閑話 教えてアル先生 初代国王と公爵の伝説4
「「「教えて、アル先生。ドンドン、パフパフ!!」」」
「……」
「アル。なんかノリが悪い」
ジト目で睨む貴也にアルは溜息で答えた。
アルの癖に生意気だ。
まあ、そんなことを置いておいて早速本題に入る。
「それで初代国王はどうやって現れたの?」
「彼はディアマンテ王国の前身、アイオライト王国の第三王子だったんですよ」
「なんかこの時期って第三が流行っているの?」
「そう言う訳ではないのですが第一王子は次期国王、皇太子で第二王子はその予備じゃないですか。第三王子以下は権力も財力も無いんですよ。女性なら政略結婚の道具として重宝するんですがね」
「王族も大変なんだね」
「まあ、一代限りの公爵位を貰うか、嫡男のいない大貴族に養子として受け入れて貰えるんで不自由はないですよ。でも、中にはそれを面白く思わない人もいるんです」
「それが帝国の裏切り者ってわけ?」
「はい。それが悪い例ですね。でもいい例もあるんですよ」
「なるほど、それがディアマンテ王国の英雄王と言う訳だ」
「そうです。継承順位の低い王族が堅苦しい世界から飛び出して冒険者になって大活躍したわけです」
「そういう話は多いの?」
「多いですよ。眉唾な話もありますけど吟遊詩人が酒場で語る話の半分くらいは王子様が出てきます」
「まあ、村人の子供より、亡国の王子とか、王の庶子の方が盛り上がるからね」
「そういうことです。まあ、それは置いといて。幸か不幸か英雄王は国を跳びだして冒険者になったんです」
「幸か不幸かってどういうこと?」
「アイオライト王国はオパールテイルを捜索している大魔王に消滅させられたのです」
「大魔王はろくなことをしないな」
「ええ、オパールテイルを見つけるまでの三年間で七つの国が滅ぼされました。消えた町や村なんかは数え切れません」
「…………」
「それで当時S級冒険者になった英雄王が立ち上がったのです」
「でも、S級冒険者ぐらいじゃ勝ち目がないだろう?」
「ええ、その通りです。だから、彼は一計を案じました。自分は今まで謎だった最後の魔王の欠片を持っていると」
「そんな話を信じる?」
「魔王ルビーアイがお墨付きを与えれば信憑性は高まるでしょうね」
「でも、それだけでは弱いんじゃない」
「だからサフィーネ帝国にも協力して貰ったんです」
「どういうこと?」
「最後の欠片の名前は結界のアイオライト。もちろん嘘八百です。ただ、サファイアネイルを守っていた結界は魔王の欠片の力だったと言えば確認しようと思うんじゃないですか?」
「なるほど、大魔王の力さえ及ばない結界。それを生み出しているのが実は魔王の欠片だった。それなら信用できるか」
「はい。そうして魔王を誘き寄せました。奴はそれを罠と知っていながらもなんの警戒もせずにやって来たのです。まあ、五つの魔王の欠片を手に入れて超魔王になった彼が慢心するのは当然なのですが……」
「それで」
「結界の中では英雄王のパーティーに竜王、獣王、神聖エルフやドワーフ王が待ち構えていました。そして、結界内に超魔王を引き入れます。結界を調整してその中では魔族の力を十分の一以下になるようにもしました。ですが、超魔王には敵いませんでした」
「ダメじゃん。どうするんだよ」
「そこに現れたのが謎の美女です。彼女は突然現れて死んでいた英雄王を生き返らせました」
「なに! 英雄王って死んでたの?」
「はい。最初の一撃で死んでたそうです」
「マジか!」
「まあ、この世界には蘇生魔法など存在しませんからね。生き返るなど思ってもいない超魔王は英雄王など完全放置です。だから、生き返った英雄王は死角からトパーズホーンを叩き折ったのです」
「よく生き返ったばかりで攻撃できたなあ」
