ビステルの森
(この匂いは何だろう? 嗅いだことがある。。。。)
アルアはそう思いながら眠ってしまった。
「痛っ!」
何かにぶつかって目が覚めた。ぶつかったのではなく、目の前にいるニコリタケに叩かれたことに気がついたアルアは状況を理解した。ニコリタケの眠り胞子を嗅いでしまったせいで寝てしまったのだった。横を見るとナタクも寝てしまっている。
(あっ、りくやがいない)
急いで辺りを見ると、りくやが走って逃げていた。まだ手を後ろに縛られたままだ。横にいるナタクも眠らされたようだ。アルアはナタクが持っている槍を手に取り、ニコリタケに立ち向かった。
(一突きにしよう)
アルアが思いっきり槍を突き出す。槍の先端がニコリタケの頭を貫き、ニコリタケは消えた。
「ナタクさん、起きて」
目を覚ましたナタクは苦笑いをした。
「眠らされてしまったようだな。暗くて油断してた」
「それより、りくやが逃げた」
ナタクは立ち上がった。アルアから槍を受け取り、もうニコリタケがいないことを確かめた。
「そうか、あいつ運よく眠らされなかったんだな。りくやが戻ってくる前に先を急ごう。あいつは私たちがどこへ行こうとしているか知らないはずだ。メルダ屋敷だとでも思っているかな」
二人は森を歩き始めた。
「死霊の館ってどの辺りにあるの?」
「メルダの領地の西の端だ。白の塔は知っているかい?その先だ」
「聞いたことはあるけど、行ったことない」
「白の塔はメルダ領地の要で兵士も多い。北側にポルート下水道が通っている。そこを抜けよう」
タヌポコ、クルミリス、切り株ジジ、ウサハンターを倒しながら進んだ。
「どうしてサムを助けたいんだ?好きなのか?」
「好きとかじゃなく、僕を知っている人がサムしかいないんだ。あの町で同じ空気を吸って生きてきた仲間なんだ」
「アルアが生き残っていることは兵士たちに広がってしまうだろうな。このままではすぐに見つかってしまいそうだ。変装しよう。女になれ」
「え!僕、どう見たって男だよ」
「髪は短いがリボンでもつければなんとかなるさ。ここはビステルだったな。ドワーフから服を貰おう。我ながらいい考えだ」
ナタクは森の奥へと進みドワーフ探しを始めた。ニコリタケは見つけ次第、アルアが弓を放った。
「名前はアルアでは変装したことに気づかれてしまう。アニーでどうだ?」
「どうしても女になれって言うんだ。名前なんてどうでもいいや。アニーか、わかった」
「トイレの時は気をつけてしろよ。座るんだ」
「女はなんでオシッコの時、立ってできないんだろう」
「それは神様に聞いてくれ。私ではわからない」