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第八十九話 騎士団長対策会議を開くが皆やる気がなくて無双できない

皆さん、お待たせしました。

本編再開です。

 

「ふわあ。今日も天気がいいなぁ。はあああああ」


 窓から心地よい日差しが入り込んでくる中、貴也は盛大な溜息を吐いていた。


 今日は雲一つない快晴である。

 本当に素晴らしい決闘日和だ。

 まあ、決闘はしないし、稽古は室内の訓練場でやるので天気は関係ないんだけどね。


「はああああああああ」


 貴也はもう一度盛大に溜息を吐いた。

 溜息を吐いたら昨日の出来事が無くなるのなら何度でも吐いてやるところだ。

 だが、いつまでもベッドの中でうだうだやっていても仕方がない。

 いつもならランニングに出ている時間である。

 それでも貴也はベッドから出る気にならなかった。

 もう気分は登校拒否児童である。


 本当に次から次へとなんでこの世界の人間は決闘が好きなのだろうか?

 バトルマニアなの?

 魔物がいるからって闘い好きになる必要なんてないよね。

 暴力では何も解決しないよ。

 人間なら話し合いが大切なんだよ。

 なんでも暴力で解決するような奴は魔物扱いで十分だ! 

 そうだ! もうあいつ等は魔物だ。獣人だ! 


 でも、猫耳美少女は至宝だ! 

 あの耳や尻尾をモフりたい!! 


 そうだ。決闘を受けてもし勝ったら、存分にモフらせて貰うってのはどうだ! 

 素晴らしい案だ! 

 早速交渉にいこう!


「はあ、はあ、はあ。妄想はこれくらいにしておくか。飯を食いに行こう」


 バカげた妄想を繰り広げて幾分かすっきりした貴也は朝食を摂りに食堂に向かう。

 アスカとの稽古もそうだが執事の仕事がなくなったわけではない。

 午前中は通常業務なのだ。

 貴也は気を取り直して部屋を出る。




 そして、公爵家の朝食風景。

 上座には不在の公爵の代わりにエドが座っている。

 それ以外にいつもと違うところと言うと、公爵夫人の正面、お客様席にアスカが座っていることだろうか。

 その隣には優紀も腰掛けている。


 エドが緊張しているのもあって重い空気の中で食事は進んでいく。

 この世界の神官は現代のキリスト教と一緒で肉食がタブー視されていない。

 あまり豪華な食事は敬遠されるが特に制限はない。

 だから、公爵家の面々と同じものを食べている。


 と言うか、神官騎士みたいな肉体派の人間は身体が資本なので朝から食べる、食べる。

 女性とは思えない食欲で遠慮なくお替わりまでしていた。

 優紀は何を張り合っているのか競うように食べている。

 それに気付いたアスカも食べる。

 なんだかフードファイトの様相を呈してきた。


 もう、これを決闘と言うことにしてもいいんじゃない、とか現実逃避気味に考えていたが、そうもいかない。

 しょうがないので貴也は優紀をチョップで沈めて大人しくさせておく。

 もう、朝から無駄な体力を使わせないで欲しい。




 しばらくして、食後のティータイム。

 薫る紅茶を堪能しているアスカの姿は見め麗しく愛くるしい。

 だが、その口から出る言葉は暑苦しい物だった。


「それで稽古はいつから始めるのだ。どこでやるのだ。わたしはいつでも万全だぞ。決闘ならなおいいいぞ!」


 美少女が目を爛々と輝かせていう言葉ではない。

 でも、これが肉食獣の本能なら仕方がないのかもしれない。


 猫耳の宿業。


 それなら許容しなくてはならない。

 妄想をして何とか貴也は理性を保つ。


「貴也殿。なんだか失礼なことを考えておらぬか?」


 軽く睨まれたが貴也はそれを華麗にスルーした。

 貴也のスルースキルは日本にいた時からの必殺技だ。

 年季が違う。


 と言う訳で


「午前中は通常業務がありますのでお昼の食事の後に訓練場に案内します」


「そうか。仕事なら仕方がないな。それまで我慢しよう」


 残念そうに耳がピコピコ動くアスカを見ながら萌えればいいのか、呆れればいいのかわからない貴也は一人悶々としていた。

 そして、アスカはと言うと身体を動かしたいと言って別の使用人を案内にして訓練場にむかって行ったのだった。


「ふう。と言う訳で時間稼ぎ成功です」


 貴也はそういうと残った面々に視線を向ける。


「それでは対策を考えましょう」


「わたしは仕事が溜まっているので失礼します」


「わたしも王都の父上に報告があったんだ」


「僕は謹慎中なので」


「対策って貴也がボコられて終わりじゃないの?」


 こいつ等、全部押し付けて知らんぷりするつもりだな。

 あと、優紀に関してはあとで説教だ。


 と言う訳で全員を睨み付けておく。


「それでは対策を考えましょうか?」


 少し強い口調で言い直す。

 周りが盛大に溜息を吐いた。


 そして、エドが


「対策と言いましてもやれることはないのではないですか? 勇者様の言い方は少し問題がありますが聖騎士様の腕は間違いありません。2、3合も打ち合えば貴也さんの実力はわかると思いますよ」


「その2、3合が問題なんですよ。木剣でも打たれたら痛いんですよ。しかも、あのクラスの化け物だと死ぬ可能性だってあるんですよ」


「その辺りの心配はご無用です。公爵領随一の回復魔法の使い手を手配しました。即死でなかったら手足の2、3本もげてもなんとかして見せます」


「もげないですよ! なんてこと言うんですか!」


 クロードの自信満々の意見に貴也は盛大にツッコんでいた。

 クロードの用意周到さは理解しているし信頼もしている。

 だから、死んだり後遺症が残ったりするような事態にはならないだろう。

 だが、腕がもげるというのは勘弁してほしい。

 回復呪文が直ると言っても痛い物は痛いのだ。

 やっぱり逃げようかな。


「大丈夫です。痛いのは一瞬だけですから。貴也さんはここで時間が来るまで待機していてください。ドアの外には魔導騎士団の精鋭が護衛についていますので安心です」


 ギラリとクロードの目が危険な光を放っている。

 クロードさん、怖いです。

 なんか薔薇騎士団が絡んできてからクロードが壊れっぱなしだ。


 それにしても本気で逃げ場はないようだ。

 クロードが指揮して貴也の逃亡を阻止しているのだ。

 貴也如きがどうこう出来るわけがない。

 ここは諦めて大人しくしていよう。


 それにしてもクロードがここまで容赦がなくなるとは、余程、薔薇騎士団が怖いのだろう。

 貴也は呆れたように肩を竦めて見せる。


「もういいです。対策なしで行きますよ」


「そうですね。それにそっちの方が良いと思いますよ。下手に対策をたてて善戦してしまえば、戦闘が長引きます。その分、痛い目を長い時間受けないといけないのですから」


「そうか。すぐに降参すればいいのですね」


 それは思いつかなかったと思いホクホク顔でいると、全員が呆れた目でこちらを見ながら


「念のために言っておきますが全力を出して負けないと、相手は納得しませんよ。そうなると本気を出すまで延々と稽古を続けられた挙句、本気でやっていても信じて貰えずエンドレス。なんてことになっても知りませんよ」


 エドの忠告にそれはありそうだと、貴也はブンブンと首を縦に振っている。


「よし、最初から全力全開で戦ってさっさと負けてこんな面倒なことを終わらせるぞ!」


 何とも後ろ向きな発言を意気揚々とする貴也に周りの人間は呆れかえって何も言えないのだった。



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