。

 別の村人が弓を捨てて今度は剣を抱えて背後から走って来る。


「グウゥ」


 スケリトルドラゴンはそれを尻尾を振るってあしらう。

 男は尻尾の一撃を剣で受け止めようとして、受け止めきれずに、また同じように吹っ飛んで今度はうめき声を上げていた。


「おのれよくもトーマスを!ダッチ行くぞ!」


 今度は二人掛かりで攻めて来る。


「ぬおあ!」

「ぶはあ!」


 しかしそれも尻尾の一撃で簡単にあしらわれる。

 そこで幸太郎は違和感を感じた。

 既にスケリトルドラゴンは村人の攻撃を何回も受けている。

 これらがソルジャーの攻撃と同等の100であるならスケリトルドラゴンのディフェンス300は3回攻撃を受けた時点で削りきられて、既に倒れていてもおかしくない。

 なのに倒れる気配が一向にない。

 スケリトルドラゴンはまだまだ余裕を残している。


(村人の攻撃が貧弱すぎるのだろうか?それともこの世界には相互ダメージのルールはない?確かに先制攻撃できればディフェンスは削られないけど…)


 基本的にリザレにおける攻防は、攻撃を仕掛けた側も仕掛けられた側もアタック分のダメージを食らってディフェンスが削られる。


 だが、現実にはさし違えるということ自体があまりない。

 先手必勝という言葉がある通り、先に攻撃を仕掛けた方が基本的には無傷で勝てるようだった。

 単純な攻撃力不足だけではなくて、それもまたスケリトルドラゴンが持ちこたえている理由の一つのようだった。


(またリザレとは違うルールが増えるなあ。でもそれだけじゃ弓矢が効かない理由が…いやそもそもアンデッドに弓矢は効果薄いのか?確かに骨に弓矢刺さっても意味ないもんなあ)


 実際は骨にヒビ入るから全くダメージないわけではなさそうだが、矢よりも剣や鈍器の方が与えられるダメージは大きそうだった。

 実際そう思うからこそ、村人たちはすでに弓矢を捨てて剣やクワなどを構えているのだ。


(相性まで考慮するとなるといよいよこれRPGになってきた。カードゲームのRPG?ソシャゲか?)


 とはいえその仮説を実証するにはさらなる検証が必要だ。


「おーい無事かー」


 そこに村の方から複数の人影が現れる。

 どうやら村人の援軍のようだった。

 その数は約20人ほど。


「気をつけろ!グロント、トーマス、ダッチ、ケニーがやられた!」


 リーダー格の男が援軍に声をかけて、援軍の村人たちの顔が怒りに染まる。

 スケリトルドラゴンはよく守ってくれているが、さすがにあの人数を相手にするのはつらいはず。


(どうしよう。今手元にあるカードを使えばなんとかなるかも知れないけど…)


 それは幸太郎が封印しようとしたけど、万が一を考えてデッキに採用したカードだ。

 これを使えば、少なくともこの場の窮地は脱することはできる。


(最悪の場合は別の窮地を呼び寄せるけどな。下手したら数万どころじゃない人が死ぬかもだし)


 幸太郎がそれを使うか迷う間にも援軍は迫ってくる。


(いや、検証すらできてないこれを使うのは最終手段だ。と言うかこの感じだと、これ使ったら最悪の場合じゃなくても村人は間違いなく死ぬし…)


 この世界の人間の強さは、幸か不幸か幸太郎と同じ位か少し上な程度だった。

 それはつまり幸太郎が食らったら死ぬかもと思うカードを使われたらほぼ確実に死ぬと言うことだ。


(異世界にきていきなり虐殺したとか洒落にならないし、まずは配られたカードではなく、使ったカードで勝負しよう)


 そう思った幸太郎は待機させていたフレイムタイガーに指示を出すことにした。


「フレイムタイガー、あの援軍を無力化してきて。ただしやばいと思ったら逃げること。あと絶対に殺さないこと」

「ガルル」


 そう言うとフレイムタイガーは待ってましたと言わんばかりに、飛び出していった。


「ぎゃああ、虎だあ!」

「う、うわぁ逃げろ!」

「こら、待て、落ち着け、戦え!」


 援軍の村人たちはどう猛な虎が攻めてきたことで大混乱に陥る。

 援軍はまともに戦うことができずに大半が逃げ出した。

 それでも何人かは残って戦おうとしたが、何人かは体当たりで吹き飛び、クワや武器を噛みちぎられたり奪われたりしていた。


「そんな、バカな…」


 リーダー格の男は呆然と援軍がやられる様を見ていることしかできなかった。

 そして援軍をフレイムタイガーが無力化して戻って来る。

 傷らしい傷は全くない。


(おかしい)


 フレイムタイガーのディフェンスは400。

 村人20で割れば、一人当たり20のダメージを与えれば倒せるはず。


(なのにそれができなかったということは、村人がアタック5のゴミでしかないと言うことなのか?)