「何でも、死んだ自覚がなかったそうですよ。目が覚めたら目の前に超魔王がいたから角を叩き折ったそうです」
「なんか、英雄王にがっかりだよ」
「まあ、それでも偉業です。超魔王は魔王の欠片を一つ失い。大魔王へとなりました。その所為で急激に力を失ったのです。また、転移の力を失ったのもこちらに有利に働きました。転移の力は非常に便利なので奴はそれに頼っていたところがあったみたいです」
「これで形勢が変わったのか?」
「いいえ、それでもまだ大魔王の力を持っているんです。戦闘は一進一退でした。しかし、こちらには謎の美女がいます。彼女の回復魔法は規格外でした。英雄王以外に蘇生魔法を使ったわけではないですが、それでも致命傷と思われるケガを一瞬で治していきました」
「…………」
「そして、ついにオパールテイルをドワーフ王が斧で切断し神聖エルフの秘儀で封印に成功したのです。その後、サファイアネイル、エメラルドウィングと封印し、最後に英雄王がダイアモンドハートを抉り出して大魔王を討伐しました。めでたし、めでたしです」
「いや、待てよ。最後までダイアモンドハートは残ってたんだよな。なんでそれで勝てたんだ。時の力を使えば逆転の目なんてあっただろう」
「使えなかったんです」
「へ?」
「だから、使えなかったんです。これは魔王ルビーアイの見解ですがダイアモンドハートは規格外の存在なので適性のない者には使いこなすことなどできないそうです。その証拠に適性のあった暗殺された魔王ダイアモンドハートでさえ一番簡単な未来視が出来るようになるまでに50年もかかったそうです」
「なんかダイアモンドハートって怖い物なんだね」
「まあ、使える人がいなければ無用の長物ですけどね」
「英雄王と初代公爵の話はこれで終わりです」
「え? 初代公爵全然出てこないよ?」
「後ろから一生懸命攻撃魔法を撃ってたんですよ! 支援魔法も役に立ったんです」
「うわああ。子孫が懸命に弁護している。なんか悲しくなってきた」
「失敬な。あの場から生きて帰って来ただけでそれこそ英雄なんですよ」
「そうだなあ。S級冒険者の英雄王が真っ先に一撃死する戦いだもんな」
遠い目をする貴也。
そこでふとあることに思い至る。
「えっと、謎の美女って結局誰だったの?」
「わかりません。すべてが謎なので謎の美女と呼ばれています。一説では女神アクアが降臨したのではないかといわれています」
「なんだか、嘘くさい話だなあ」
「この件についてはその場にいた当事者たちもわからなかったそうです。いつの間にか現れて消えていたそうです。結界内には皇帝の血族が許した者しか入れないのに……」
なんだか最後に不思議が残ったがこの話はこれで終わりである。
「なんか、最後の方、一気に端折らなかった?」
貴也がアルに聞いていた。
「まあ、いい加減この話も飽きてきましたしね。掲載スケジュールの都合もあります。今年中にこの話を終わらせたかったんですよ」
「お前がそういうことを言い出すのはマズいだろう。そう言うのはオレの専売特許だぞ」
「まあ、お約束と言う奴です」
ドヤ顔するアルを貴也はチョップで黙らせた。
アルが蹲る姿を見ながら貴也はその場から立ち去るのだった。
申し訳ありません。
最後の戦闘シーンを期待しておられた方もいらっしゃるかと思いますが、思いっきり端折りました。
残念ながらこの話の主役だったはずの英雄王と初代公爵は活躍どころか名前すら出てきませんでした。
機会があったらちゃんとした話として書こうと思います。
書くかなあ?
あと、これはあくまでもアルが聞いている話であり、現実とは食い違っていたり、いなかったりします。
なんて伏線を残して閑話はここで終了です。
今度、閑話を書くとしたら何を書こうかなwww
では