焼かれた町
アルアが見た町の中は悲惨なもので、夢であって欲しいと思った。どの家にも広場にも倒れた人ばかりで、誰一人いなかった。。アルアは自分の家で横たわる母さんを見て、その場に座り込んだ。
(誰もいないのか)
それから、サムの家に走った。家に入り、サムを探したがいなかった。サムの母さんが台所で倒れていたが、他には誰の姿もない。サムが行きそうな場所を探したが見つからなかった。殺されていれば、死体があるはずだが、それさえなかった。町中を探していると、北に続く道がホコリまみれになっていた。道端の草がホコリだらけなのだ。
(馬がたくさん通ったに違いない。アベニューの町で何かわかるかもしれない)
アルアは家に戻り、弓と短剣、いくらかのお金を持って北に向かった。町から続く道を避け、森づたいを進むことにした。
(サムは生きている、きっとそうだ。信じよう)
木々の間から、アベニューに続く道が見え、十数頭の馬がモスルーシの方に走り抜けて行った。馬に乗っているのは兵隊のようだ。
(助けに来たのか。遅いぞ)
アルアは町の方を見つめた。馬が町に着いてから間もなく煙が立ち始め、大きな炎が姿を現した。
(焼き払うのか。助けに来たんじゃなくて、消し去るためなのか。ということは、あいつらがみんなを殺したに違いない。なぜだ)
アルアは自分が町から出ずにぐずぐずしていたら、殺されていただろうと感じた。
(アベニューの町に着いたら、知り合いなんていないから、コロナから来たと言おう)