 だが村人は農作業のためか幸太郎よりも明らかにガタイがいい。

 そんな連中がアタック20ですらないとしたら、ホーンラビットそして同等のソルジャーはどれほどの化け物なのか?

 それはつまり訓練された人間のソルジャーもまた、村人が束になっても敵わない化け物ということになる。


(訓練しただけでそんなに戦闘力上がるわけないし、装備差し引いても50/50くらいはあると思うんだけど…)


 あっという間に蹴散らされたあの感じだと、村人がさらに数十人きても対処できそうだった。

 村人もフレイムタイガーやスケリトルドラゴンが相当強いことを感じたのだろう。

 既に大半が戦意を失っていた。


「ぐっ、だがここを通すわけにはいかん」


 悲壮な覚悟でリーダー格の男が前に進みでる。

 そこに今まで命令通り待機していたホーンラビットが前に出て来る。


「ふぉ、ホーンラビットだと…まずい。やつは1人では勝てん。最低3人、余裕を持って5人でかからなければ…誰かこいつを倒すのを手伝ってくれ!」


 そういって助けを求めるが、誰も動く気配はなかった。

 3人で一斉にかかれば一撃で仕留めることができるということだろうか。


(あんなこと言っているし、やっぱり村人は最低でもアタック33程度はあるはずだよね?うーんわからん)


 リーダー格は覚悟を決めて、ホーンラビットに襲いかかるが、ホーンラビットはそれを苦もなく避けて、足にツノを引っ掛けた。


「あああ、足が!足がぁ」


 すっぱりと足が裂けて血が噴出し、リーダー格の男は足をおさえながら悶絶する。


「ああ!ちょ、おま。何してんの!?」


 慌てて幸太郎はリーダー格の男に駆け寄る。

 どうもフレイムタイガーもホーンラビットも戦闘力に開きがあれば、比較的無傷で無力化できるようだった。

 が、今はそれどころではない。

 慌てて幸太郎は、癒しの水を使用する。


 癒しの水

 スペル

 マナコスト1

 マスターかビーイング1体を100回復


 場に出したスペルカードが消え、宙空に現れた水滴がリーダー格の男の足に滴る。

 本来はマスターのライフを回復する魔法(スペル)、それが村人にも作用してくれた。

 するとたちまち傷は癒えて、後には破れた跡だけが残った。


 だが、それによって村人に起きた反応は劇的だった。


「こ、これはまさかあなた様は術士様なのですか?」

「え?」

「傷を一瞬で癒すとは何という術の強さだ」

「町の術士様でもこうは鮮やかに直せぬぞ」

「いや、しかしよく考えたらこれだけ強力な魔物を従えているのだ。おそらく高名な術士様なのでは?」

「いや、しかし魔族の可能性も」

「バカ言え!あれだけのことをしておきながら、傷を直してくれる方が魔族なわけなかろうが!」


 そこに1人の老人が怒鳴りながら駆け込んできた。


「術士様とはつゆ知らず、この度は村の者が大変失礼をいたしました。この責任は村長である私に全て責任があります。どうか村の者にはなにとぞ容赦を」


 老人は、幸太郎の前に土下座して謝罪して来る。

 そして村人たちも村長をかばうために次々と土下座を始める。


「いえ、今回の責任は最初に弓を引いた私でさあ、術士様どうか私にだけ罰をお与えください」

「いえいえ、今回の責任は最初に村人を支持した私です。どうか罰は私にください術士様!」


 そういって次々に皆をかばい始めるので幸太郎はあまりの手のひら返しにあぜんとしていた。


「ああ、いえ今回のはなんというか不幸なでき事ですし、結果的に被害はなかったので水に流しませんか?」

「なんとご寛大なお方なのだ!おわびと言ってはなんですが今日はこちらにお泊まりください。もちろんお代はいりませんし、村の総力を挙げて歓迎いたしますので!」


 そう言われて断る気力も体力も幸太郎にはなかった。


「ああ、ええ、はい」


(なんかこういう結末に行かせるためにうまく誘導されたような気がするのは気のせい?)


 と思う程度には、村人たちの態度が一転して笑顔になっていた。


(この村油断できんわ〜)


 適当に休んで、情報とか準備とか整えたら適当に街に出ようと考えた幸太郎であった。

 それは甘すぎる認識だった。

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