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ダンジョンの前に

 冒険者ギルドに入ると、そこは賑わっていた。

 お酒を飲んで語り合う人、口説いている人、気絶している人、口説いてるイケメン、口説かてるイケメン、殴りあう人達、イケメン共……。


 「イケメンが多い……。はっ!これが異世界クオリティか!!」


 「シヅルも負けていませんよ」


 「いやいや、そんなことがあるわけないでしょ。いつも、そのせいで煮え湯を飲まされた……、小学校のとき気になっていた子はクラスメイトのイケメン委員長に、中学校では一つ上の天才イケメンに!」


 「告白とかしたんですか?」


 「いや、出来なかった。しようと思ったときには、もう付き合っていたからね」


 そう、長い時間考えに考え、勇気を持っていこうと思ったときにはすでに遅かったのだ。

 やはり、二年は長すぎた。

 しかし、それぐらい慎重なことだ。だから、そんなすぐにポンポン付き合う人なんて。


 「なんで、そんな落ち込んでるんですか」


 「思い出したら、悲しくなってきた」


 「はあ、私は詩鶴のこと好きですよ」


 「ありがとう、…………ん?今なんと」


 「好きですよ」


 「いやいや、その前、じゃなかった。……マジで?」


 「はい」


 これは、アレか。男女間の好きじゃなくて、友達としての好きですよ!と言った、アレなのか!?

 いや待て、落ち着くんだ。まず、男女間のお友達は成立するのか?

 そんな、好きとか言っちゃう男女ってお友達でいいの?もう、それカップルじゃね?


 「お、俺には将来を誓い合った子がいるんだ」


 「……なのに、告白しようとしてたんですか?」


 「あ、えーと、その……告白しようとしたのがその子」


 「……誓い合ったんですよね?」


 「うん、まあ…子供の時に」


 そう、あれは従兄(いとこ)の結婚式の時だ。

 当時7歳だった僕は、ある女の子に告白されたのだ。


 (「私達もこの二人みたいに結婚しようね」)


 その子は、昔からの仲で家が近いこともあっていつも一緒にいた子だった。

 当然、俺はこれに同意して約束を交わしたのだった。


 「だけど、もう良いんだ。別にその子が別の人と結婚しようと自分の言った事だけは貫き通す。そう決めたから。だから、ハスミンの言葉は嬉しいけど、今は付き合えない」


 「……………」


 「ごめん、せっかく―」


 「シヅル、カッコいいです!」


 「ふぁ!?」


 「思いを貫き通すその心、約束を守る男気、相手を思いやるその気持ち。私ますますシヅルが好きになりました。もうこの際、正室とか気にしません。側室でも、なんなら御妾さんでも良いです」


 ……ソクシツ?オメカケサン?何それ美味しいの?

 ちょっと待て、第二回異世界脳内会議を始めようじゃないか。

 異世界だから、一夫一妻じゃなく多分一夫多妻OK Q.E.D.

 はっ!終わってしまった。そうすれば、どうしよう、どうしたらいいんだ!?

 まずは、説明しよう。


 「俺の世界では奥さんは一人だけしか駄目なんだよねー」


 「ここは、世界違いますから大丈夫です」


 「………」


 何もいえねぇ。

 確かに、正論だ。だが、しかし約束がある。

 ハスミンは可愛いし、こんな俺でも好きだって言ってくれたし、可愛いし、家事は出来るし、可愛いし、気が利くし、可愛いし、笑顔が素敵だし、可愛いし、やっぱり可愛いけど。


 「ごめん、約束したんだ。……『絶対に幸せにしてやる』って。だから、俺じゃなくても、誰かと幸せになるまでは見守って、どうしても駄目だったときに俺が幸せにしてやるって思ってる。だから、今は……付き合えない」


 「そうですか、……でも、『今は』なんですよね」


 「その子は、この世界に来てない」


 気まずい雰囲気が流れる、いや確かにね。

 あっちの状況もわからない状態で幸せになっているかもわからないし、出来やしないのだけど。


 「わかりました」


 「ありがとう、そしてごめん」


 「せめて、子供だけでも」


 「ハスミンさーん!?」


 もう、何この子?

 発想が、異世界過ぎる。

 あ、ここ異世界だったわ。


 「あ、シヅル、とても目立ってしまいました」


 「そういうことを、どうして恥ずかしげもなく言えるのかしら……」


 俺が、周りを見るとニヤニヤした奴や、さわやかに笑っているイケメン、同じくさわやかに笑っているがハスミンを狙っている視線を向けるイケメンなどがいた。


 「まず、気を取り直して、登録しちゃいましょうシヅル」


 「あー、うん、そうだね」


 笑顔で言っているハスミンだが、どこか暗さも窺えた。

 仕方ないとは言わない、悪いのは俺だ。偏にこだわっているだけなんだから。

 しかし―


 (ハスミンにもっと落ち込まないように出来なかったのかと言う後悔と、ハスミンを悲しませてしまったことで、心が痛い。とても痛いです)




