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心の剣

すいません、遅れました

あれが、あれで……



次からは頑張ります!

 「我の家でも最弱とはいえ、勝ったのならそれなりの実力はあるのだろうな」


 「まあ、失望だけはさせないように頑張るよ」


 「ふふ、そうか……それは楽しみだ!」


 左右にある二本の剣を引き抜いて斬りかかってくる。

 どうやら、いきなり全力のようだ。

 どこぞの私怨で殴り掛かってきたやつとは違うようだ。


 詩鶴もアイテムボックスから刃引きした刀を取り出す。

 これは最近交換したもので、使用者に程よい負荷をかけるという効果付きのものなのだ。

 壊れないわけではないが、壊れづらいものでもある。


 「そんな細い剣で我の剣を受け止められると思うなよ!」


 「ああ、大丈夫だよ――」


 そう、受け止めなんてしない。

 時間差で振り下ろされてくる剣筋を見る。

 縦に振り下ろされる彼女が右手に持った剣を横に動き、すぐ右側を通過していった。

 そこに左手に持った剣が襲い掛かってくる。

 これは避けると隙が出来てしまう。


 詩鶴の持つ刀と彼女の剣が接触する。

 彼女はそれを見て(・・)笑ったがすぐに異変に気付いたようだ。

 それもそうだ、彼女の手には刀という鉄の塊に当たったような衝撃が返ってきてないだろうから。

 そして、ついに自分の失態に気付いたようだ。

 まあ、それもすでに手遅れなのだが。彼女の態勢はもう崩れている。


 あとは、降参させるために刀を突き付けるだけ。

 そう、慢心がなかったとは言えない。

 なぜなら、詩鶴は技量が高く未だに魔法を対人戦で使われた経験が少なかったためだ。


 軽い気持ちで彼女に向け用としていた腕が跳ね上がる。

 そこを見ると何もなかった。

 いや、少しだけ違和感があった。

 そこだけ空気の質が違った。


 『空気を圧縮させた弾か!?』


 次はこちらが大勢を崩す番だった。

 刀を持った利き手である右手は上にはね上げられ、胴当たりはがら空きだ。

 そこに体制を整えた県が叩き込まれる。

 驚いて、右手のほうを見たのも失敗だった。


 魔法を覚えたといってもいまだに使えるのはスキルにもならない程度のものだ。

 つまり、彼女がやったような魔法での打開はできない。




 『どうする!?どうする、どうする!?』


 思考が加速する。

 走馬燈の時に一気に今までの記憶が流れるのと同じようなものだ。

 極限状態での思考の加速。

 剣がもうすぐに迫ったとき、思考の加速が落ち着いた。


 いや、そうではない。

 落ち着いたのではなく、追いついてなかった身体が脳の加速に追いついているのだ。

 そして、緊張状態でいろいろ考えていたこともすっきりとした。

 それだけでない、考えていたことが消えたのではなく。整頓されている。

 別のことを考えていても、まとまっていく考え。



 ――ついに答にもたどり着いた。


 『ああ、なぜ浮かばなかったのか……。だけど、こういう発見も久しぶりだ。追いすがるようなギリギリでの駆け引き』


 『忘れていたよ!』


 彼女の剣がはじかれる。

 弾いたのは俺の周りにある空気だ。

 当然俺には、彼女のように空気を圧縮させて弾けさせるような魔法の技量はない。

 ならどうするか?


 「別のモノで代用すればいい」


 「……驚いたよ。まさか、さっき使われたのをすぐにコピーされるとは……。やはり勇者なだけあるな。あれには、軌道を読み取る洞察力と、それを信じて空気を一部に集める自分の力への信頼と、それ相応の魔法の技量が必要なんだが」


 「いや、俺にはそんな魔法の技量もないし、まだそんなに魔法という者は信頼してない」


 「何を馬鹿なことを言ってる?じゃあ、今のはなんだ?」


 「……『気』だよ」


 「は?き?なんだそれ?ふざけているのか。それとも、そもそも答える気がないのか……」


 「ああ、この世界では一般的でないんだろうね。じゃあ、知らないのも無理はない。気というのはね―」






 「こういうモノだよ」


 そう言った途端に、詩鶴から虹色の何か(・・)が周りを漂い始める。

 一先ず、詩鶴はこの世界でもできたことにホッと一安心した。

 感覚も強化される。今なら自分を中心に5メートルは死覚がない。

 1メートルも離れてないヘーゼルさんの心音まで聞こえる。


 さっきの剣戟のせいか、それともこの状態を見てかは判断できないが、心臓の鼓動が早い。

 どうやら、驚きで筋肉も固まっているみたいだし。

 ここらで、終わらせようか……。


 1メートル、未だに自分もだが彼女も攻撃範囲内だ。

 このまま認識できない速度でも勘や、経験で防がれるかもしれない。

 ならどうするか、防がせなければいい。


 彼女のほうへ一歩踏み出すと同時に、地面へ気を送る。

 今頃、彼女は床が揺れているように感じているだろう。


 『震脚』


 うちの流派では、周囲の敵が立てなくなる程になって一人前と呼ばれる技だ。

 今回は指向性を持たせて、彼女のほうだけに向けたが。

 威力も抑えたが、先ほどまで構えていた構えも崩れバランスを取ろうと苦戦している。


 しかし、この技の本質は揺らすことではない。

 振り下ろしたことによって、急激に前方へと掛かる力、地面から返ってくる力、体の捻りや筋肉の伸縮などで生まれた力すべてを収束することがこの技の本質。 

 踏み込む前に鞘へと納刀されている刀の柄を握る。

 そして、振り抜く。


 寸前で彼女も剣でガードしようとしたのだろう。

 しかし、詩鶴の刀は彼女の首へと当てられていた。


 「俺の勝ちだね」


 この時、彼女の心にあった自分の技量への自信は折られた。

 いや、折られたというよりも斬られたのだろう。

 そう、それはまるで今現在握っている自分の剣の様に。

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