ササラの竹林
アルアが燃えているモスルーシの町を見ていると、後ろから何かの近づく気配がした。振り返るとねずっちゅが近づいてきていた。ねずっちゅはモンスター。動物ではない。モンスターと動物の違いは、倒したときに、姿が消えるか残るかだけだ。普通、動物なら人間に警戒心を持っているから近づかない。近づいてくるのはモンスターだと思っていい。襲ってくるので無視するわけにはいかない。
アルアはすぐに弓を構え、矢を放った。
(この距離なら槍のほうがいいな)
アルアは離れたモンスターなら弓、接近しているなら弓よりも長剣か槍を使う。今、モンスターは目の前にいるのだが、アルアは弓と短剣しか持っていなかった。
ねずっちゅは消えた。アルアはアベニューの町へと急ぐことにした。ササラを通り抜ける間に、いくつものモンスターが現れた。パンダヌキ、タヌドーガ、山賊ムスビ、ハニワタケ、ケノッコロ。強いタケノゴリやパンドシンに会わないことを祈りながら、林を抜けた。モンスターに倒されてしまうと、気絶して、目が覚めるとせっかく進んだ道も最初の所まで戻されてしまう。それではいつまでたっても、ここを通り抜けることができない。アルアはこの場所に出るモンスターくらいなら平気で倒せるのだが、タケノゴリやパンドシンは時間を取られてしまう。
(今はモンスターと会いたくないな)
もうすぐ林を抜けられるという時、パンドシンと出くわしてしまった。
(ここで倒れるわけにはいかない。誰か助けてくれる人はいないかなぁ)
アルアはそれまで声を出すことをためらっていたが、兵隊がこんなところにいるはずなんてないと自分に言い聞かせて、叫んだ。
「パンドシンだ。誰か助けて。手伝って」
大きな体をしたパンドシンが近づいてくる。アルアは弓を放った。矢は当たりはするが、パンドシンはダメージすら感じていないようだ。
(あんなのに殴られたら気絶だ)
もう一度矢を放ったが、パンドシンはますます近づいてくる。アルアは短剣を手に持った。アルアが体当たりしていくと、パンドシンはあっさりとアルアを払いのけた。地面に叩きつけられたアルアに、パンドシンが手を振り上げ、襲いかかってきた。
アルアはひるむことなく剣を握った手を前に突き出した。
「負けるもんか」
パンドシンの腕がアルアに届くその瞬間、一本の矢がパンドシンの体を突き抜け、パンドシンは消えた。
矢が飛んできた方を振り返るアルアの目に飛び込んできたのは、一人の兵隊の姿だった。