 長い道のりを乗り切り、やっとカウンターに着いた。

 本当に長かった、ハスミンに男共が集まり口説いては断られると言う光景を、かれこれ二桁は見た。

 目の前の受付嬢も苦笑いだ。


 「えっと、話を聞いていたんですが、登録でよかったんですよね?」


 「はい」


 「お二人ですか、それともどちらか一人になさいますか?」


 衛兵の兄ちゃんの話だと、一人でも持っていればよかったはず。


 「えっと、登録するメリットとかは?」


 「そうですね、ダンジョンに入れることと、そこでの機能を使えることですね。あ、あと証明証にもなります」


 「他には?」


 「ないですね」


 「いやいや、武器屋とかで安くなったり、宿で割引されるとか」


 「ないですね。商業ギルドとは仲が悪いので。宿も冒険者が泊まらなくても、商業ギルドの人たちのほうが泊まってくれるので、割引しなくても良いですから。商業ギルドのほうだと、宿の割引とか、商品を売っているような店とかの割引があるみたいですけど」


 異世界クオリティどこ行った!?ご都合主義当たり前じゃないの?

 ヘンなとこ現実的過ぎるでしょ!

 そんな現実はいらないよ。むしろぶち壊しちゃうよ。

 あ、それは幻想のほうだった。


 「ハスミンいる?」


 「いや、別になくても良いですね。むしろ、私が登録しちゃうと足が付きそうです」


 「なるほど、じゃあ俺一人で」


 「かしこまりました。こちらに記入お願いします。代筆は、いりますか」


 「あ、書けるので大丈夫です」


 今まで、勉強と訓練だけでなく自習で文字も練習してたのだ。

 まあ、今回書くのは名前と、スキル、得意な武器などだ。

 パーティーとか組むときに、あると便利だからだろう。

 別に全部書かなくても良いらしいが。


 結局、名前とスキル欄に剣術、武器欄に剣を書いて受付嬢に渡した。

 それを奥のほうへと持って行き、少しすると指輪を持ってきた。


 「これを付けたら登録完了です。付けてないとダンジョンの機能は使えませんので、入るときは必ず付けるようにしてください。討伐依頼などの証明するのも、この指輪にカウントされる討伐数からなので、指輪を付けないで討伐しないようにしてください。まあ、ほとんどの人はずっと付けてますから関係有りませんが」


 「わかりました」


 指輪を『鑑定』する。

 鑑定はスキルにはないが、俺達全員についてた能力だ。

 スキルレベルの詳細が見れるのも、これのおかげらしい。


 ―――――――――――

 冒険者の指輪

 冒険者の証明たる指輪

 スキル

 本人証明 収納(少) 不壊

 ―――――――――――


 結構、凄い物だった。

 これがタダでもらえるのは凄いな。


 「凄いですね。スキルが3つなんて、結構価値あるものじゃないですか」


 価値などは、午前中にやっている勉強で習った。

 スキルが複数付くとまず価値が跳ね上がる。

 そこから、スキルの数が増える毎に二次関数的に増えていくのだ。


 「鑑定が出来るんですか!?」


 受付嬢の顔が近づいてくる。

 目の前まで近づいてきた。

 少し、顔を前にすればキスできるぐらいの距離まで。


 「まあ、出来るみたいです」


 「それなら、そうと言ってくださいよ。さっきの紙にも書いてませんでしたし、鑑定が出来る人は特別待遇なんですよ」


 ふむ、どうやら異世界ご都合主義は実在するらしい。

 その恩恵を受けるときが来たようだ。


 「指輪少し貸してください」


 付けた指輪をまた抜き取り、渡した。

 受付嬢は、それを持って奥へと行き、今度は少し時間が掛かってから戻ってきた。


 「どうぞ」


 先ほどと形は変わっていない指輪を渡された。

 しかし、ぱっと見で換わったところがあった。

 指輪に付いている、よくわからない石の色が虹色に変わっていた。

 まあ、とりあえず鑑定だ。


 ―――――――――――

 特別冒険者の指輪

 優秀な冒険者に渡される

 特別な指輪

 スキル

 本人証明 収納(大) 不壊

 体力増加 体力回復増加

 ―――――――――――


 かなり性能が上がっていた。

 ステータスでは体力はなかったが、やはりそういう概念はあるかもしれない。

 単にスタミナ的な体力もあるが。

 それに何より、この特別って言うのが良い。実に良い。


 「ありがとうございます」


 「はい、頑張ってくださいね」


 最初より数倍良い笑顔で送り出された。

 最高です、特別待遇。

 異世界は良い所です。永住したいくらい。

 まあ、帰れないんですけどね。


 「では、行きましょうか」


 「了解」




 再びダンジョンの前へと戻り、衛兵の兄ちゃんに見せると驚かれたが、通してもらえた。

 やっとのことで、ダンジョンに入ることが出来た。

 数時間掛かったが、まあ特別待遇も受けられるみたいだし良かった。


 「シヅル、非常に言い難いのですが」


 「ああ、大丈夫。わかってるから」


 そう、時間が掛かったのだ。

 帰る時間になるくらいに。


 「帰るか」


 「はい、どこまでも着いていきます」


 うん。とても、嬉しいんだけど。

 ふった後だから、とても心に来ます。

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